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夫婦経営の宿屋にて

遅くなりました

もぐもぐ。むしゃむしゃ。もぐもぐ。


俺は今グレンさんに連れてこられた宿屋で朝食を頂いている。何でも今にも死にそうな顔をしてた俺を放っておくのが嫌だったらしい。


「うちのカミさんが作った飯はうまいだろぉ!お代はいいからたくさん食えよぉ!」


俺の向かいに座ってとんでもない量の肉を頬張るグレンさん。朝からとんでもない食欲だ。何でもここはグレンさんとその奥さんが経営している宿屋兼酒場らしい。朝食を食べに来ているお客さんもちらほら見かける。


「食べたことない料理ばかりですけどとても美味しいです。グレンさん今日は声をかけて頂いて有難う」


グレンさんは豪快に笑いながら


「良いってことだぁ!困ってる人を見たら助ける。助けたらいつか自分にも返ってくるってカミさんにも良く言われてるからなぁ!あんなとこで寝てたけど泊まるとこはあるかぁ?」


グレンさんが心配そうにこちらを見てくる。確かにそうだ。俺はこれからどうやって生計を建てていけば良いのだろうか?寝る場所、食べるもの、着るものは当分はこのまましか無理だろう。頭の中で色々な思考がぐるぐるしている。


「はいグレン、追加のお肉よ。お兄さんもたくさん食べてね!」


後ろからお肉の沢山乗ったプレートを緑の美人さんが持ってきてくれた。プレートからは油の跳ねる音とともにとてもいい香りがする。テーブルにプレートを置いてグレンさんの隣に座る。


「私はエイナよ。ここの宿屋をグレンと経営しているの。よろしくね」


にっこり微笑むエイナさん。笑顔がとても眩しい。


「それでイチさんだったかしら。今日はお外でぐっすり眠っていたらしいけどどうしたの?良かったら私達が相談にのるわ」


エイナさんの隣でお肉を食べているグレンさんも首をぶんぶんふっている。どうやら俺はとてもいい人達に拾われたのではないかと思う。とりあえず話を聞いて貰おうと思った。


「簡単には信じられない話かもしれませんがよければ聞いてください」


俺は昨日まで違う世界にいたこと、家に帰る途中で謎の手みたいなものに襲われて気づいたらグレンさんが声をかけてくれた場所で寝てたことを話した。話してる間も二人はこちらを見てうんうん頷いている。


「そうなの。あなたは昨日違う世界から連れてこられたっていうのね」


全く動じず納得するエイナさん。グレンさんがお肉を食べ終わるとエイナさんと向き合って頷きあい席をたつ。


「ちょっと外に行きましょうか」




二人についていき宿の外に出る。何か気にくわないことでも言ったかと心配になっているとエイナさんが話し出す。


「実はこの世界は色々と違う世界から連れてこられたものらしいわ。人も文化も元々は違う世界同士のものみたいなの。私達のご先祖様も遠い昔に国ごと持ってこられたらしいわ。あなたも連れてこられたのね」


突然とんでもないことを言い出すエイナさん。


「広場からでも良く見えたはずだけどほら北の方を見て」


俺に向かってグレンさんとエイナさんが指をさす。いや俺ではない。俺の後ろだ。振り返って二人が指した方向を見るととんでもないものが見えた。


「あれのことを皆ゴッドハンドって呼んでるわ」


まるで空を貫くと言わんばかりの手がそこにあったのだった。


「あの手が何でも引っ張って来るのよ。実際に連れてこられた人を見るのはあなたが初めてだけどね」


俺はエイナさんの話を聞きながらも、ゴッドハンドと言われるそれから暫くの間目を離すことが出来なかった。




スローペースですが頑張って書いてみます

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