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アルマー心と魔法の物語ー  作者: 春風 奏
2/16

【序章】ー2(過去)ー

登場人物



三日月在真みかづきあるま

主人公、日本に住む小学5年生の少年(今回は6歳の頃の話)


相楽朱音さがらあかね

在真の友達の少年。


かなどめしずく

在真の友達の少女。


******

今回は、在真の過去編です

 数年ぶりに降り積もった雪は、見慣れた地面を覆い隠していた。


 この時在真は六歳。

 暖かいダウンコートを着て首元にはマフラー、毛糸でできた手袋、耳まで覆うことができる帽子。

 自慢の整った黒い髪の毛を隠してまで出来上がったのは、寒さ対策が完璧なモコモコ在真。

 しかしそれでも寒さの方が勝っていて、繊維の隙間から冷たい風が入って来るのだった。

 

 寒さで鼻水が垂れる。


 それでも雪が積もったことが嬉しくて、鼻水をすすりながら雪だるまを作っていた。


「おーい、あるまー!」


 声に気づき、その方向を向いた。


 そこには友達の相楽朱音と京しずくがいた。


 朱音はツンツンした黒髪が特徴的な少年だ。

 茶色い目は、常に楽しそうなものがないか探している。

 一方しずくは、いつも黒く長い髪の毛をツインテールにしている。

 朱音と同じく茶色い目をしていて、可愛いものには目がない。


 二人とも寒さのせいで鼻を赤くしている。

 笑顔で在真に手を振りながら駆け寄ってきた。


 この二人は在真と同じ幼稚園に通っていて、家も近くだったため、いつも一緒に遊んでいた。

 雪が降ったら遊ぼうという約束をしていたので、いつも遊んでいる近くの公園に集まったのだった。


 在真の澄んだ茶色い目が嬉しそうに光る。

 すぐに笑顔になり、二人に手を振り返した。

 在真のところに着いてすぐ朱音が話を切り出した。


「あるま、今日はなにをするんだ?」

「んー沢山雪あるし、かまくら作ろうよ!」


 在真の提案にピンとこなかったしずくが頭の上に疑問符を浮かべながら聞く。


「ねぇねぇ、カマクラってなぁに?」

「ちっちゃいお家みたいなの!お父さんが読んでくれた絵本の中に出てきたんだ。」


 在真は、前に父親から聞いた絵本の話をした。


 子供たちがたくさんの雪が積もった日にかまくらを作ると、それが入り口となって不思議な世界へ行くという話だった。


 在真の話を聞いて、朱音としずくが目をキラキラさせた。


「それ作ったらおれたちも不思議な世界に行けるのかな?」

「きっとそうだよ!不思議な世界に行ってお菓子いっぱい食べたいな!」

「しずはいつもお菓子のことばかり考えてる。本当にお菓子大好きだよな。」

「いいのー!お菓子大好きなんだもん!」

 

 しずくと朱音の話を聞いて在真は笑っていた。

 しかし在真も同じことを考えていた。



 朱音やしずくの言う通り、かまくらを作ったら絵本の中に出てきた不思議な世界に行けるかもしれない。



 そんな期待を胸に三人はかまくらを作り始めた。

 確か絵本で見たものはこんな感じだった、と絵本の中の作り方を思い出しながら在真が説明し、それに従って朱音としずくは動いた。


 雪を積み上げて、自分たちが入れるように空洞を作る。

 暫く経って、やっと一人入れそうなくらいのかまくらを作ることができた。


 完成が嬉しくて、三人は笑顔になった。


 これで不思議な世界に行けるかもしれない。


 期待を胸にかまくらの中を覗いた。


 そこにあったのは不思議な世界への扉……




 ではなく、ただのかまくらだった。


 ――がっかりした。

 せっかくみんなで一生懸命作ったのに。


 はぁ、とため息をつく。白い息が空高く上がっていった。

 神様に、言葉が届いて願いをかなえてくれればいいのに。そんなことを考えていた。


「扉はなかったけどさ、せっかく作ったんだしかまくらの中に入ってみようぜ。」


 朱音の提案に二人とも頷く。三人はお手製のかまくらの中に順番で入ることにした。


 一生懸命作ったかまくらの中は外より少しあたたかい気がした。

 かまくらの中に入ったしずくが、外の世界を見ながらぽつりと話した。


「不思議な国の入り口、なかったね。お菓子、いっぱい食べたかったんだけどなぁ。」

「あれは絵本のお話だからね。仕方ないよ。」

「ある君、夢がないなぁ。」

「夢はあるよ!」

「?あるまの夢ってなぁに?」

「僕の夢は、絵本を作ること!」


 在真の話を聞いて、朱音としずくは笑った。

 在真はなぜ二人が笑ったのか分からなく、恥ずかしくなった。


「なんだよ、笑わないでよ。」

「ふふっ。ごめんね、ある君。ある君の夢、素敵だと思う!」

「そうだな!いつかあるまが作った絵本読んでみたいな!」

「でもその頃僕たち大人になってるよ?絵本より文字がいっぱい書いてある本を読むんじゃないかな?」

「あるまが書いた絵本なら、おれは大人になっても読むけどな。なぁ、しず?」

「うん!だって、ある君がどんな絵本をかくのか気になるもん!」


 ふたりの言葉を聞いて、在真は嬉しくなった。

 ふたりの為に沢山勉強をして、絵本を作る人になろうと思ったのだった。


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