20-1
クレアの左腕に刻まれている龍の紋章の暴走は、魔族幹部レイの手により無事に完治。
その後、彼女の体力回復を待ち、再び魔術師の街ダリアへと向かい3人は進み始めた。
それからの旅路は順調とまではいかなかったものの、相次ぐ魔族との遭遇に屈することもなく歩みを先に進めていく。
そして、気づけばダリアまで目と鼻の先まで来ていた。
「ふぅ…かなり大変な道のりだったがそろそろ目的地が見えてきそうだな。」
「そうですね、街の奪還もまだ残っていますがこの調子で頑張りましょう。…あれ?あそこで何か起きているみたいですね?」
ダンツとクレアがそんな会話をしていると、視界の先になにやら争っている2つの影が見え始めた。
どうやら、一方は人間でもう一方は魔族のようだ。
人間の方はかなり歳を召しているようで、明らかに魔族よりも力が劣っているようにも見える。
…だが。
「…どうやら、あのご老人の方が優勢のようです。」
「確かに…。何者なんだあの人は?」
アルトとダンツが驚くのも無理はない。
その老人は魔族からの攻撃を顔色一つ変えずに捌き続け、隙を見ては的確に魔術を叩き込んでいるのだ。
戦況が危うければ手助けしようとも考えていたが、この様子であればその必要はなさそうである。
その見立ての通り、老いた魔術師はかなり余裕を持って戦っていた。
「ふむ、少し手練れているようだが私にかかればなんと言う事はないのぉ。」
老人は魔術で身体を浮かび上がらせ、年齢を感じさせないスピードで魔族を翻弄する。
このまま行けば、魔族を退けるのも時間の問題…だったのだが。
グキッ!
「ぐっ…腰が…!」
突然の腰部への激痛。
その老人は集中力を切らした事により魔術が解け、地面へと倒れ込んだ。
「あれ?あの人、急に動かなくなったぞ?」
異変に最初に気づいたのはダンツ。
その老人は腰に手を当て苦しそうな表情をしている。
そうしている間にも魔族の手は老人に近付いていた。
このままでは、あの老人の命が危うい。
「クレア、あの敵に魔術を放てるか!?なるべく射速が速いのがいい!」
「わかりました!」
クレアはダンツの指示を受け、右手に魔力を蓄え、そしてそれを魔族に向けて放った。
「貫け!シャイニングアロー!」
シャッ!
小さな掌から放たれた光は、一本の槍の様に魔族へと伸びていく。
魔族はその攻撃に気付いたものの、反応が遅れたのか光を身体に受け少し吹き飛ばされた。
「よし!今のうちだ!」
魔術が敵に命中したのを確認すると、3人はすぐさま老人の元に駆け付ける。
「大丈夫ですか!?」
「おぉ…助かりましたぞ旅の者。この歳になると腰が悪くてのぉ…おや?」
老人は感謝を述べるも、ダンツの姿を見るやいなや少し何か考える仕草を見せた。
「…どうしましたか?」
「…いや、何でもない。それより、あやつを倒してもらえんかの?今のワシではどうすることもできんのじゃ。」
「…あやつ?」
老人が指を刺した先に目を向けると、そこには先ほど吹き飛ばしたはずの魔族が立っていた。
どうやら、あの魔術では殆どダメージを与えられていなかったらしい。
「よし!ここは俺たちで何とかするぞ!」
「「はい!」」
ダンツの合図により、3人は戦闘に入る。
その後方では、老人が顎に手を当てダンツを見つめていた。
(この獣人はあの時の…。それにあの杖もまだ持っていたか。ほほ、どんな成長を遂げたか楽しみだのぉ。)




