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贖罪の獣人-怪力自慢が魔術師を目指すそうです-  作者: 金熊
3.光の王女と闇の魔術師
11/125

3-3

ダンツは痺れている右手を口に当て、笛のように音を鳴らした。


すると森の中から1匹の大柄の狼が現れ、一直線で魔族へと向かい、その牙を向けた。


しかし、その攻撃は空発に終わった。


その牙は間違いなく魔族へと向かっていたはずなのに、狼の身体ごと、すり抜けていった。


先程の違和感、その原因が今の一撃でなんとなくではあるが理解することが出来た。


この魔族は、実体がないということである。


つまるところ、直接攻撃は通用しない、ということだ。



それならばと、ダンツは口の中に空気を溜め、軽く吹き出した。


その息は、当たりの木々を激しく揺さぶる程の風となり魔族へと吹きつける。


しかし、魔族はピクリとも動かない。



「これはどういうことだ…?」


「恐らくですが、魔術を使った攻撃しか効果がないのだと思います。」



クレアはこう答えたが、確信は無いようだ。


それならば、試してみる他あるまい。



ダンツは印が描かれた左手に力を込める。


と、その時ふとクレアの言葉を思い出した。


「静のイメージ、森のイメージだったな。」


ダンツは左腕の力を抜き、頭の中で豊かな自然、ダルムの森を思い浮かべた。


次第にダンツの左腕に小さな風が纏っていく。



「よし、今だ!」



ダンツが左腕を前に突き出すと、左手の印から小さな風の刃が複数飛び出し、魔族を襲った。


先程の息とは違い、敵の身体に微かな傷跡をつけることができた。


どうやらクレアの憶測は正しかったようだ。


だが、ダンツの今の魔術では敵を倒せない事は明らかだった。



「魔術を使えば倒せそうだ!クレア、魔術で相手を攻撃する事はできるか!?」


「わかりました、やってみます。」



クレアはそう言うと、己の右腕に力を込めた。


右腕が少しずつ光を放ち出す。


しかし、すぐにその光は見えなくなってしまった。



「えっ…どうして…?」



魔術が発動しない、その事実にクレアは動揺を隠せない。


その間に敵の魔族は体勢を立て直し、再びクレアに向けて魔術を放った。


その攻撃を再びダンツが身体で受ける。



「クレア!いったいどうし…た…。」



ダンツがクレアの方を見ると、彼女の身体は小刻みに震えていた。


それは、魔術が発動しない動揺以前の、恐怖によるものだとダンツは察した。


一国の王女で、実戦など全くない彼女がいきなり緊迫した場面に遭遇したのだ。当然の反応と言える。


それを理解できていなかった、俺はなんて愚かなのだろうか。


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