サクラ一行の初陣
ギャザタウンを出てポートランドに向けて出発したサクラ一行は草原を東に向かって歩いていた。
ケンとレンが先頭に立ち、それにサクラとマーベストがついていく。
バルカンはサクラ一行からやや離れた位置を平行に歩いていた。
最初サクラは皆から離れているバルカンを気にしてチラチラと見ていた。
だが道中を進むにつれてそれにも慣れたのかマーベストと他愛のない話を始める。
サクラ:「マーおにいさまって今何歳なの?」
マーベスト:「私は34歳だよ。お前は今年17歳だったかな?」
サクラ:「そうよ。おにいさまは何歳で冒険に出たの?」
マーベスト:「私は14歳の時に初めて冒険に出たよ。最初はお前と同じく僧侶だった。」
サクラ:「へー14歳で冒険に出るってすごーい。うらやましいな~。」
マーベスト:「そうかい?私は冒険なんてせずに教会でゆっくりと過ごしたかったよ。」
サクラ:「そうね。私の知ってるマーおにいさまは冒険者っていうより、優雅に読書を楽しむインテリの美男子ってイメージ。」
マーベスト:「ハハハ、確かにモルツ村ではのんびり過ごしていたからね。」
サクラ:「あの時にはもう黒魔法も使えたの?」
マーベスト:「ああ、黒魔法は16の時に覚えた。あるミッションでどうしても必要な魔法があったんだ。」
サクラ:「私も黒魔法覚えてみたい。」
マーベスト:「やめておいたほうがいいよ。黒魔法に関わるという事は闇の世界に関わるという事。それよりも白魔法を極めるのが先だ。使える魔法は?」
サクラ:「ヒーリングと解毒と解呪・・・蘇生は難しくてまだ修行中・・・」
そう言うとサクラは両手で目の前に球形を作り歩きながら意識を集中させる。
両手で作った球形の部分が光輝いたと思ったがすぐに消える。
サクラは不満そうに両手をおろしてブツブツつぶやく。
サクラ:「なんかイマイチうまくいかないのよね・・・」
マーベストがハハハと笑いながらサクラの頭をなでる。
マーベスト:「大丈夫だよ。今の感じだとあと2、3日もすれば腕や足などの部分再生の魔法は使えるようになるよ。」
サクラ:「ホント!?」
マーベスト:「私の教えに従えばだがね。やってみるかい?」
サクラ:「うん!教えて教えて!」
サクラはそう言うとマーベストの服を引っ張る。
マーベスト:「じゃあまずは今の要領で蘇生魔法を歩きながら練習しなさい。荷物は持ってあげるよ。」
サクラ:「ありがとう!じゃあやってみる。」
嬉しそうにマーベストと魔法の修行をはじめたサクラをレンは振り向いて見ていた。
自然と微笑んでいるレンを見てケンがニヤニヤしている。
レンは顔を赤くして慌てて正面を向いた。
レン:「なんだよ?ニヤニヤして。」
ケン:「いや~今いい顔してたと思ってさ。」
レン:「そうか?気のせいだろ?」
ケン:「いやいや、あの目は愛の光線が出ていた。どうやらライバル出現だ!」
そう言ってケンが嬉しそうに笑うとレンは怒りの表情でケンにヘッドロックをかける。
ケン:「イテテテ・・・レン・・・まいった・・・悪かった・・・」
ケンはレンの腕をタップして降参する。
レンは構わずにさらに強くケンの頭を締め付けた。
レン:「寝坊した上に下らない事いった罰だ。死ね!」
ケン:「No~!」
ようやくレンがケンを解放するとケンは涙目になっていた。
ふとバルカンに目をやると相変わらずレン達から距離を置いて平行に歩いている。
だがレンは気づいた。
サクラの右隣りをマーベストが歩いていて、バルカンはサクラの左後ろを歩いている。
誰に指示されたわけでもなくサクラを警護する位置にバルカンがいた。
『コイツ・・・盗賊やる前は何をしてたんだ?』
レンはバルカンの元の職業が気になった。
バルカンはレンの視線に気づき、レンに向かって手で追い払うしぐさをした。
子供扱いされた気分になりレンは険しい顔でまた正面を向いた。
『ハイハイ、余計な事は考えるなってか?』
ケン:「どうした?険しい顔して。」
レン:「いちいち俺の顔色伺ってんじゃねぇよ・・・あのオッサンが以前何の職業をしてたのかちょっと気になったんだよ。」
ケン:「オッサン?バルカンさんか~何だろうねぇ?」
レン:「まああそこの森に入るとモンスターが出てくるだろうからお手並み拝見ってとこかな?」
そうしているうちにサクラ一行は森の中に入っていった。
明らかに草原とは違う空気に変わる。
マーベスト:「サクラ、森の中にはモンスターがうようよしている。修行は一時中止して備えなさい。」
