過去の世界①
ナギサに脅されて一緒にコンビニ来てみたけど、なにこの不気味なコンビニ。
品揃えは最悪。ほとんど売り切れてるし、店員にはもはや心臓がないみたいな顔。
これにはさすがのナギサもアイスどころじゃなさそうだ。
「レイタ...一回ここから出よ?ちょっとあたし無理こういうところ。」
お店に対するナギサなりの配慮であろうか。ギリギリ俺に聞こえるくらいの声でささやいた。
「あぁ。また今度奢ってやるから一回出ようぜ」
俺も俺なりの配慮で小声で答えた。
「ふぅ。レイタ~。本当にさっき怖かったんだけど!」
ナギサのほうを見ると店内にいる時とは違って顔が明るく見えた。
それもそうだな。さっきは本当に某おばけ屋敷に来てるのかと思うくらい怖かったもんな。
いつも俺の説教する体育教官の笑顔の数億倍怖かったからな。
「本当にお前死にそうだったぜww目から汚い涙がこぼれそうだったもんな」
「レイタのいじわる!レイタだって足震えてたわよww」
「まぁ生きててよかったな、ナギサ」
ナギサは俺の言葉を聞いて2度、いや3度うなずいていた。
俺の家に着いた。
ナギサと俺の家は道を挟んで反対側。小さい車やっと一台入れる道だからもはや庭が繋がっているようなものだ。
「じゃあなナギサ。夢の中に今日のことが出てこないといいな」
「レイタだってトイレいけなくならないようにね!」
いつもの通りお互いを馬鹿にして今日のやり取りが終わった。
母さんに呼ばれたからゲームをやめて夕飯を食べに行くことにした。
せっかく中ボスまで来たっていうのにタイミングが悪いぜ。
オムライスに漬物という意味のわからない組み合わせの夕飯を食べていると、ふとテレビのニュースが気になった。
「廃れたコンビニに入った客相次いで行方不明」
よくよく見てみるとナギサと俺が帰りによったコンビニじゃないか。ニュースの内容はパッとしなかったけど、とりあえず気味が悪いということだけはわかった。母さんが言った。
「あれ?ここのコンビニ昨日いっぱいで閉店だったけど、この事件今日の話よね。おかしいわね~。」
「でも今日ナギサと行ったけどやってたぜ。母ちゃん、なんか勘違いしてるんじゃね?」
母ちゃんはよく間違える。昨日も俺と近所の爺さんを見間違えて学校の事聞いてたしな。
いつも通りだと思っていた自分が今となれば、「あぁバカだったな」と思える。