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アオハルロックンロール  作者: 松宮 奏
11/11

そして武道館へ

良樹達HANIMAの演奏が終わると、俺達の出番だというにも関わらず、体育館にぎっしり詰まっていた観客達は一斉に出口の方へと向かい始めた。

 この非常事態に俺は慌ててはいなかった。なぜならこれも、雄介の予想通りだったからだ。多くの観客がHANIMAの演奏を見に来ているということは百も承知だ。そして、あまりの人の多さに観客達は出口がつっかえてなかなか外に出れないでいる。これも大方雄介の予想通り。いや、こうなって欲しいと願っていた状況だった。


「和真なら分かると思うが」

 いつものようにカラオケで練習をした後の夏休みの帰り道。雄介が言っていたことを思い出す。

「ライブってのは、歌が上手いだけでもダメなんだ。演奏が上手いだけでもダメなんだ。かと言って、歌と演奏の両方が上手くたってダメなもんはダメなんだ。いいか。上手い演奏と歌を一層引き立てるのが演出だ。どんなライブも演出が良くなけりゃ台無しだ」

 

 ステージの方に目をやる。セットチェンジもほどほどなスタッフの生徒達が慌ただしく作業している中に、雄介が颯爽と現れる。本来であれば司会進行役の生徒に名前を呼ばれてから、パフォーマンスを始めなければならないから、いわば反則行為のようなものだ。だが、慌ただしく動くスタッフ達に紛れて雄介の存在に気がつく者はいない。チューニングなどはもう既に舞台裏で済ませている。俺の隣でHANIMAのライブを見て予定よりスタンバイが遅れていただろうに、流石だ。抜かりなく準備を行なっていたようだ。

 雄介は雄介の相棒であるギター「黒霧」と、学校で用意されている大きなアンプをシールドで繋いだ。雄介は演奏を始める前に顔を下に向けて心を落ち着かせるというルーティンをする。来る。雄介の演奏が数秒後に始まる。。。俺は胸が高鳴った。

 度肝を抜かれろ!!!!!!

キュイイイイイイイイイイイイインンンン

 一瞬、耳を塞ぎたくなるような甲高い音で「黒霧」が鳴き、帰ろうと出口まで差し掛かっていいた観客達も鳴き声の方へ目を向けた。そんな観客達を逃さないとばかりに、息つく間もなく雄介は、オリジナルのリフを奏で始める。何処かパンクを思わせるような演奏で帰りかけていた観客達の心を惹いた。

 確かにさっきのHANIMAのライブパフォーマンスも圧巻だったが、ギターを演奏していた良樹と雄介を比べて、恐らく素人目から見ても、圧倒的なレベルの差がある。それは良樹が下手という訳ではない。雄介が高校生とは思えないほど段違いに上手いのだ。

 オリジナルのリフを演奏し終わると、観客達から拍手が巻き起こった。こちらに傾きかけてきた観客達の心を雄介は逃さない。今度はさっきHANIMAが演奏していた、MANIMAの「オドルフタリ」の演奏をアレンジを加えて始めた。すると、先ほどの興奮も冷めやらない観客達は、もう既に体育館の外へ出てしまっていた観客達も含めて、一斉に戻ってきた。「エイ、オウ」と言う、あのお決まりのフレーズと振り付けを観客達は誰からともなく始めた。

 「オドルフタリ」の演奏も終わった。観客達は次はどんな演奏を聴かせてくれるのかと、もう餌を目の前にした仔犬のような状態だ。ステージで慌ただしく動いていた。スタッフの生徒達はステージ袖にはけていた。雄介はステージ真ん中へ移動する。次に演奏を始めたのはオレ達のオリジナル楽曲「カゲロウ」のサビ部分だった。観客達はテンションが上がっているからか、初めて聴くはずのアップテンポな「カゲロウ」のメロディに合わせて手を挙げてノッていた。

