10days 2
2days
『…今日もあなたの泣き声が聞こえるね。
お姉ちゃん、あなたのことを守りたいの。』
町を見下ろす高台に建てられた小学校。
その中で一番高い位置にある時計台が少女のお気に入りの場所だ。
暁の空、微かに聞こえてくる大切な人の泣き声に絶対に守ると誓ったんだ。
『主任、聞きたいことがあるんすけど。
昼休みいいっすか?』
5年前の不審死のことを聞きたいんです。
ああ、忘れてた。
あれがあったから、うちの学校制服ができたんだ。
そう言って、彼は事件の詳細を教えてくれた。
『事件の始まりは、生徒が夜の学内で不審死を遂げたことにある。』
当時のうちの学校は私服で、身元が特定しにくかった。
だから、うちの学校は制服を作った。
彼女のような悲劇を生まないためにも。
宮田 渚海は5年前のちょうど今頃転校してきた転校生らしい。
生きていれば、16歳。
高校生になっているはずだ。
しかし、そんな彼女の命は突如として原因不明で失われた。
硬膜下血腫で、怪我を負ってからしばらくは意識があっただろうこと。
意識はありさえしても、かなりの頭痛を伴ったはずで苦しんだだろうこと。
それでも、学校まで瀕死の状態で辿り着いた。
しかし、巡回の守衛は彼女の姿形から地元の不良だと判別し、帰るよう少しいなしただけだった。
彼女の親は、事件後、彼女の不良行為からの怪我だろうと警察に訴え、事故死とされた。
『そのときに守衛がうちの生徒で、怪我に気づいていれば。』
意識が薄れかけていて反応できなかったらしい。
もし、誰かが気づいたなら、彼女は死なずにすんだ。
悲しそうに呟く主任はこの事件の翌年に赴任してきたらしい。
もうすぐ、彼女の慰霊式がある。
この学校の生徒、教師問わずに全員参加だ。
うちのクラスも例外ない。
当時、宮田 渚海のいたクラスメートも全員が学校に外出届を出して参加するらしい。
彼女はとても慕われていた。
そして、そのクラスメートたちは一人残らず渚海は事故死じゃないと訴えた。
その主張も握りつぶされていたが。
『ユータ。あなたはあたしのこと覚えてないよね。
だけど、あたしは覚えているよ。』
初めて会えた日の嬉しさも、少しずつ大きくなってきて遊べる日を楽しみになった日も。
あなたを守りたい。
あたしのようにこんな辛い目に会わせたくない。
だから、戦うよ、あたし。
ユータ、弱虫なお姉ちゃんを許してね。
ごめんね。
ユータが生まれたときにユータだけは守るって決めたのに、死んじゃって。
だけど、今度は守るからね――――。