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10days  作者: 明日奈 美奈
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『おばあちゃん、協力してくれてありがとう。』

この世界の幽霊(何らかの強い思いの類いを残した者の自我)は思いの強い場所や人の近くに漂うと言う。

あたしもその一人だ。

幽霊は基本、死の瞬間や直接的な死因の関連事項についての記憶がない。

あたしの場合は事故死じゃないことは覚えていても、さて、一体何が原因で怪我をして死んだかわからない。

あたしは死んだ理由を誰かに突き止めてもらわないと成仏できないと思っている。

ただ、人に見える姿でいられるのは1年でたったの10日間だけ。

おばあちゃんは1年中人に見えるらしいが。

おばあちゃんは恋人の帰りを待っているのだと言う。

この、70年間ずっと。


『彼が出征していってっきり。

外地から帰ってこなかった。』

終戦直後に死んじまって、彼の実家で待ってるんだよ。

彼が見つかるのを。

うーん。おばあちゃんの恋人は外国で死んだから、見つかっていないのかも。

ニュースとかでよくやっていたもの。

おばあちゃんと出会えたのは本当に偶然のこと。

おばあちゃんはこの街全体の地縛霊で自由に街の中を歩き回れるらしい。

そして、あたしを見つけて、孫として年10日間だけ学校に通わせてくれている。

帰れないあたしの代わりにおばあちゃんが先生の相手をしてくれる。


『今度の先生はあたしの死因を探してくれるかしら?』

そうだねぇ。私も早く渚海ちゃんには成仏して、今度こそ幸せな人生を送ってもらいたいもんだ。

優しく笑うおばあちゃんにおばあちゃんも早く結婚できるといいのに。

だって、次会うときは結婚するときって約束してるんでしょ?

あたし、そのときが来たら、一番にお祝いをするね。

だって、あたし、おばあちゃんとこの学校で会えたこと本当に嬉しいから。

渚海ちゃんが本当の子供か孫だったらこんなかわいい子を大切に育てただろうになぁ。

あたしの目には涙が浮かんでた。

こんなこと、生きてる間に言われたことない。

あたし、おばあちゃんの娘に生まれたかったなぁ。

生まれ変われるなら、おばあちゃんと恋人の彼の娘に。

おばあちゃんにこんなに慕われて想われている人だもん。

いい人に決まってる。

きっと、あたしのことを大切に育ててくれるよ。


『神様、あたし、幸せに生きたいなぁ。』

これがあたしの願い。

だけど、一人の人間に起こせる奇跡はひとつだけ。

だから、あたし、あなたを救う力がほしいな。

ユータ、幸せになって。

あたしが生きられなかった分まで生きて。

これが、あたしの願い――――。

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