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その道中、ダンツは近づいてきた小鳥や動物になにやら話しかけている。
どうやら何か指示を出しているようだ。
「あの、一体なにをしているんですか?」
「この森の中の動物達はみんな仲間なんだ。だから、怪しい気配を感じたら伝えるようにお願いした。これで少しは安心して進めるだろう。」
「なるほど、それは頼もしいですね。」
動物達の監視のおかげもあってか、クレアは少し緊張が和らいだように見える。
「そういえば、魔術は【静】の力って話だったよな?それってどんなイメージなんだ?」
ダンツの質問に、クレアは口元に指を当てて少し考える。
「そうですね…。色々な方法があるんですが、ダンツさんの場合はこの森の自然をイメージするといいかもしれないですね。」
「なるほど…今度からちょっとイメージしてみるか。」
「そんなに焦る事はないですから、少しずつ成長していきましょう。」
「おう!」
少しずつでもいいから、クレアの力になれるように頑張ろう。
ダンツはそう誓うのだった。
2人が歩き始めて1時間ほど経った頃だろうか。
東の方角で、突然鳥達が空へと飛び立ち一目散に逃げていった。
鳥達は危険を感知するのがとても早い。
ダンツは脅威が近くまで迫っていることをすぐに察した。
「クレア、敵が近づいてきているようだ。少し開けたところに移動しよう。」
「わ、わかりました。」
2人は少し西に進んだところにある丘へと移動した。
ここなら木々もなく身動きが取りやすい。
相手の狙いがクレアだと分かっているので、彼女は近くにある木の裏へと隠れさせた。
それから1分も経たない内に、丘の上に何者かが降り立った。
ボロ雑巾のようなローブで顔は隠れてはいるが、その異様な見た目はこの世の者ではないと感じられる。
何より身体を纏っている禍々しいオーラを見れば、魔族である事は一目瞭然だった。
しかし、何かがおかしい。
身体はそこにあるはずなのに存在感がまるで感じられない。
よくよく見ると、身体が少し透けているような風にも見える。
敵はダンツには目もくれず辺りを見渡すと、突然生い茂った木々に向かって黒い槍…否、槍とも取れる一線の魔術を放った。
その魔術は、奇しくもクレアが隠れている1本の木へと向かっていた。
「しまった!!」
ダンツは慌ててクレアが隠れている木の前に立ち塞がり、その一撃を両腕で受けた。
槍という表現は正しく、1点に集中した攻撃は相当の威力だった。
攻撃を受けた両腕が痺れる。
「だ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ!全然問題ない!」
クレアを心配させまいと気丈に振る舞っては見せたが、そう何度も受けられるような攻撃ではないことは明らかだった。
しかも、相手はクレアの位置がある程度把握できるとなると、あまり時間もかけていられない。
こちらからも仕掛けなければ…。