 ステージの上から雄介が、体育館後方の二階の卓球場にいるこちらに目配せをして、指を指してきた。

「準備は整ったぜー!!!」

雄介が叫んだ。何事かと観客達は雄介が指を差すこちらの方を振り返った。

 と、同時に会場が暗転した。

 雄介の演奏が始まったのに、俺がステージ上に行かず、ずっと卓球場にいたのは忘れていたからではない。いくら忘れっぽい俺でもそんなことを忘れる筈がない。これも雄介が考えた演出だからだ。夏休みのいつかのカラオケ帰りに雄介が言っていた事をまた思い出すーーー。


「前の出演者が誰になるか分からないが、盛り上がっていれば盛り上がっているほど、いい。俺たちなんて、全く誰にも認知されていないから、見ようともせずに帰る観客達がほとんどだろう。そこで、俺が少し早めにスタンバイをして、ステージに上がり、俺の演奏でその観客達の足を止める。俺のあまりの演奏のうまさに観客はギタリスト単独の出し物だと思うだろう」

 そういうとフフンと鼻高に雄介は笑った。

「だが、実際は違う。俺たちはユニットだ。俺のギターで足留めをした観客達を、ステージ上にいない和真が今度は歌声で虜にする。俺の演奏と和馬の歌声。観客達にしてみれば、2度ビックリって訳だ。これが上手くいけば会場が盛りあがる事は間違いない。コツは、楽しむ事だ」


 暗転した会場。俺は右手に持ったマイクの電源をオンにして、口元に近づける。もし上手く行かなかったら…そんならしくない考えがふと頭をよぎった。だが、すぐに「コツは楽しむことだ」と言った雄介の言葉を思い浮かべた。すると右手の震えが止まった。右手が震えていたことに初めて気が付いた。緊張なんてしないと思っていたし、雄介にも言っていたのに、心のどこかでは緊張していたのかと思うと、その事実が自分で可笑しくて、力が抜けて完全にリラックスできた。

 よし。これならいける。

 暗転した会場の中で雄介の「黒霧」の音だけが、控え目に鳴き続けていたが、その鳴き声が止んだ。

 それを合図に、卓球場にいる、俺にスッポットライトが当たる。

 俺は大きく息を吸い込んだーーー。

「濡れた〜まんまで走り出せ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 ビブラートを効かせて目一杯声を伸ばした。歌詞が聞き取れるようにハッキリと、ゆっくり、「カゲロウ」のサビ部分をアカペラで歌う。

「濡れたまんまで走り出せ 僕の時間は 君のその気持ちは〜 風邪に吹かれ飛んでゆく そんな儚く 美しいものさ〜〜〜〜〜」

 そこまでアカペラで歌うと、会場が明転し、雄介が演奏を始めた。うおおおおおおおおおおおという観客の歓声があがり、拍手が巻き起こる。どうやら雄介の作戦は成功したようだ。ステージから空中でガッツポーズをぶつけて来る。

 俺もガッツポーズを返すと、振り返り、階段に向かって走りだした。

 とてつもない体感速度だ。多分、陸上部にも負ける気がしない。

 階段へたどり着くと二段飛ばしで駆け下りる。階段を全て降りると、観客でごった返したフロアの隙間を通り抜けてステージへと向かった。ステージへ上がる為の短い階段にたどり着いた。階段をあがった所には雄介の笑顔が待っている。俺は、その階段も二段飛ばしで駆け上がった。そして今度は、空中ではなく、しっかりとしたハイタッチを雄介と交わした。

 リハーサルで決めていた位置へ移動する。俺はセンターで、雄介はフロアから見て上手側だ。

「あらためまして、『カゲロウ』という歌です。聞いてください」

 俺がそう言うと観客のは手と歓声を上げる。いつか、別館4階にある理科室横のトイレの四辺形のライブハウスで見た観客達と似た表情を今いる観客達もしていた。俺は歌い始める。

