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それは夢のような

辺りがオレンジ色に染まりつつある夕暮れ、私達は街の門の前に到着した

「そこの少女、止まれ」

門の横に立っている鎧の様なものをまとった人が声をかけてきたので私は言われた通りに立ち止まった

鎧の人は近寄り靴の爪先から頭てっぺんまで見回した

…そういえば私って今どんな格好しているんだろう…?はっ!もしかしたら髪ぼさぼさかも!

私は焦って手櫛で髪をすくと、リリィが笑っていた

…もう、リリィも先に言ってよ…。私は手櫛を続けつつリリィをじーっと睨んだ

…でも、リリィとこうしてまだ一緒にいられて、リリィも笑っていてくれる。そう考えると私は自然と笑顔を浮かべていた

「あーごほん!…君は精霊を連れているようだな。本来であれば詳しい話を聞かねばならないがそろそろ日も暮れる。街へ危害を加えるとも思えぬし、通行を許可しよう」

そう言い、左手に持った鐘をカランカラーン、カランカラーン、と鳴らすと、門が開き始めた

私は開いた門をくぐり、遂に初めての街へ到達しました


地面はアスファルトではなく煉瓦が敷き詰められ、建物も煉瓦の家が多く、まるで外国の様な街並みだった。…ていうか、多分外国だよね…

とりあえず、リリィと落ち着いて話をしたかった私は休めるところを探す事にした

ひとまず、人の多いところから探すと、レストランの様な所は結構見つかった。が、所持金がどのくらいなのかイマイチ把握出来ていない今、レストランは少し不安だった

私はこの通りを諦め、静かな道を歩くと、小さな喫茶店の様なお店を見つけた

…紅茶の1杯くらいは飲めるよね…?私はポケットに入った袋を握りしめ、喫茶店に入った


カランカラン、と音が鳴ると店員さんが綺麗な黒髪をなびかせ、振り向いた

「いらっしゃいませ、2名様でよろしいでしょうか?」

「え?あ、はいそうです!」

リリィも一応人数に入るんだ…。そんな事を考えていると店員さんがカウンターから出てきた

「こちらのお席にお掛け下さい」

店員さんが微笑みながら言う。私はそれに従い、着席するとリリィもテーブルの上に座った

店員さんは普通のコップと小さなコップに水を入れ、メニューと共にテーブルに置いた

「お決まりになりましたらお呼び下さい」

微笑み、軽くお辞儀をするとカウンターへ戻っていった

…綺麗な人。仕草も身なりも完璧でなんだか見とれてしまった

「あ、お金の価値とかわかんないや…うーん、聞いてみてから頼まないと」

『私果物の飲み物が良いわ!』

私は店員さんに向かい小さく手を振ると店員さんがこちらにやってきた

「お決まりでしょうか?」

「あ、いえ、少しお尋ねしたいのですが、この硬貨で飲み物は頼めますか?」

私は袋を取り出し広げ、店員さんに見せると袋店員さんは袋の中身を確認した

「はい、大丈夫ですよ」と店員さんは微笑み、言った

…ひとまず無銭飲食になることはなさそうで私はほっと胸を撫で下ろした

「あ、それではえっと…紅茶をひとつと果物のジュースをひとつお願いしても良いですか?」

「はい、かしこまりました。少々お待ち下さいね」

店員さんは注文を受けるとまたお辞儀をし、カウンターへと戻っていった


「ねえ、リリィ?色々説明聞いてもいいかな?」

『そうね。魔獣の事なんかはもっと早く教えるべきだったわ』

リリィは珍しくうつむきがちに答えた

『魔獣の生まれる仕組みはよくわからないけど、とにかく危ない敵って認識だけは持った方が良いわ』

私は魔獣に会った時の事を思い出す。速い足、力強い攻撃…そして無差別の殺意

私は身震いした。そんなのを相手にしてよく生きていたと思う

『で、魔法については…マリーには扱うのが難しいんだと思うわ。残念だけどね』

…ライター程度の火とこのコップに入ってるような小さな氷…日常生活では便利でも戦いにおいては傷を負わせる事も出来ないと思う…でも

「練習とかじゃ、どうにかならないかな?」

私はリリィに尋ねると、リリィは申し訳なさそうに首を降った

『多分マリーの心が壊れない限り強力な魔法は使えないわ』

心が壊れる…?

「それってどういう…」

『マリーの心は優しすぎるの。多分相手を倒そうと思っても無意識が傷をつけてはいけないと勝手に制御してるんじゃないかしら』

リリィがコップの水を一口飲み、ふう、と一息ついた

『私達には多少魔力を感じる力があるの。今日この街ですれ違った人の誰よりマリーには魔力を感じるわ。だからこそ、力の制御が原因だと思うのだけれど…』

…つまり私の心にはブレーキが付いていて、相手に危害を加えようとすると勝手にブレーキがかかってしまう、という事だろうか

心が壊れるというのは多分ブレーキが壊れると解釈して良いのだろう

要するに…

「私はあまちゃんの役立たず、なんだね…」

苦笑しながら肩をすくめると、店員さんがやってきた


「お待たせいたしました。こちら紅茶とベリーのジュースになります」

店員さんが微笑みを崩す事なく凛とした口調と動きで飲み物を置くと、お辞儀をしカウンターへ戻っていった。…かっこいいなぁ


『いただきまーす!』

ジュースが来て嬉しかったのか、目を輝かせてリリィはコップに口をつけた。かわいい

ひとまず真面目な話は置いておいて私も紅茶を楽しむことにした

…香りがリラックスさせてくれる気がした。脳がスッとする、そんな感覚

私は紅茶を一口すすると、なんだか体の憑き物が落ちる様な感覚がし、ふと眠気が私を襲った

私はカップを落とさないように気をつけ、テーブルに置き…


……?なんだか寝心地が悪い…

薄目で目の前の腕を見てみるとスーツの袖が見えた。…どうやら着替えもせず居眠りしていたらしい

続いて時間を確認すると短針は1時を指していた。帰宅後から…大体30分くらい経っていたようだ

私は身体を起こし、スーツから寝間着に着替える事にした


…それにしてもなんだか色々とおかしな夢を見ていた気がする

私は寝間着に着替えながら不思議な夢について考えていた

…もう一度寝たらあの夢の続きを見られるかな?


寝間着に着替え終えると、目覚ましのセットをし、ベッドに潜りこみ、私は布団を被った


…結局、その夜は夢の続きを見る事なく朝を迎えたのでした

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