同行者!
『さあ、行きましょう!』
朝、チェックアウトを済ませ、外に出るとリリィは元気に飛び回った
…昨日も感じたが、ここの気温は春のように心地よく過ごしやすい
私は一度伸びをし、今日するべき事を考えた
情報収集と買い物…後はもし余裕があれば店員さん…シアさんだっけ?あの人にも会えたらいいな
ひとまず私は手元の袋の中身を見る。残り残金5780円(仮)で考えると贅沢は出来ない
私は袋の口を閉め、ポケットにしまい、先行するリリィの後を追った
私は昨日のように人の多いところからお店を見ていく事にした…が、朝だからか昨日ほど人は多くなく、店や街が見やすかった
目的の物がありそうな店を見つけ、私は入ると、優しそうな目をしたおじさんが「いらっしゃい」と挨拶してくれた
「すみません、紙とペンが欲しいのですがありますか?」
私は言うと、おじさんは右を指差し「そっちにあるよ」と教えてくれた
見てみると羽ペンとインク、万年筆やノートがあった
他にも色々あったが私の求めているもの以外は見ないようにした
…お金には限りあるもんね
私は羽ペンとインクとノートを購入しお店を出ると早速ベンチに腰をかけ、ノートに今いたお店と見えている道を書いた。
『何書いてるの?』
リリィが話かけてきたので「地図だよ」と教えるとリリィは『ちず…?』と疑問を抱いていた
「歩いた道とかあったお店を書き込むの。迷わないように」
説明をするとリリィは納得した様子で私の書き込んだ地図をまじまじと見ていた
私は次に情報収集をすることにした
…そういえば昨日行ったお店、喫茶店なのだから情報収集にはうってつけなのでは?
昨日はリリィと話すのが目的で情報収集なんて考えもしなかったが、今日なら色々聞ける気がした
シアさんは確か13時からお仕事のはずだから…
私は時計を探すが見当たらない。…時計を見かけたら書き込んでおこう
仕方ないので私はしばらく歩き回り、メッセンジャーバッグのような鞄を購入し、時計を見つけ、場所をノートに書き込んだ
現在時刻は大体12時半…そろそろ向かおうかな
私は喫茶店に向かった…が
「えっと…確かこっち…あれ?」
はい、道に迷いました…
『地図役に立ってないじゃない!』
リリィは肩に座り、文句を言っている。…昨日の道は書けないよ…
昨日の記憶は薄暗さと夕焼けで周りの景色が違い、頼りにならないのでとりあえず行き当たりばったりで地図を書きながら私は歩いた
「ねえ、もしかして迷子?」
突然声がして後ろを振り向く。…?誰もいない…
「リリィ何か言った?」
リリィに尋ねると『私じゃないわよ?』と言い、上に飛んだ
…ああ、成る程
私は見上げると手を振っている女の子がいた。…ほうきに乗って
リリィは女の子の周りを一周すると私の元に戻ってくるなり、『あれは魔法使いよ。見習いだけどね』と耳打ちした
(…魔法使い?)私は女の子をじっと見てみる。…確かに見た目で言えばよく見る魔法使いそのままの格好にほうきで浮いている…
と、急に女の子が動きだし、目の前に降りてきた
足を地につけると魔法使いさんは私の顔を覗きこんだ
「んー…一般人よね?」
…初対面で一般人…。まあその通りなんだろうけど
「あ、ごめんなさい。少し異常な魔力を感知したから同業者か何かと思って様子を見にきたのだけど、違うみたいね」
「あの、リリィも言っていたんですけど…私の魔力?っていうのはおかしいんですか?」
「そうねぇ、魔力の高さもだけど何より異質…って感じかしら?言葉にするのが難しい不思議な感じ」
不思議…。理由があるとしたら私が別世界の住人だからだろうか?
私が考えこんでいると、魔法使いさんは「ふふっ」と笑った
「私、貴女に興味わいてきちゃった。ね、少し一緒にいてもいいかしら?」
そう言い、魔法使いさんが私の手を取ると、リリィが私と魔法使いさんの間に割って入ってきた
『だめよ!素性も知らないのに同行なんて許されないわ!』
「私、この街については詳しいのよ?一緒にいて損はないはずだけど」
魔法使いさんの余裕の表情に対してリリィは悔しげな表情をしていた。…私達、迷子だもんね
「決まりね!…あ、私、魔法使いをやってるシャルロッテよ。シャルとでも呼んでね」
「あ、私は茉里…マリーです!えと、看護師をしてました」
「じゃあ今は?」
うっ…。シャルさんの鋭い質問が痛い…。けど私は正直に何もしていないと答えるしかなかった
「ならお仕事探しましょ!酒場に行くわよ」
そう言うとシャルさんは回れ右をし、歩き始めた
…お仕事ってなんだろう?大きな不安と少しの期待を胸に私はシャルさんについて行った