13話 学園長
(SSランクの生徒? でもなんでこんな時間に歩いているんだろう?)
私は部屋から出ようとする、窓を見つめていたイオリが、気づく。
「どこいくの?」
私は振り返り、お願いのポーズをして言う。
「ちょっとね」
イオリは窓のカーテンを閉めて、携帯を持ち扉に近づいてくる。
「私もいくよ! ヴイちゃん一人でなんか危ないし!」
私たちはこっそり寮を出て、外にいる生徒の様子を見にいくことにする。
音が鳴らないよう、ゆっくりと扉を押す。
だれかいないか確認する。
「いない?」
私はイオリに目配せをし、音を立てず、玄関に向かう。
その間、イオリとの会話は小声だ。
「いなさそうだね」
「だね、音を立てず、ゆっくり行こう!」
ゆっくりゆっくり、音を立てないように玄関までつく。
玄関はガラス張りになっていて、外が見える。
「いないね」
「まだこっちには来てなさそうだね」
私は玄関に足を踏む込み、扉に手をかける。
「いくよ」
その合図とともに、扉を押して、外に出る。
あたりが真っ暗で何も見えない、周りに光ってるのはこの寮ともう少し奥に見える街だけだ。
「ヴイちゃん怖いね」
あたりが暗いことで恐怖心が増す。
「大丈夫、たぶん」
寮の後ろに回り、生徒がいたところを見る。
「いる?」
キョロキョロと生徒を探すが、姿は見えない。
「うーん、もう少し探してみよ」
ずっと聞こえていなかった声が再び聞こえた。
(こっちだ、右だ)
イオリとシンクロして右を見る、暗いところをよく見ると、誰かが倒れているのがわかる。
私たちは急いで駆け寄る。
「大丈夫?」
「大丈夫ですか?」
反応はない、相当、体力が削れているようだ。
「......ここは?」
その言葉と同時に気を失った。
「え、どうする? ヴイちゃん、先生に?」
私は何も言わず、彼を抱えて、寮に向かう。
その様子を見て、イオリも手伝ってくれた。
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二人で支えるのも精一杯だったが、ゆっくりゆっくり、寮の中に入り、自分たちの部屋へ連れて行く。
「よいしょ!」
私のベッドに寝かせる、よく考えると、女性の部屋に男性を入れるなんて......そんなこと今考えている暇はない。
これからどうするか考えるべきだ。
「ヴイちゃん、どうする?」
「なにが?」
彼が寝ているベッドを見つめる。
「うーん、イオリと寝ればいいしね!」
「そうだね! でも朝になったら、警備の人来ると思うし」
そこまで考えていなかった、恐らく隠しカメラもあるはずだ、もし隠したとしてもビデオでバレてしまう。
私は精一杯考えるが、何も思いつかない。
「どうしよ......」
するとイオリは少し横にずれてベッドに横になる。
「とりあえず、明日は早く起きて、なんとかしよ! 明日になれば彼も起きるだろうし」
彼が疲れ切って寝ているのを無理やり起こして、話を聞くことなんて、できない。
そうとなると、早く起きて、考えるのが吉だと思った。
「そ、そうだね」
イオリが起き上がり、部屋の電気を消す。
「明日、4時起きと言うことで、おやすみ、ヴイちゃん」
「おやすみ!」
午後21時就寝
その後、イオリとは話がなく、時間が経つに連れ、イオリはいびきをかきはじめる。
私は彼のことを考える。
(どうして、あんなところにいたんだろ? 服もビリビリで、身体中傷だらけ、なんでだろう? 更に服に血が付いているし)
考えているとどんどん意識が遠くなり、その後の記憶はない。
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誰かに身体を揺らされている気がする。
「ヴイちゃん」
声も聞こえる。
「おい、起きろ」
聞き覚えのない、人の声も聞こえる。
「ヴイちゃん、時間だよ!」
その呼びかけにやっと、体を起こし、目をこすりながら話す。
「んん、彼は?」
寝ぼけていて、受け答えがしっかりできない。
私はイオリに頰をつねられて、目が覚めた。
お腹を抱えて笑うイオリ。
「あははは、ヴイちゃん、朝弱いね、もう四時十分だよ!」
私は顔を洗いに行くために、部屋の隅にある洗面台に行く、その時、二人の声が聞こえる。
「本当に、ありがとう、助かった」
「いいよいいよ、でもどうしてあんなところにいたの?」
彼は記憶がないのか、頭上にクエッションマークが出てくる。
「覚えてないのね、じゃあ、なんで体や服がボロボロなの?」
その言葉で思いついたのか、身体中を見渡し、なにかを探しはじめる。
「ルブル、アリナ、どこだ、どこにいるんだ!」
そういって周りを一周眺める、我に返ったのか、平常心になる。
「そうか、俺はあいつらを見捨てて、ここにいるんだ」
「えっと、見捨てて? では、もともとどこにいたんですか?」
今までの記憶を辿り話をする、私は顔を洗い終わり、話に混じる。
「俺たち二十人は嘘によって駆り出されたんだ」
何を言っているのか意味がわからなかった。
「嘘? 駆り出されたとは誰にですか?」
私がそう聞くと、予想外の返事が返ってきて、絶句してしまう。
「学園長にだ」