「カゲロウ」は観客達と盛り上がれる、ちょっとした振り付けを考えている。

「立ち並んだビルの隙間 日が焼け落ちて 眠って朝になればまた登ってる」のAメロ部分が終わった後、「ヘイ、ヘイ、ヘイ」と、拳と声を上げる。Bメロの「だけど見上げてごらん 同じ空は もう 2度とは無いだろう」の「同じ空は もう」の部分では天井を見上げる仕草をする。そしてサビの部分は俺だけではなく、観客も雄介も含めて全員で合唱する。

 一番は初めて聞く曲に戸惑いながらも、テンションの上がった観客達は見様見真似で合わせていると言った感じだったが、一番でなるべく振り付けなどを伝わりやすいように歌ったから、2番からは俺や雄介の思惑通り、観客達もノリノリだった。「カゲロウ」の演奏が終わった。

「楽しいな〜おい!!!」

 俺はもう感情が爆発してそのまま言葉にした。観客はそれに応えてくれる。俺はステージをからフロアに飛び降りた。ギャーっとまるでスーパースターになったかのように迎えられる。俺はフロアの真ん中まで行った。俺を囲むように輪が出来る。

「貴方には大事な人がいますか?大切にしていきたいと思う、「宝者」はいますか?」

俺はその場で回って、囲むように並んでいる観客の顔を見ながらいった。その輪の中には三好カラオケの店長がいた。担任のゴリラっちょもいた。カメラを持った柏原もいた。皆んなが笑顔だった。俺はみんなにガッツポーズを向けた。

「次の曲はそんな人を思い浮かべながら聞いてほしい曲です。おい。みんな肩組んで。その方が楽しいから」

 俺は観客達に肩を組むように諭す。若干戸惑う様子を見せる人もいたが、一際テンションも背も高い学生服を着た男5人組が肩を組み始めたのをキッカケに肩組みの輪が徐々に広がっていった。

「最高だよ」

 その5人組に向かって親指を突き立てるポーズを向けて言うと、イェーイという声が返ってきた。

「宝者」のイントロを雄介が弾いて、曲が始まる。「宝者」では曲間で足を踏み鳴らして走っているような動作をする。サビでは肩を組んだ状態で飛び跳ねながら合唱する。 

「カゲロウ」と同様に1番は激しいパフォーマンスを意識しながらもやりたいことが伝わる様に丁寧にライブをする。観客達はそれについてくると言った形だ。2番目からは内容を理解した観客達がこちらの意図に沿った盛り上がりをしてくれる。まるで観客達も演者になったかの様に。俺もそんな観客達を見ていると、歌いながら楽しさが爆発して観客に混じって、肩を組んで跳び跳ねながら歌っていた。最後の1小節に近づくに連れてこのまま歌い続けたいという想いになった。

 しかし、曲は終わる。

 曲が終わると大きな拍手やハイタッチの嵐の中フロアを進みながらステージ上へ戻った。

 まだ鳴り止まない拍手に俺は手を振って答えた。

「皆。今日は見てくれて、一緒になって楽しんでくれてありがとう。俺達もめちゃくちゃ楽しかったぜ」

 イエーイと観客が歓声を上げた。フロアにいる観客の顔を見渡す。

 ライブハウスでアーティストが「後ろまで見えてる」と言うことがあるが、そんな訳ないだろうと思っていたが、あれは本当だった。体育館のフロアの一番後方にいる人達の顔も、まるで画像を拡大したかの様にハッキリ見える。そのどれもが楽しそうに表情をしている。

