強情なお嬢様
次の日の朝、バルカンはまだ夜が明けないうちに食事の準備をしにバーベキュー場へ行った。
早朝の空気は肌寒い。
とりあえず火を焚いて暖かい物を腹に入れたかった。
コンロに炭を置き、持っていたマッチで点火しようとすると闇の中にサクラが浮かびあがり、バルカンは驚いて飛び上がった。
バルカン:「ウワッ!」
サクラは手にカップラーメンとはしを持って震えながら立っていた。
サクラ:「おはよう、バルカンさん。」
バルカン:「お嬢ちゃんか・・・ビックリした~驚かすなよ~。」
ホーと安心の息をついてバルカンは火を焚き始める。
サクラはハーハーと自分の手に息を吹きかけながら火にあたる。
バルカン:「なんでここにいるんだ?お嬢ちゃん。」
サクラ:「あ、バルカンさんとご飯一緒に食べようと思ったのでガードマンさんに同じ物貰ってきました。」
そういうとサクラはカップメンとお米と飯盒を取り出した。
バルカンはサクラを無視する様に自分の飯盒でご飯を焚く準備をする。
サクラも同じ様にご飯を焚く準備を始めるとバルカンはサクラを優しくさとした。
バルカン:「お嬢ちゃん・・・俺なんかと一緒にご飯食べるなんていけねぇ・・・俺は・・・」
サクラ:「聞きました。盗賊なんでしょ?」
バルカン:「そうだ。あんたのミッションに協力はするが寝食は別にしたほうがいい。」
サクラはバルカンの言う事を聞き流してカップメン用のお湯をやかんで沸かし始める。
バルカン:「よく聞いてくれお嬢ちゃん。あんたの為を思って言って・・・」
サクラ:「大丈夫!私そういうの気にしません。私はバルカンさんと一緒にお食事したいからそうしてるだけ。」
バルカンは深いため息をつくと自分のカップメンにお湯を注ぎ、サクラのカップメンにもお湯を注いだ。
サクラ:「ありがとうバルカンさん。」
バルカン:「ああ。メシ食ったらさっさと旅にでようか。」
サクラ:「うん!」
サクラはそう言うとテントを片付けはじめた。
バルカンはフッと笑いながらサクラと一緒にテントを片付けた。
その後二人は一緒に食事をし、サクラは旅の支度をする為に別荘へ戻った。
バルカンはバーベキュー場を片付けた後飯盒や食器をガードマンに返して玄関先の庭で皆を待った。
まず最初にレンが現れバルカンに挨拶をする。
レン:「おはよう」
バルカン:「おはよう」
二人の間に沈黙が流れる。
まず沈黙を破ったのはバルカンだった。
バルカン:「にいちゃん。あのお嬢ちゃんはいつも明るいがあれも強がりか?」
レン:「もしかしてアイツ・・・食事を一緒に?」
バルカン:「ああ、このクソ寒い中俺が火を起こすまで待ってたよ。」
レンは『またか・・・』という感じで手で目を覆った。
レン:「メシの時間にもいないから寝坊しているもんだと思ってたがアンタと一緒だったか・・・」
バルカン:「もうわかってると思うが俺は盗賊だ。お嬢ちゃんにもそう言ったが大人しく聞きそうにもない。」
レン:「わかった、俺からも言っておく。」
バルカン:「やめとけ。一見した所かなりの強情っぱりだ。自分の納得がいかない事があればテコでも動かない。時間の無駄だよ。」
レンは会ったばかりのバルカンにサクラの特徴を当てられて少し面白くなかった。
レン:「普段のアイツの明るさは天然ものだよ。バカ正直で真っすぐで羨ましい程プラス思考だ。」
バルカン:「そんなお嬢ちゃんににいちゃんも惚れてると・・・」
レン:「違うって言ってんだろ?いい加減張り倒すぞ。」
バルカン:「お~怖い怖い・・・」
怒りの表情のレンにバルカンは肩をすくめておどけた。
少しするとサクラとマーベストが集合場所に現れた。
マーベスト:「おはようバルカン君。」
バルカン:「おはよう。」
レン:「あれ?ケンは?」
サクラ:「ダメ・・・レン起こしてきて。」
レン:「あのボケ・・・」
レンは深いため息をついた後、ダッシュで別荘の中へ走って行った。
上の階でレンの怒鳴り声が聞こえる。
レン:「このボケ!いつまで寝てんだ!さっさと来い!」