過去の世界②
今日から小学生になれる!楽しみだな~!
あっ!ナギサちゃんだ!
「おはようナギサちゃん!やっとお勉強できるね!」
期待に胸を躍らせ、不安など感じていない。僕はレイ君っていうの。
「レイ君おはよ!ナーちゃんもお勉強したくて昨日寝れなかった!」
まだ大きめのランドセルが似合わない女の子ナーちゃん。
「あははは。今日はまだお勉強できないよ。小学生になるための式があるからね」
「レイ君のパパどーして?ナーちゃんお勉強したいのに!」
「パパ!僕もやりたい!なんでダメなの?」
他人から見れば優等生予備軍、やる気に満ち溢れすぎてる。
☆☆☆☆
「23番、ニイジマ レイタ君。」
「はい!はい!はーい!」
あれが担任の先生なのかな?優しそうな先生だなー。
そんなことをいろいろ考えているうちに気づいたらホームルームが始まっていた。
慣れない机、慣れない黒い板。慣れない頭上の扇風機。全てが新鮮だった。
「時計の針が12に重なるまでおトイレ休憩の時間でーす!」
担任のヤナギバ先生がそう僕たちに言った。
「レイくーん!あーそーぼっ!」
「だめだよナギサちゃん。先生に怒られちゃうでしょ?」
「レイ君のいじわる」
ナギサちゃんたらいつもこうなんだから!僕がナギサちゃんのお兄さんになってあげるんだから。
「ねー、レイ君...あれなんだろう?」
ナギサちゃんが指さす方向に目を向けてみると黒くて、でも消えかかってて、なんともいえない正気のない先生が立っていた。
入学式で何かお話していた先生にも似ている。つまらなくて全然聞いてなかったから全く覚えてないけど。
その時だった。口が開かないことに気が付いた。入学式でお話してた先生だよって言おうとしたのに全く口が開かない。なんでだろう。
その時だった。その先生がこちらへスピードをあげて歩いてきた。
ナギサちゃんが叫び声をあげて、僕の手をつかみ逃げた。
ヤナギバ先生のところに言いに行った時にはもうその先生はいなかった。
あれはなんだったのだろうか。
無知だった僕が唯一理解できたのは、ナギサちゃんが僕の命を救ってくれたということだけだ。
※誤字があったため訂正いたしました。