サクラ:「うん、なんか気配を感じる。」
初めてのバトルを思ってサクラの顔が緊張する。
ふとした瞬間にレンがモンスターに気づく。
レン:「みんな右前方にゴブリンの小隊がいる。気をつけろ。」
ケン:「マジ?あ、ホントだ。あんな遠くにいる。レンすげぇな。」
レン:「気づかれないように始末してくる。皆はサクラを守っててくれ。」
そう言うとレンはゴブリン達に近付いて行った。
レンはゴブリンの4匹の背後に回り込みさらに近づく。
そして一匹、二匹とゴブリンを切りつけ一人でゴブリン達を殲滅してしまった。
サクラは初めて見たバトルがあまりにもあっけないのでやや拍子抜けの表情をしている。
レンがゆっくりとサクラ達の所に戻ってくるとサクラは腕組みをしてレンにダメ出しをする。
サクラ:「レン!もうちょっと近くで闘いを見たいわ!独り占めなんてずるい!」
レン:「オマエはアホか!近くで闘うって事はオマエの身が危なくなるって事だろが!」
言い争いをするサクラとレン。
サクラ:「だいたいレンは・・・」
レン:「敵だ・・・集中しろ。」
サクラが何かを言いかけたのをレンが遮る。
左前方を見るとゴブリンの本隊が近づいてくる。
ケン:「1、2、3・・・おお?結構多いな。」
レン:「10数匹か・・・まあ楽勝だろ?」
マーベスト:「一応防御魔法をかけておこう。」
マーベストは呪文を唱え、鎧の防御魔法を全員にかけた。
全員の体を光の鎧が覆う。
サクラ:「すごい・・・」
驚いているサクラをよそにケンとレンは軽く体をほぐしている。
ケン:「俺10匹はいけるぜ。」
レン:「アホ!競争じゃなくて協力して倒すんだよ。」
ケン:「はいはい、じゃあいきまっか。」
そう言うとケンがまずゴブリン達に突っ込む。
レンが後に続くとゴブリン達は二人を指さして何やら叫んでいる。
ケンは先頭のゴブリンに拳を放つと思いっきり殴り飛ばした。
吹っ飛ばされたゴブリンは頭蓋骨を砕かれ、他のゴブリン達にぶつかる。
倒れたゴブリン達にレンが容赦なく剣で切りつける。
レンは一太刀で二匹のゴブリンを斬りつけ絶命させる。
慌てふためくゴブリン達を次々と殴り、蹴りつけるケン。
レンもケンと背中合わせでゴブリン達に攻撃していく。
そして2分もかからないうちにゴブリン十数匹の殲滅が終り、死亡したゴブリン達が消滅していく。
そして赤い玉が宙に現れると、遥か空の彼方に飛んでいく。
モンスターの魂が還っていく瞬間をサクラは初めて間近で見た。
サクラ:「マーおにいさま、今の赤い玉はなんなの?」
マーベスト:「あれは死んだゴブリン達の魂だよ。モンスター達はコアと呼ばれる魂を持っていて絶命すると肉体は消滅するがコアはある所へ還っていく。」
サクラ:「ある所って?」
マーベスト:「インフェルノというモンスターのコアの集合体だ。全てのモンスターはそこから生まれるらしいんだが詳しい場所は特定されていないんだ。」
サクラ:「ひょっとしたらそれを消滅させることができたらモンスターは出てこなくなるんじゃない?」
マーベスト:「確かにそうすることができればモンスターのいない世界になるかもしれない。だがインフェルノが存在するかどうかもわからないのだよ。」
サクラ:「フーン。じゃあ・・・」
サクラがマーベストを質問攻めしている間にバルカンは剣が落ちているのを見つけて拾った。
バルカン:「ゴブリン退治のお宝ゲットか・・・」
バルカンが剣を値踏みしていると隠れていたゴブリンが一匹背後から襲い掛かった。
バルカンは素早く振り向き持っていた剣でゴブリンを斬りつける。
胴体が真っ二つになりゴブリンは絶命し、またコアが空に向かって飛んで行った。
フウとバルカンは一息つくとレンと目があった。
バルカンはレンから視線をそらすと剣を布で覆い紐をつけて肩にかける。
街の道具屋で売ればいくらかのお金になる。
他にもお宝がないか探しているとレンが声をかけてきた。
レン:「アンタ剣を使えるのか?」
バルカン:「見てた?いやいやたまたま振り回したら当たっただけさ。」
レン:「俺も剣士だ。さっきの攻撃がたまたまかどうかははっきりわかるぞ。」
レンに詰め寄られてもバルカンは涼しい顔でとぼける。
バルカン:「ならわかるだろ?マグレだよマグレ。」
レン:「とぼけるなよ。アンタ前は剣士だったんだろ?」
バルカン:「さあな・・・昔の事は忘れちまったよ。」
そう言うとバルカンは口笛をふきながらサクラ達の所へ戻って行った。




