10days 未来
future story
『夏樹、優太、夕飯よ？』
階下から母の声。
懐かしい夢を見ていた気分だ。
一人の少女が生きて、死んで、一人の人間を救った。
『うっ。…あたし。
…ユータっ。あたし、ユータを一人にっ。』
契約により、あなたの魂は輪廻転生のルートに乗ることになった。
しかし、あなたは禁忌を犯した。
それによって、正当な転生はできなくなった。
本来なら、御霊となって、このまま何十年も思いを残した人の守りをするのが決まり。
『わかっています。
でも、あたしは愛する家族、ユータを守れたことに悔いはありません。』
本当の愛を知っているあなたは、地縛霊になってまで弟を守ろうとした。
結果的に自分がいかなる罪を負っても守り通した。
ここまで愛のためにできる人は本の一握りです。
そんなあなたは…。
いきなり、変な光に包まれる。
『そんなあなたは、神に愛された御霊として生前と霊であった時のしがらみを持ち、転生するのです。』
それって…。
本来なら、水先案内はしませんが、特例です。
あなたは韮崎 捺、韮崎 要の娘に生まれるのです。
そして…、あなたの弟、宮田 ユータは現世での命を全うした後に、あなたの弟として来世に生きる魂となるでしょう。
『ありがとうっ。神様。
あたし、生まれてきてよかった。』
あたしの時は間に合わなかったけど、ユータだけでも助かったし、おばあちゃんの娘だったらって思ってたことが叶う。
いいえ。あなたには謝らなければならない。
前世を不遇な運命の元に終わらせてしまったのはこちらの責任。
そのまま繰り返される連鎖のもとを断てなかったことも。
これは罪滅ぼしでいかない。
強い絆で結ばれた家族を引き裂き、歪みを生じさせてしまった私に責任がある。
『私はおろかにも人間の戦争を止めることができなかった。』
その結果、凄惨な現場をたくさん見たし、救えなかった魂もあった。
本来なら、その世に生まれ出るはずだった命、未来の希望ですら消された時、この子達を未来の、争いのない時代の子供に生まれ変わらせた。
なのに、この様だ。
あなた方には今度こそ幸せな時間を過ごしてもらいたい。
これは、神からの祝福だ。
