お昼の休憩
サクラ一行は初陣を終えた後、森をさらに東へ進んでいた。
この森はゴブリン達の住処らしく、1㎞程進む度にゴブリンに遭遇した。
時々野生の熊や猪にも遭遇したが襲ってくることはなく、サクラ達も手を出さずにいた。
ちょうど昼を過ぎる頃には森を抜けてようやくモンスターの気配が消えて、サクラの気分も落ち着いてきた。
サクラ:「はあ・・・結構モンスターの気配って重たいのね。」
マーベスト:「モンスターは冒険者を敵視しているからね。元々この森は彼らのテリトリーであちらからすると我々が侵入者なんだ。敵意を持ったモンスターの気をまともに受けたら辛いだろうね。」
サクラ:「何か防ぐ方法はないの?」
マーベスト:「レンやケンのレベルだと自分の身体全体にオーラをまとってガードしている。オマエは冒険が初めてだから私が防御魔法をかけていたんだがそれでもきつかっただろうね。」
サクラ:「ええ、なんか胸の辺りが重かったわ。でもマーおにいさまが魔法をかけてもあれだけ苦しいなんて・・・」
マーベスト:「そうか・・・じゃあモンスターが現れそうな場所では私の側にいなさい。なるべくオマエもオーラで覆うようにするよ。」
サクラ:「なんか悔しいけどしょうがないわよね・・・」
マーベスト:「大丈夫。道中まず蘇生の魔法の修行をしなさい。それができればオーラの訓練をはじめよう。」
サクラ:「ホント?よーし、私頑張る!」
そう言うとサクラは両手で球を作り意識を集中し始める。
森を抜けて草原を少し歩くと小さな休憩所にたどり着いた。
木でできたテーブルと椅子が置いてあり、湧き水も流れている。
レンはそこで一旦食事休憩をすると一行に伝えた。
ケン:「うひゃ~冷てぇ!」
ケンは湧き水を自分の水筒に入れてゴクゴクと飲み干す。
サクラは荷物の中からバスケットを取り出し、昼食用のサンドイッチを取り出した。
サクラ:「ハイ、マーおにいさま。」
そう言うとサクラはマーベストにサンドイッチを手渡す。
マーベスト:「おや?いつの間に作ったんだい?」
サクラ:「昨日の夜よ。食材はガードマンさんに用意してもらったの。顔に似合わず優しい人ね。」
ケン:「あーいいな~」
サクラ:「ケンちゃんの分もあるわよ。はいどうぞ。」
ケン:「マジで?女の子の手作り料理食べるの初めてだぜ・・・」
ケンは感動して涙を流している。
サクラ:「ハイ!レンの分どうぞ。」
レン:「サンキュー。」
レンにサンドイッチの入った袋を渡した後、サクラはバルカンの方を見た。
そんな様子のサクラにマーベストが声をかける。
マーベスト:「彼の分を作ったのなら渡してきなさい。ただし食事は別々でとる。いいね。」
サクラ:「ウン!ありがとうおじさま。」
そう言うとサクラはサンドイッチの袋を持ってバルカンの所に駆け寄っていった。
サクラが近づくとバルカンは地面にあぐらをかいたまま黙って見つめた。
サクラはバルカンに袋を差し出した。
サクラ:「お昼用のサンドイッチ。食べてね。」
バルカン:「ああ、ありがたくいただくよ。」
バルカンはやや微笑んでサンドイッチを受け取った。
袋を渡した後サクラはすぐにマーベスト達の所へ戻っていく。
それでもバルカンが気になるのか途中で振り向いてバルカンの様子を伺う。
バルカンが笑いながら手でサクラを追い払う仕草をするとサクラも嬉しそうに笑って戻っていった。
バルカンとほんの少しだけコミュニケーションをとっただけでサクラはすっかり上機嫌になった。
鼻歌まじりでサンドイッチを食べ始めたサクラにケンがヒソヒソと耳打ちする。
ケン:「も・・・もしかしてサクラちゃんバルカンさんみたいな人がタイプ?」
サクラは頬を赤らめて乙女の表情になる。
サクラ:「そうね・・・ああいう大人っぽくて謎めいた所がある人ってカッコイイよね。」
ケン:「マジかよ~!大人の魅力に負けた~!」
サクラ:「ちょっとケンちゃん!声大きいよ!」
恋話に花を咲かせる二人を尻目にレンはマーベストとバルカンについて話をする。
レン:「マーにいちゃん。バルカンさん剣を使えるぜ。」
マーベスト:「ああ、見てたよ。ゴブリンを一刀両断したよね。見事な腕前だった。」
レン:「元剣士だろ?って聞いたらすっとぼけられたよ。」
マーベスト:「レンも気づいていたと思うがサクラのガードは完璧にこなしてたよ。」
レン:「認めたくないけどその通りだよ。アイツ一体何者だ?」
マーベストは離れて食事をしているバルカンを眺めている。
マーベスト:「恐らく名のある剣士だったのかも知れないな。盗賊は刑務所に入る時に名前をはく奪され、出所後に新しい名前に改名する。バルカンというのは出所後の名前なんだろう。」
レン:「有名な剣士が犯罪を犯したならギャザタウンの冒険者ギルドの新聞にものるはず。俺マメにチェックしてるけどそんな話聞いたことないよ。」
マーベスト:「私もそういう話を聞いたことがないよ。だからあまり関わりたくないのが本音なのだが・・・」
マーベストは何か考え込んでいる。
レン:「それでもアイツを連れていく理由は?」
マーベスト:「うーんうまく言えないんだが一言で言うと『勘』だ。」
レン:「『勘』?意外だな・・・マーにいちゃんはもっと論理的に動くと思ってた。」
マーベスト:「ハハハ、それはレンの思い込みだよ。むしろ私は重大な局面では自分の直観に従う事が多い。そして今回のサクラのミッションにバルカン君が関わる事も私の直観がそれを運命だと告げている。」
レン:「運命・・・」
マーベスト:「私の冒険者としての長年の直観だ。それを信じてやってくれ、レン。」
レン:「マーにいちゃんがそう言うなら俺はそれに従うよ。だけど・・・」
レンはそこで言葉を切りバルカンを見た。
レン:「俺はアイツが嫌いだ。」
『若いな・・・』そう思いつつマーベストはサンドイッチを食べる。




