17話 SSクラスからCクラスへ
勝負の結果は負けた、圧倒的だった、私は痛さを通り越して、何も感じなかったが、左手はなく、血がドバドバと出ている。
横に倒れているところに、サキュパスが降りてくる。
「ふーん、まあ、勝負は一瞬だったけど、なかなかやるじゃない」
私にとって侮辱に聞こえて、再び立ち上がろうとしても力が入らない。
「あらら、動いちゃうと死んじゃうよ? 殺してあげてもいいんだけどね、今までの人たちより、断然楽しめたし、自由のみになった際、もう一度戦いたいなーって」
意識が朦朧としている、話を聞いているだけで、頭に入ってこない。
すると、私の額に長い爪を立てる。
「決めた! 自由の身になった時、また会いましょう」
その後の記憶はない、気づいたら、処置室のベッドに横になっていて、ウィデアが横で寝ていた。
---
ウィデアは私の秘密をここまでしか知らない、彼が友達だとしても、言う気はない、言ってしまうと友達として受け入れてくれるかもわからない。
頭の中で過去の記憶がよぎる、ぼーっとしている私を見て、心配する。
「おい、本当に大丈夫か? 俺はウルクの親友だぞ?」
親友だからこそ、言うべきではないと私は思っている、だからなんとしても巻き込むわけにはいかない、もちろん生徒もだ。
「ああ、少し過去のことが頭によぎってだな」
そのことには触れず、コーヒーを口にする。
---
「た、た、たた退学ですか!」
すごい目が泳いでいる、私がヴイちゃんの目の前で手を振っても気づかないくらいに。
「そんなに驚くことか?」
よく、考えればそうだ、Cクラスというのは一番危ういところだ、もしそこでも無理なら退学しかない。
「フェリックスさん、ちなみに退学になる生徒って?」
「俺の時は一年で十一人、二年ではゼロだ」
一年の時はCクラスの時だろう、クラスの半分が退学になるということだ。
私の服を引っ張りながら話す。
「どうしよ、イオリ! 私、無理かも!」
上下に揺らされる、それを見て彼は驚いている。
「おいおい、大丈夫か? だが心配しなくていいと思うぞ、担任から信頼されてるんだろ?」
信頼といえばとても難しい、私は担任のことを信頼してても、担任が私のことをどう思っているか。
「私は信頼してるけど、先生は?」
迷わず、先輩らしいことを言う。
「なら心配する必要はない、生徒が担任を信頼していれば、担任も気づく、担任からすれば、信頼がないのが一番怖いんだぜ?」
珍しい、本当に珍しい、短時間だが、先輩らしいことを初めて言ってくれた。
イオリが時計を見ると、焦った様子だ。
「やばい! ヴイちゃん、行くよ!」
時刻は8時15分だった、30分までに登校すればいいが、5分前に登校するのが常識、と言うのがイオリの考えだ。
私はバッグを持ちイオリを追いかける、部屋を出る際、先輩に一礼をして、出る。
「忙しい奴らだな」
---
「イオリ、待って!」
坂道を猛ダッシュで走る、私はすぐにバテてしまい、歩く、がイオリは最後まで走りきった。
「いい訓練だ!」
その言葉を聞いて、やる気が出た。
「よし! 私も行くよ!」
---
「はあ、はあ、無理だって、イオリすごいよ」
私はそれから三回も休憩した、息を整えるのを待たずに門に向かった。
「もう待ってよ!」
---
二人は登校したが俺はどうするか、というかよくよく考えると、これだめじゃね?
女子生徒の部屋に男子生徒が入ってるだなんて、しかもここの住人は今いない。
「なんか、色々とやばいな」
二人は出て行ったはずだが、扉が開く音が聞こえた。
「誰だ?」
聞こえてきたのは、あの声だ、聞くだけで、憎悪が溢れる。
感情を抑えて、振り返る。
「やあ、生きてたんだね、フェリックス」
歯を食いしばる、こいつのせいで何もかもがめちゃくちゃになった。
「おい、学園長さん、どういうつもりだ?」
わざとらしく首をかしげる。
「なんのことかな? それよりも君も登校しないと遅刻しちゃうよ?」
本当にクズだ、あいつらのことさえ、いなかったことになってやがる。
「今のSSクラスはどうなってるんだ?」
こちらに近づいてくる、後ろに下がるが、足を踏まれ、躓いてしまう。
「くっ! 答えろよ!」
学園長が人だと思えないような表情で話す。
「答えたって、君は忘れてしまうんだから、答える必要なんてないだろう?」
そういって俺の頭をポンポンと叩く。
「君も早く登校しなさい、Cクラスにね」
俺はSSクラスなはずなのになぜCクラスに行かなければならないんだ。
「なんでだよ! 俺は三年のSSクラスだ!」
帰ろうとしている学園長が振り返った。
「それは本当かな? 一年のCクラスではなかったかい?」
部屋を出た、俺は感情を押さられない。
(あいつ、あいつ、あいつ、あいつ、あい、つ? あいつって誰のことだ?)
「なんで、俺忘れてたんだ? 一年Cクラス、みんなが待っているんだ、イオリとヴイ、クラスのことも仲良くなれた、 なのに何故俺は、登校しようとしなかったんだ!」