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10days  作者: 明日奈 美奈
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『…リスカしたんだ。』

自慢げなクラスメイトの声。

命を無駄に扱うな。

そう叫びたかった。

あたしは生きたかったし、まだ、まだ、まだ、やりたいことがいっぱいあった。

生きるってことの意味をユータに教えてあげたかった。

高校生になったら恋をして、学校を出たら、ささやかでもいいから家庭が持ちたかった。

優しい旦那さんとやんちゃ坊主な息子におませな娘。

どんなに貧しくたっていい。

家族が笑っていられるなら。

そんな、平凡な夢でさえあたしは失った。


『世の中には生きたくても生きられない人もいる。

何を考えてるのか知らないけど、そんな人たちより幸せで恵まれてるんだから、命を大切にしたらどう?』

どうせ、こんなこと言ってもわかりゃしないんだ。

あたしたちのことを気づかなかった世間の奴等には。

あたしは基本、人を信じない。

あっ、おばあちゃんは別ね。

あの人はあたしにとっての親も同然の人なんだから。

あたしは命を無駄に扱う人間が嫌いだ。


『おばあちゃん、生きるって大変だね。

命って、重いのにみんな知らずに捨てるんだね。』

生きる意志がないなら、あたしにくれたっていいのに。

本当はもっと生きたかったなぁ。

おばあちゃんはもし、もっと生きられたら何をしてた?

うーん、そうだねぇ。

戦争がなかったなら、軍隊に入るなんてバカなこと、彼も言わなかっただろうし。

とりあえず、おバカな彼を張り飛ばして真面目に働かせて、平凡に暮らしていたかしら?

…おばあちゃん、見かけによらず旦那さんを尻に敷く肝っ玉母ちゃんだったんだぁ。

あたし、てっきりあの時代の女性って大和撫子だと思ってた。

おしとやかでいかにも淑女ってかんじ。


『彼に会えたら、おばあちゃん、どうするの?』

彼が帰ってきたら、とりあえず、殴るかしら?

…おばあちゃん、逞しいです。

もっと早く帰ってきてどうして守らなかったのって怒ってやるわ。


『でも、どうしても彼のことが好きだから、着いていくと思うわ。

もう、一人残されるのは嫌なのよ。』

…あたしは、弟のユータを守りたいから。

だから、誰かに死んだ理由を探してもらいたい。

あたしの死んだ理由にこの想いの元の理由があるはず。

初めて人にあたしは心を見せた。

ユータのことは誰にも話したことはなかったのに。


『これが来週の慰霊祭のお知らせです。』

今年も、成仏できないのかなぁ?

あたしは毎年、慰霊祭の前日までの10日間だけしか現世に居られないのに。

あとは、ただ、この学校の中で一年が過ぎるのを待つだけの日々。

慰霊祭の祈りも届かない――――。

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