16話 サキュバス
学園長が何を企んでいるか、わからない、だが一つわかることがある、生徒のことを「道具」だと思っていることだ。
だが、今回は生徒は関係ない、私自身の話だ。
「どうかね?」
もう私には興味がない。
「すみません、乗れませんね、私自身の問題です、生徒を巻き込むなんてできません」
そうかと頭を抱えるが学園長も諦めない。
「はあ、では、こうしよう、反魔法軍の件で上手に立ち回るとSランクにあげよう、それならどうだ?」
私はこの学園の卒業生だ、卒業してからは、今は詳しくはいえないが、しっかりとした生活はしていない。
卒業までの目標「Sランクに昇格することだ」
だが、それは叶わなかった、一度は諦めたが、気合を入れ直し、再び頑張ったが、卒業するまで上がることは出来なかった、相当メンタルをやられてしまったのだ。
そんな甘い言葉で誘ってくる学園長はなんとも腹黒い。
断ろうと口を割ろうとしたが、言葉にできない、なぜなら今でも私の目標でもあり、彼女たちも上のクラスに上がることを目指しているからだ。
「どうだい?」
そのでは返事をせず、その部屋を出ようとする。
「また、あとで返事はお返しします」
「いい返事を待っている」
私は部屋を出て、自分の教室に入る。
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「どんな話だったんだ?」
ウィリデがコーヒーを飲んでくつろいでいる。
「いや、なんでもない」
「そうか、お前もコーヒー飲むか?」
「ああ、」
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「ウルク先生、最初は変だなって思ったけど昨日の出来事で、すごい先生だと気付いちゃった」
イオリは下手なウインクをして、こちらを見る。
私もそう思っている、あの出来事がなかったらウルク先生のこと好きになれなかった。
「そうなのか、それは良かったな」
ウルク先生について何かを考えてる様子だ。
時刻は7時40分になる。
「そろそろ、行くー?」
イオリはカバンを持ち準備する。
「早くないかな?」
行くには少し早い気がする、歩いてすぐでつくから、今から行っても門が閉まっているはずだ。
「お前らCランクなのか」
私たちのバッチに気づいた、すると懐かしそうに話す。
「実を言うと、俺、元Cクラスだったんだぜ?」
私とイオリはその言葉に興味を持つ。
「ほんとですか!」
「メモ......どうやって上がったのですか?」
今までにない迫力で質問してくる、上のクラスに上がりたいと言う気持ちが伝わってくる。
「そんな、熱くなるなよ、俺は最初の試験で失敗したんだ」
入学してきてから行われる試験のことだ。
「俺の時は、「氷球」でランクが分けられたんだ」
私たちは火球だったが、彼の時は氷球だったらしい。
「私たちとは違うんですね」
「ああ、毎年試験が変わるらしい」
何か思いついたのか話が切り替わった。
「あっ、そうだ、お前ら知ってるかわからんが、学期毎に試験があるんだぜ?」
私はなんとも思わなかったがヴイちゃんが。
「え、そう、なんです、か?」
彼もなんでそんなに驚いているんだという顔をしている。
「おう、それよりどうした?」
私はすぐにカバーに入る。
「ちょっと色々あったんですよ、それより、話の続きを!」
そうかと頷き、話を続ける。
「クラス上がれるって知ってるだろ? その逆もあるんだ」
少し可能性が見えた気がした、だがその可能性は一言で消えてしまう。
「でも勘違いすんなよ? 上から落ちてきたやつと入れ替わりなんてないからな? お前たちだって下に落ちることだってあるんだぞ?」
それは初耳だった。
「それって?」
少し間を開け、恐怖感を与えて言う。
「退学だ」
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「俺にさえ話してくれないのか?」
コーヒを一気飲みする。
「何がだ?」
じっくりと目を伺っている、ウィデアは隠してると分かってるが、お前を巻き込むわけにはいかない。
「お前、隠し事してると、すぐわかるんだぜ?」
なくなったコップにコーヒーを入れる。
「そうか、だが今回はお前には言えない」
先ほどの話を聞いていたかのような口ぶりだった。
「反魔法軍、だな?」
コーヒーで誤魔化すが、バレている。
「やっぱり、甘い言葉で釣られたのか?」
コップを置いて否定する。
「いや、断ってもない」
それに安心した様子だった。
「そうか、ならいいんだが、どうするつもりだ? 相手はお前のことをしっている、奇襲かけることも難しいぞ」
私にはもう一つの過去がある、そのことはウィデアはしってるが、それは上部だ、本当の過去は別にある。
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私が二年の時、今の学園長に呼ばれ、そこには数人の生徒がいる。
「じゃあ、君たち頼んだよ?」
その後の記憶はない、気づいたら、あたりが紫で覆われているところについていたからだ。
「ここ?」
「ここどこ?」
それぞれが話し、どこかわからないところにいきなり連れていかれて状況がつかめない。
するとどこからか、高笑いが聞こえた。
女性だ。
「あっはは、あいつ、こんな弱そうなやつらをここに連れてきたのか、残念」
彼女の容姿は一言で言うと「サキュバス」だ。 するどい、歯を見せびらかして話す。
「それより、哀れだよね、君たち、可愛そうで可哀想で、殺したくなりそう!」
その瞬間、突風がこちらに向かってきた。
「ぐっ!」
動くことができない、風の音で声はかき消されていたが、悲鳴が聞こえた。
「きゃあ!」
突風が鎮まると、サキュバスが私の隣にいた女性生徒を抱いている、よく見ると、首元に血が。
「あー、やっぱり、つまんないや」
その姿を見るや、その場から逃げようとする生徒たち、私は恐怖でそこから動くことはできなかった。
すると笑顔に変わり恐怖じみた声で言う。
「そう、それよ! 殺しがいあるわね!」
逃げ回っている生徒を一人づつ殺していく、そのあいだ、悲鳴も聞こえていだが、私は何も出来ず、うろたえていた。
(なんだよ、これ)
「いたい、いたい、しぬ!」
「そこで座ってるんじゃねえよ! ぐわあ!」
しばらく悲鳴が聞こえたが突然パッと鳴り止む、私以外殺し終えたのだ、するとこちらに近づいてきて、顎をあげる。
「君は、殺しがいないわね、つまらないから、帰りなさい、」
サキュバスは私を殺さず、どこかに行く、私はこれじゃ学園に戻れないと思い、立ち向かうことにする。
「き、さま」
体全体の震えが止まらない。
「貴様!」
その声は聞こえたのか、こちらに近づいてきた。
「なに? 早く帰りたいんだけど?」
ゆっくり話す。
「ここはどこなんだ」
今となって聞くことがそれかとお腹を抱えてわらう。
「あはは、面白くない質問だけど教えてあげる、ここは反魔法軍の基地だよ! 相手にバレていなかったら、今ごろ君を殺しているところだけど、一般常識みたいなものだからね」
そして再び、背中を見せて帰ろうとする、その姿を見て、私は、サキュバスめがけて、磨き上げた「氷球」魔法レベルS を発動する。
「いっけ!」
サキュバスに直撃する、一度やった! と思ったがそう簡単にはいかない。
振り返り、顔色が変わる。
「君、せっかく生きて返そうと思ったけど、やめたわ、君、意外と面白いわね!」
サキュバスと一対一が始まる。