いつもの帰路
結局は「最悪だった」としか言いようがないだろう。
全ての国が死んだと思えば、全ての生きるものが死に、挙句の果てに空間すら残らなくなったのだから。
あの可愛い女の子だって、八百屋の兄ちゃんだってきっと存在すら消えてるんだもんなー。努力して嫌になってまで手に入れたものをあんな一瞬で亡くすことになるなんて思ってもみなくて。でももう旅路を選ぶことすらできなくなっちゃって。
5つの国が遥か昔1つの国だった時。神は国の民に「妬み」という情を与えた。全てが公平にバランスよく保たれていたのにたったそれだけの情ですべてが壊れてしまった。国の老いた民、生まれてきたばかりの民でもその情を忘れても手に入れてすらいなくても、その常識が変えられてしまったのではもうどうしようもなかった。
光、炎、水、闇、木の5つの人間ではない別の生き物がこの妬みで溢れた世界を正した。
生きる意味、道先をすべてにおいて結果をしっている光。いらないもの、憎たらしいものを消す炎。小汚い人間の感情を正す水。相手を邪悪な感情で狂わせ、襲う闇。そして滅びた生き物_木。
それぞれの国、即ち生き物にそれぞれ正しい人材を送った。その結果、戦乱は世界や国々からは消え去り妬みの情などは人間は再び忘れ、手に入れてすらもいなくなった。
☆☆☆☆
「あーあ。また今日もしくじったぜ。」
そうだよまた今日も女子更衣室覗き見したのチクられたよ。なんだよちくしょう。
「レイタまたやったわけ~?あきれたー。」
俺のことを誰が嘲っているかと思えば、いつもの通り幼馴染のナギサだった。
俺の事なんでも知ってるからって人のパーソナルスペースにぐいぐい入ってくるし、嘘が見抜けないとわかってて、財布ないフリして人の金でラーメン食いやがるし。
取柄はただスタイルがいいだけだろこの野郎。
「あーまたあたしの事でなんかグチグチ心の中で言ってるでしょー。気味悪い。」
やめろ!その気持ち悪い笑顔!!
「今日の事レイタのパパママにチクられて欲しくなかったらアイス奢りなさい!」
うわー。出ましたナギサのクソみてえなところ。
でもまぁ、あのことを思い返すと今回の件とは関係なく、恩を返したいなんて思っちゃうんだよな。
夏のモクモクせまる入道雲を見上げながら、いつも通りの帰路を歩いていた。