 終わりたくない。この時間を終わらせたくない。だけどもう、時間は迫っている。

「ああ〜。まだ終わりたくないな」

 俺はまた想いをそのまま口にした。そして雄介の方に目を向ける。雄介は頷いた。

「もし。俺と、俺達と同じ気持ちの人がいるなら、またすぐ、この後すぐ、俺達を呼んでくれ。今日はどうもありがとう」

 それだけ言って俺と雄介は鳴り止まない拍手の中ステージの袖へはけていった。


「雄介!!!!!」

「和真!!!!!」

 俺と雄介はステージ袖へ入ってすぐ、「貴方はどうしてロミオなの」と言わんばかりに互いの名前を呼び合い、抱き合って笑い合った。まだ優勝が決まったわけでも何でもない。もはやそんなことはどうでもいいと思えるくらい楽しめた。その感情からくる行動だった。

 ステージ袖で待機していた。スタッフ達にも拍手された。流石になんだか照れるな。

 抱き合っていた手を解いた俺と雄介は、水分補給の為、ステージ袖の奥へ置かれた机の上に水をとりに向かう。すると、その机の前にHANIMAの3人がいた。バツの悪そうな顔をしている。

「おお!!お疲れ様。お前らのライブめちゃくちゃ楽しかった!最高だったよ」

 俺は考えるより先に体と言葉が動いていた。敵だとか味方だとか、もうどうでも良かった。凄えライブをする3人が最高だった。だから3人に向かって最大の賛辞を浴びせた。

「お前らも…お前らのライブも凄く良かったよ」

 良樹が口籠もりながら言う。

「さっきまでノリノリで楽しんでましたもんね」

 スタッフの生徒の1人が横槍を入れるように言うと、良樹達HANIMAの3人は顔を赤くして照れ臭そうにしていた。

 フロアから一つに纏まった大きな声が手拍子と共に聞こえてくる。よく耳を澄まして聞いてみると、その声達はアンコール、アンコール、アンコールと繰り返している。俺と雄介は顔を見合わせてハハッと笑い合った。これも雄介が想定していた展開だった。

 しかし、ここから先は違っていた。

「お前らも一緒に出ないか?いや、出よう!」

雄介がニヤニヤしながらそう言った。楽しい事を考えてる時、雄介はこういう表情をする。俺もそれに同意した。

「実はこのアンコールも想定していて、もう一つ楽曲を用意しているんだ。楽譜は俺と和真の文がある。俺達は覚えているから、それをギターの良樹とベースの道弘が使えばいい。智哉は何とかして合わせられるだろ」

 3人は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして唖然としていたが、楽しい事をする時の俺と雄介は周りの事なんてお構いなしだ。俺は良樹と智哉の、雄介は道弘の手を無理やり引っ張ってステージに向かった。「ちょっと、それはダメですよ」というスタッフの生徒の声も全く聞こえない。


 ステージに戻ると、驚きと戸惑いの悲鳴が起こり、そしてすぐに歓声に変わる。この日1番の声だった。雄介が良樹と道弘に楽譜を渡す。良樹達3人は何が何だか分からないと言った感じだが、体が覚えてる通りに楽器のセッティングを初めている。 

 面白い事になってきた。俺は手に持っていたままだったマイクの電源を再びオンにした。

「アンコールありがとうございます。なんとアンコールはHANIMAと一緒にやります」

 まるで昔からの念願が叶ったかのように、観客達は改めて歓喜の声を上げた。

 俺はチラッとステージ全体に目を配る。上手にはギターを持った、雄介と良樹。下手にはベースを持った道弘。後方にはドラムの前に座る智哉。全員のスタンバイが完了してる事を確認した。雄介と目が合い、頷き合った。

「それでは聴いてください。最後の曲ですーーー」




 

 時が立ち、青春呂久フェスタから数年。日の丸の旗が揺れて、収容人数は優に1万人を超える、駆け出しのロックバンドなら誰だも目指すであろう、この場所に、俺たちは遂に来ていた。

