6-1
大きな地響きと共に村への脅威は去った。
突如訪れた平和に、ある者はホッと肩を撫で下ろし、またある者は周囲の村人と喜びを分かち合った。
その歓声は、地上へと降り立ったダンツ達の元へも届く。
「今回は…無事に役目を果たすことが出来たな。」
ふと横を見るとダイキが褒めて欲しそうにこちらを見ている。
「ありがとうダイキ、お前も魔術が使えたんだな。」
「ガウガウ!(そういえば言ってなかったな!俺は炎属性が使えるのさ!それよりお前も物凄いパワーだったな、痺れたぜ!)」
「おう、なかなか使える機会はないんだけどな…痛っ…。」
それはほんの一瞬の出来事、突き刺すような痛みがダンツの頭を襲った。
しかしその後は身体には何の異常も残っていない。
これは一体何事なのだろうか?
もしかすると、久しぶりに全力を出したせいで少し反動があったのかもしれない。
「ガウガウ(ダンツお前…?)」
「すまん、どうやら力を使いすぎたみたいだ。…どうした?そんな浮かない顔して?」
「ガウガウ(いや、何でもない。)」
ダイキは何か言いたそうにしていたが、「なんでもない」の一点張りで結局教えてはくれなかった。
「ダンツさーーーん!」
声がする方に目をやると、クレアが走ってこちらに向かってきていた。
「おお、クレア無事だったか!」
色々あったが、今回も無事に護ることができたようだ。よかった。
しばらく2人で話していると、クレアの視線がダイキをじっと捉えていることに気付いた。
「ああ、コイツはダイキって言って、この村で出会ったんだ。捕まっているところを助けたんだが、今回はそのお礼ってことで助けてくれたんだと思う。」
「そうなんですね!」
そういうと、クレアは少し腰を落としてダイキの頭をワシワシと撫でた。
どうやら彼女なりの感謝を意らしい。
それに対してダイキはデレデレしている。どうやら満更でもないようだ。
ダンツは若干の怒りを覚えたが、そっと心にしまった。
しばらく大人しく撫でられていたダイキだったが、ダンツがじっと見つめていることに気づき我にかえった。
クレアから少し距離をおいて、彼女と相対する。
「ガウガウ(初めまして、私はダイキと申します。今回はあなたのお役に立ててよかったです。これからもよろしくお願いします。)」
「ねぇ、ダンツさん。ガウガウ言って可愛いですね、この子。」
ダイキは自己紹介をしたのだが、クレアは全く関係ない反応を示している。
どうやら、クレアにも彼の言葉は通じないようだ。
しかし、ダンツはそれよりもある言葉が引っかかった。
それを確かめるために、ダンツはダイキの耳元に口を寄せる。
「おい、これからもよろしくってどういうことだ?小動物達を助けるんじゃなかったのか?」
「ガウガウ(ちょっと気が変わってね、仲間に加えてもらおうかと思ってる。理由はまぁ…そのうち教えるさ。)」
と、ダンツと話しながらもダイキの視線はクレアに注がれている。
ダンツはついてくる理由を何となくではあるが把握した。
やっぱりこいつも男なんだな…ふとそう思った。
それはともかく、このまま2人というのも戦力不足は否めないので、一緒に戦ってくれるのはとても頼もしい。
「どうやら、ダイキも一緒に旅に同行してくれるみたいだぞ。」
「そうなんですか!?私はクレアと言います。よろしくお願いしますね、ダイキさん。」
クレアが笑顔で挨拶するとダイキも嬉しそうな笑顔を見せた。




