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贖罪の獣人-怪力自慢が魔術師を目指すそうです-  作者: 金熊
6.夜の宴と新たな旅立ち
21/125

6-1

大きな地響きと共に村への脅威は去った。


突如訪れた平和に、ある者はホッと肩を撫で下ろし、またある者は周囲の村人と喜びを分かち合った。


その歓声は、地上へと降り立ったダンツ達の元へも届く。



「今回は…無事に役目を果たすことが出来たな。」



ふと横を見るとダイキが褒めて欲しそうにこちらを見ている。



「ありがとうダイキ、お前も魔術が使えたんだな。」


「ガウガウ!(そういえば言ってなかったな!俺は炎属性が使えるのさ!それよりお前も物凄いパワーだったな、痺れたぜ!)」


「おう、なかなか使える機会はないんだけどな…痛っ…。」



それはほんの一瞬の出来事、突き刺すような痛みがダンツの頭を襲った。


しかしその後は身体には何の異常も残っていない。


これは一体何事なのだろうか?


もしかすると、久しぶりに全力を出したせいで少し反動があったのかもしれない。



「ガウガウ(ダンツお前…?)」


「すまん、どうやら力を使いすぎたみたいだ。…どうした?そんな浮かない顔して?」


「ガウガウ(いや、何でもない。)」



ダイキは何か言いたそうにしていたが、「なんでもない」の一点張りで結局教えてはくれなかった。



「ダンツさーーーん!」


声がする方に目をやると、クレアが走ってこちらに向かってきていた。


「おお、クレア無事だったか!」


色々あったが、今回も無事に護ることができたようだ。よかった。




しばらく2人で話していると、クレアの視線がダイキをじっと捉えていることに気付いた。


「ああ、コイツはダイキって言って、この村で出会ったんだ。捕まっているところを助けたんだが、今回はそのお礼ってことで助けてくれたんだと思う。」

「そうなんですね!」


そういうと、クレアは少し腰を落としてダイキの頭をワシワシと撫でた。


どうやら彼女なりの感謝を意らしい。


それに対してダイキはデレデレしている。どうやら満更でもないようだ。


ダンツは若干の怒りを覚えたが、そっと心にしまった。



しばらく大人しく撫でられていたダイキだったが、ダンツがじっと見つめていることに気づき我にかえった。


クレアから少し距離をおいて、彼女と相対する。



「ガウガウ(初めまして、私はダイキと申します。今回はあなたのお役に立ててよかったです。これからもよろしくお願いします。)」


「ねぇ、ダンツさん。ガウガウ言って可愛いですね、この子。」



ダイキは自己紹介をしたのだが、クレアは全く関係ない反応を示している。


どうやら、クレアにも彼の言葉は通じないようだ。


しかし、ダンツはそれよりもある言葉が引っかかった。


それを確かめるために、ダンツはダイキの耳元に口を寄せる。



「おい、これからもよろしくってどういうことだ?小動物達を助けるんじゃなかったのか?」


「ガウガウ(ちょっと気が変わってね、仲間に加えてもらおうかと思ってる。理由はまぁ…そのうち教えるさ。)」


と、ダンツと話しながらもダイキの視線はクレアに注がれている。



ダンツはついてくる理由を何となくではあるが把握した。


やっぱりこいつも男なんだな…ふとそう思った。


それはともかく、このまま2人というのも戦力不足は否めないので、一緒に戦ってくれるのはとても頼もしい。



「どうやら、ダイキも一緒に旅に同行してくれるみたいだぞ。」


「そうなんですか!?私はクレアと言います。よろしくお願いしますね、ダイキさん。」


クレアが笑顔で挨拶するとダイキも嬉しそうな笑顔を見せた。

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