16-3
父が生きているという確信を得て少し安堵した自分がいる。
しかし、クレアには未だ不安要素がいくつもあった。
「でも…、そこまで辿り着けるかも目標が達成できるかも…分かんないですよね。昨晩も圧倒的実力差を感じましたし…。」
正直、アルトにそんな事を吐露するのは恥ずかしいが、どうしても不安が口からこぼれ出してしまう。
しかし、その言葉を聞いたアルトはというと、すこし不思議そうな表情を見せた。
「何を言ってるんですか?今すぐ魔王と戦うわけでもないですし、結果なんてまだわからないじゃないですか。」
「えっ?」
そんな無責任な、と彼女は正直その発言を疑った。
アルトは更に言葉を続ける。
「あなたを初めて見た時のことをよく覚えています。おしとやかで華があって…だけど、あの時のあなたは自分を護ることも出来ないほどにか弱かった。でも、1年足らずで自分のみならず誰かを護ることが出来る様になった。それって凄いことなんですよ?」
「あっ…。」
クレアはその言葉を聞き、ふとダンツと初めて出会った時のことを思い出した。
初めての戦いでは、ダンツの手助けを何も出来ずお荷物同然の状況。
しかし、その経験から己の心の弱さを克服し、彼らと共に様々な敵に立ち向かってきた。
…確かに、あの時から考えると見違えたと思う。
だが、それでも不安は拭えない。
「確かにそうかもしれません。でも、私が限界まで努力してそれでも届かない可能性だって…。」
クレアのその言葉を聞いて、アルトはニコリと笑ってこう言った。
「その時のために【仲間】がいるんですよ。大丈夫です、あなたは1人で戦うわけではありません。」
【仲間】…その言葉を聞いてふと脳裏にダンツ達の姿が浮かんだ。
そう、彼女の戦う時すぐ隣にはダンツやダイキがいた。
2人がいたからこそここまでやってこれたのだ。
ダイキと一緒に旅することはもう叶わないが、彼は私達の心の中にきっといる。
この気持ちを背負って…背負っ…て…。
…彼は、ダンツはどう思っているのだろうか。
これからも一緒に旅をしてくれるのだろうか。
「あの、彼は…ダンツさんは一緒に来てくれるでしょうか?私、どう声をかけたら良いのかわからなくて…。」
「えっ?」
クレアの言葉に、アルトは首を傾げた。
「どう…って、クレア様の中で既に答えは決まっていると思っていました。そうでなければ、彼と対峙している時に『助けたい』なんて発言は出来ないと思います。」
「あの時の…私の気持ち…。」
あの時、逃げる選択も出来た状況でクレアは彼を助け出すことを決心した。
逃げたら私達の関係が終わってしまう、そう感じたから。
それは、つまり…単純な話、ダンツとこれからも旅を続けたかったのだ。
今まで助けられた分、彼が苦しんでいる時には寄り添いたい…その決意の表れだったと感じる。
そう考えると、今まで悩んでたことが馬鹿らしくなってきた。
「ふふっ、答えは至ってシンプルだったんですね。どうやら少し難しく考えてしまっていたみたいです。」
クレアは小さく笑みを浮かべる。
それをみて、アルトは安堵の表情を見せた。
「ふぅ、どうやら悩みが解決したみたいでよかったです。」
「ごめんなさい、心配をかけてしまって。」
「いえいえ、お役に立てたならなによりです。」
そういうと、アルトもお返しと言わんばかりに笑ってみせた。
クレアの中で渦巻いていた不安は、アルトのおかげで晴らすことが出来た。
あとは、ダンツに思いの丈を伝えるだけである。
『また一緒に旅をしよう。』と。




