10days 6
6days
『エンタ、yu-taの会場わかったよぉ。
舞花保育園だって。
ユーチがチケット取りいってくれてるから。』
保育園に預けられていると言う彼に、放課後ボランティアをしているメンバーの一人が接触してくれるらしい。
しかし、このことは内緒とはいえ、このメールはどうかと思う。
一応、大学時代の友人で、同じアーティストのファンということにしてあるが。
さすがにこのメールの暗号は凄い。
誰にも悟られず、かといって、意味も通じる。
『エンタ、ユーチつれてきたよ!』
あっ、はじめまして。
ユーチです。
えっと、ユータ君の話を聞いてきました。
それによると、ユータは姉の存在を薄っすら覚えているという。
いつも、優しく子守唄を歌い、あやしてくれた姉のこと。
『ユータ君は少なくとも、お姉さんが不良だったなんて思ってない。』
ユータ君には渚海の記憶がないから。
ただ、時々夢を見るそうです。
優しそうなお姉さんと一緒に幸せそうに笑ってる夢を。
きっと、ユータ君に残る赤ちゃんの時の記憶がそうさせてるのかも。
一度、和尚にユータ君のこと見てもらいましょうか。
案外、ユータ君を見守っているかも。
『うーむ。確かに、強い気配がするね。
彼を守りたい、強く思わないと出ない気配だ。』
まだあどけない少女だね。
ずっと、子守唄を歌っているよ。
お姉ちゃん。
いるんですね。ここに。
僕を守ってくれる守護騎士様ですね。
『yu-taのことで重要情報だよ。
神社の境内に来て。』
ユーチから連絡が入ったのはその夜のこと。
先生、ごめんなさい。
呼び出したりして。
でも、相談したくて。
ユータ君の身体に、明らかに自然にできるはずない大きな青あざが。
大人に暴力を振るわれてるんじゃないかって。
核心は突かないが、きっと、渚海の時も同じだったのかもしれない。
渚海は弟を守りたくて現世にいるとしたら?
渚海の弟を守らないと成仏できないとしたら?
疑問は浮かんでは消えていく。
『おばあちゃん、今日は国からの手紙が来ているよ。』
そうかい。ありがとさーん。
どうせ、録でもないことかしら?
いつも、からから笑って陽気なおばあちゃん。
配達の時にいつも手紙を待っているようで気にかかって声をかけたのが始まり。
旦那の遺骨が届くのを待ちよるんよ。
結婚してすぐに戦地に赴いたでなぁ。
何しろ、一緒に過ごした覚えがない。
戦死報告書は届いたけどなぁ。
フィリピンのレイテ島辺りで、出撃に伴い死亡。死亡日時は不明のため、出撃日とする。
たったこれっぽっち。
たったこれっぽっちで死んだと思えんでなぁ。
切なそうに笑う老婆。
次はいい知らせを持ってきますよ。
声をかけると、彼女は幸せそうに微笑した――――。




