白鳥星蘭のはじまり
タイトルを変更した際、本編と番外編に分けました。
わたくしは白鳥星蘭、本日12歳になりました。
ホテルからリゾート開発まで、手広く経営する「白鳥グループ」の創業家に生まれました。
3歳から、ご先祖様が開校した「楼園紅鈴学園」に通っています。この学院は、外国の王家の方も留学されるほど由緒正しく、良家の方がたくさん通われているのです。
幼稚舎から大学までありますので、働く必要のない良家のお嬢様が結婚相手を見つけられるために入学されることもありますのよ。
まぁ、家柄とお金さえお持ちなら、高校までは進学できますからね。
大学は、お勉強できない方にはご遠慮いただいているらしいですわ。学院のレベルが下がってしまいますものね。
ところで、わたくしには、幼い頃に真実の愛を誓った方がおられます。
彼は夜の湖で、わたくしに涙ながらに愛を訴えました。
「君が16歳になったら、必ず迎えに行くよ。だから、約束して欲しい。それまで、その美しい手も、赤い唇も、やわらかな髪の一筋でさえも、決して誰にも触れさせないと。もしも、この約束が破られれば、僕は狂ってしまうかもしれない。そして、ふたりの真実の愛は、散ってしまうだろう。迎えに行く日まで、朝露のように清純であると、誓って――――――僕も永遠に君の王子でいると誓うから」
なんという情熱的で、真摯な告白でしょう。
わたくしは、とても感動したのを覚えています。
お返事ですか?もちろん、はいです。Yes。Ja。Oui
だって、真実の愛ですよ?
王子さまですよ?
夜の湖で告白ですよ?
…コホン。
はしたなくも興奮してしまいましたわ。
その後のことですか?
告白にぽうっとしていたところを探しに来た執事に捕まって、両親から夜中に外出していたことをこっぴどく叱られました。
あの頃のわたくしは、冒険に憧れる、無知な子どもだったのです。
もちろん、つれ戻される前に、彼にはしっかりとわたくしの住所と名前を伝えました。
あれから一度もお会いしていませんが、王子さまはどのようにお育ちでしょう。
早く、迎えに来ていただきたいですわ。
星蘭は王子さまとのお約束を守って、今日も清らかにくらしております―――――――――――。