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ダンツが指を指された方向を向くと、そこには巨大な岩の怪物の姿があった。
怪物の足元では、沢山の魔術師がその岩の塊に向け魔術を放っている。
先程の爆発音は彼等の攻撃によるものだった。
しかし、その攻撃は全く意味をなしていないのは見るからに明らかであった。
ダンツはその魔術師達の中にクレアの姿を確認。
彼女の元へとすぐに駆け寄った。
「クレア!いったい何が起きているんだ!?」
「ダンツさん…!あの、買い物をしていたら突然空からゴーレムが降ってきたんです。しかも、ただのゴーレムじゃないんですよ。あの眼を見てください」
クレアに促され、ゴーレムの眼に焦点を当てた。
その眼は真っ黒に染まり、目は血走っている。
どこか見覚えがあると感じたが、その答えはすぐに出た。
あれは…魔族と同じ眼だ。
「普通のゴーレムってあんなに大きくはならないんです。もしかしたら、魔族に操られているのかもしれません。」
「なんだって!?」
魔族だけでも一苦労なのに、この世界の生物を操れるとなると…。
ダンツは想像しただけで寒気が走った。
「それより先ずはこのゴーレムをなんとかしないといけないんですけど…魔術が全然効かないみたいで…。ダンツさん、なんとかできませんか?」
「そんなこと言ったって…。」
ここは村で1番賑わっているエリアで、色々な施設が多く建っている。
ここで力を使えば、今度こそ村としての機能を失いかねない。
「こんなところじゃ力が使えない。被害が出ないようにするには…例えば空に打ち上げるとか…?」
「そんな事出来ないですよ…タダでさえ魔術が効かないのに…。」
確かにクレアの言う通りだ。
おそらくここに居る魔術師が総攻撃を仕掛けても、そんな力技は出来ないだろう。
「くそっ…どうすれば…。」
「ガウガウ(空に打ち上げればいいんだな?)」
何処かで聞き覚えがある声に思わず振り向くと、そこにはダイキの姿があった。
「えっ、今…何を…?」
「ガウガウ(まぁ見てろって。)」
ダイキは自信ありげにそう言うと、ゴーレムに向かい走り出した。
ガウ!!!
その途中、ダイキが大きく吠える。
すると、赤い毛皮から炎が吹き出し彼の身体を覆い尽くした。
そのまま加速度的にスピードを上げたダイキの姿は、まるで不死鳥を見ているかのようであった。
タンッ!
ゴーレムの真下まで来たダイキは地面を大きく蹴り上げ、勢いそのままに巨大な胴体に身体をなげる。
「ガウガウ!(行くぞ!バーニングアタック!)」
ドゴッッッッ!
その衝突音は凄まじく、魔術ではビクともしなかった怪物の巨体を高々と空へと打ち上げた。
「よし!今ならいける!!」
ゴーレムが打ち上がったのに合わせてダンツも勢いよく地面を蹴り空中へと飛び上がる。
その懐へとたどり着いたダンツは最大火力の拳を怪物の胴体へ叩きこんだ。
その瞬間、周囲には轟音が響き、大地は激しく揺れ、岩の怪物は空の彼方へと消えていった。




