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第1話 選ばれしもの達の集結 その1

第1話 選ばれしもの達の集結 その1


一人の青年が天樂社学園の校門の前に立っていた。


彼の名前は神楽居矢一。一見、普通の16歳の青年に見えるが、実は「填園崩し流」の遣い手であり、奥儀の継承者である。


彼は「対悪魔戦略本部」の本部長からの直々の要請の招きに応じ、ここへやってきた。


校門をくぐった瞬間、彼は並みならぬ気を感じ、つぶやいた。


「想像以上に、強い連中が集まっているな」


その時、冷気のような気を校舎の方から感じた矢一は、そちらに顔を向けた。そこには背が高く、端正な顔立ちの制服姿の男子がいて、矢一に目を向けていた。矢一は息を吸い、吐き出す勢いで、冷気を発する人物に声をかけた。


「おいっ、俺に何か」


それでも相手は黙って、こちらに目を向けている


「・・・・」


矢一は再び力を込めて、


「おいっ、聞いてんのかよ?」


それでも、冷気の主は黙って、矢一の顔を無表情で見つめている。


矢一はそちらの方に踏み出しながら、


「お前、喧嘩売ってんの」


その時、後ろから、


「おい、君たち。そこで何をしている」


矢一が振り返ると、眼鏡をした神経質そうな顔立ちの男が立っていた。冷気の持ち主も、そちらに顔を向けた。


冷気の持ち主は、「担任の先生から“幻妖刀選抜コース”へ移るよう、指示されたので、そちらへ向かう途中です」


男は、「確か君は神宮寺(かみみやでら)君だったな。話は聞いている。教務部長室に行きなさい」


続けて、男は矢一に向かい、聞いた。


「それで、そちらの君は?」


「俺は、今日からここに転校してきた神楽居矢一。教務部長に会えって言われたんだけど、どうすればいいの」と矢一。


男は半ば呆れた顔で、


「君は、口の利き方を教わってこなかったのかね」


と言ったが、続けて


「まあいい。私は本校で生徒の礼節の指導を担当している、五十嵐というものだ。私が教務部長のところへ案内するので、ふたりともついてきなさい」


矢一、神宮寺とも、五十嵐について、校庭の隅にある旧校舎に向かって歩いた。


旧校舎は木造の古い建築物で、今にも崩れるのではと心配になったが、五十嵐も神宮寺もそんなこともおかまいもなく、歩いていった。


矢一は、神宮寺から感じたオーラともいえる強い気は何だろうかと考えた。矢一は「填園崩し流」の家に生まれ、幼少のころから最高師範の祖父から徹底的に鍛えられた。祖父は眼光が鋭く、小学生の時の矢一はにらまれただけで、脳天に竹刀を撃ち込まれた気分になった。近所の爺さん達は、皆優しく、剣術の練習をしてい矢一を見かけるとそっと、ジュースの差し入れをしてくれる人もいた。


「なんでうちのじいさんは、こんなに厳しく自分にあたるのか」と恨めしく思いながら育った。


16歳になった今では、祖父に尊敬の念を感じつつも反発を感じているが、やはりかなわないし、怖いと思う。


そんなことを考えながら歩いていると、ほどなく旧校舎の玄関口の前に着いた。


五十嵐について、旧校舎の薄暗い玄関口に入ると、壁のあちらこちらにシミがあり、天井には蜘蛛の巣がはっていた。五十嵐教官は下駄箱に近づき、その中の13番の中に手を入れた。何かを操作しているように見えたが、すぐにその場を離れ、玄関の奥の方に進んでいった。突き当りを右手に折れ曲がると職員室があり、五十嵐教官は二人にここで待っているように伝え、部屋の中に入っていった。暫くして、五十嵐教官は背の低い初老の男性を連れ出し、二人に紹介した。


「こちらは、提和教務部長。これから君たちに“幻妖刀選抜コース”への転入について、説明をしていただくので、よく、話を聞いておきなさい」


「それでは、教務部長、よろしくお願いします」


提和教務部長は、


「私は提和といいます、よろしく」


と挨拶し、続けて、


「君たちのことは、上から聞いています」


矢一と神宮寺も頭を下げた。


提和教務部長は、


「君たちには、今日から“幻妖刀選抜コース”へ移ってもらいますので、コースについて説明させてもらいます。では、さっそく応接室に行きましょう」


二人は、提和教務部長の後について、応接室へ歩いて行った。


提和教務部長は急に立ち止まり、二人の方に振り返り、言った。


「あっ、そうそう。一人、先客がいます。君たちと同じコースに参加するメンバーです」


提和教務部長は応接室の前に着くと、ドアをノックした後、開き、二人を中に招きいれた。


二人が応接室に入ると、同年代の女子が立ち上がって、こちらに向かって頭を下げて言った。


「初めまして、わたし星宮奈の葉です」


「星宮君、君とチームを組む神宮寺君、神楽居君だ」


「神宮寺です」


「神楽居」


提和教務部長は、全員にソファに座るように言った。書類を何枚か配り、必要事項を記入させた後、告げた。


「では、“幻妖刀選抜コース”の説明をします。こちらのスライドを見ながら話を聞いてください。その後は誓約書に署名して、説明は終わります」


提和教務部長はプロジェクタに声をかけると、スクリーンに悪魔の首領パパリの映像が映し出された。



<第2話につづく>

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