この世の終わりとナギサ①
蝉がミンミン合唱している今日の朝は、何故かいつもより良いことが起きそうな気がした。
太陽も俺らを見て微笑んでいるような、そんなありがちなストーリーを思い浮かべながら朝練へ向かった。
「おっニイジマ早いな。」
顧問のカトリ先生が俺を見つけては話しかけた。
「はい!次の大会は絶対優勝することにしたんす!みんなで決めたんですから!」
俺たち西山高校のサッカー部は全く強くない。県内の大会でも1回戦敗退。
唯一他と違うならやる気だけはあるということ。弱音を吐く部員などいなかった。
あれ?ゴールの後ろにいるのはナギサだろうか?いつもより暗く見える。
まぁ昨日の事が怖くて眠れなかったんだろうな。ナギサ案外そういうの弱そうだし。
「ナギサー!元気出せよー!」
嘲るように叫んでみた。
「あは...あははははは!」
「ナギサ...?」
急に笑い出したと思ったらナギサは急に倒れこんだ。なぜだろうか。蝉が急に泣き止んだ。
そう周囲の異変に気付いた時には俺はベッドにいた。
薄暗い部屋のベッドに横たわっていた。ふと左を見てみるとナギサも寝ていた。
「レイタ。起きたのか」
カトリ先生が俺たちの看護にあたっていたらしい。
朝早くて保健室の先生がいないからだろうか。
とりあえずよかった。変な地方の廃れた病院に連れ去られたと思ったぜ。
「はい、先生。ナギサは大丈夫ですか?」
少しばかり気になったので先生に問いてみた。
「あぁ、お前が起きるちょっと前に目が覚めてお前と同じ心配してたぜ」
ナギサらしいや。誰よりも自分の心配したほうがいいのに自分より他人の心配するんだから。
まぁ俺も言えたことじゃないんだけどな。
「でも熱中症じゃなさそうだし、かといって二人とも病に侵されてはいなそうだ。なんでお前ら倒れたんだろうか。もしかして例のコンビニに入ったか?」
レイのコンビニとはなんだろうか。そういえば、昨日コンビニ行ったんだっけな。寝てたら忘れかけてたぜ。
「あ、はい。ナギサと昨日の帰りに寄りましたけど?」
「おーそうか。昨日から南町のコンビニに入った客が行方不明になるとかなんとかで騒いでるだろ?だから気を付けとけよー。」
南町?昨日のところだよな。まぁ連れ去られるとかなかったし、どうにか気を付けとけばいいだろう。
4時間目から授業に参加することになった。いつも通り意味のわからない数学だ。
いつものように授業中寝ることにした。