「以上が俺達の結成秘話とでも言うのかな?うん。結成秘話でした」

 考えが纏まりきらないMCにも関わらず、観客は笑いと拍手で応えてくれた。どうもどうもと言った感じで俺は右手を挙げる。スタンドもアリーナも人で一杯のフロア。

今日は、Vo.俺(Kazuma)、Gt.雄介(Yusuke)、Gt.良樹(Yoshiki)、Ba.道弘(Michihiro)、Dr.智哉(Tomoya)で結成された五人組ロックバンド『BULE SHAWER』の初の武道館ワンマンライブという記念すべき日だ。ライブも大盛況の内に終幕しようとしていたアンコール前のMC。見にきてくれた俺達のファンに、感謝の気持ちを込めて普段のライブで話したことのない『BULE SHAWER』を結成するキカッケになった青春呂久フェスタの話をしていた。

「結局、結果がどうなったかって言うと、立ち入り禁止の場所から俺が登場したことや勝手にアンコールを始めたりしたことで俺と雄介は失格。で、HANIMAが二連覇して青春呂久杯を取ったんだよな。アンコールは一緒に演奏したのに」

「いや、あれはテンションあがったお前らが半ば無理やり引っ張ったんだからな?」

 敢えて不服そうに言った俺に、ギターのチューニングを行ないながら良樹がツッコんだ。

「でもお前らも楽しそうにノリノリで演奏してたじゃねえか」

「まあ…それは…そうだな」

 今度は雄介が笑いながらも良樹に鋭いツッコミを入れると、良樹が歯に絹着せぬような返答をした。

「しかも、負けた方が勝った方の言う事を聞くって話。良樹達の方から『俺達が勝ったんだから言う事聞けよ』って言ってバンドに誘ってきたんだよ。それで『BULE SHAWER』を結成したんだよな。良樹は基本ツンデレなんだよ」

 俺が良樹をいじると、良樹が顔を真っ赤にした。そんな良樹を智哉が茶化すようにドラムを叩くと、会場から笑いが起きる。道弘はそのやりとりを見て心底楽しそうにニヤニヤしている。

「でも、青春呂久杯は逃したけど、俺達の動画は雄介の思惑通りにバズって、『BULE SHAWER』としての活動も順調にいって、あれよとデビューが決まってって感じだったんだよな。」

 少々感慨にふけってみる。俺は人で一杯のフロアの全体をもう一度見渡した。

「でもそこからが簡単じゃなかった。甘くはなかった。たくさん苦労して、努力して、何度も諦めかけて、やっとの思いで俺達はこの場所に辿り着いた。ここに来てくれている皆さんが支えてくれたからです」

 そう言うと涙が溢れそうになったが、今はまだ必死に我慢した。

 フロアに向かって、メンバー全員でお辞儀をする。会場からは暖かい拍手が送られてくる。俺は頭をあげた。

「最後にやる曲は、青春呂久フェスタで俺達が初めて五人揃って演奏した曲です」

 もう何の曲をやるのか察しがついたのだろう。観客が待っていましたと言わんばかりの歓声を上げた。雄介と良樹のギターが、智哉のドラムが、道弘のベースが、そんな観客達の歓声を煽るように演奏を始める。俺はステージの中央最前に走った。スネくらいの高さの台に片足を乗せる。俺は観客に想いが届くように、前のめりになって言葉を続ける。

「今の世の中、チンケな意識やプライド。些細ないざこざから、いじめや争いが生まれる。でもあの日。あの日の、青春呂久フェスタでの俺達みたいに、宿敵だった俺達が、いつしか肩を組んでバンドをやっている。そういうことだって、この世の中にはあるんだよな。音楽には何か、そういう絶大な力があるって信じてる。だから俺達は、いつの日か、俺達の音楽でーーー」

 俺はマイクを観客席に向かって突き出した。

『戦争を止めてやる』

 俺の意図を察した観客達が、俺がいつもライブで言う台詞を代わりに言ってくれた。

 俺は満面の笑みで笑った。


 そんな青臭い事を、いつまでもいつまでも言い続けて生きていきたい。


「それでは聴いてください。最後の曲『アオハル・ロックンロール』」

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