初戦闘!!
「ねえリリィ、本当に南東で合ってるの?」
森を抜け再び草原を歩き続け1時間は経ったと思うが、街どころか家一軒も見えなかった
『マリーが道を外れて歩いてたからよ!』
肩で座るリリィが怒鳴る。といっても怖さの欠片もないけど
…しかし、確かにもしかしたら『南東』が間違いで指を差した方向か合ってる可能性もある。あの女神様の事だし
そもそも木の生えている方角が間違いだったのかもしれないし…というかこの世界の東西南北が日本基準じゃないかも?…考えると頭が痛くなってきた…
私はその場で腰を下ろした。…気持ちの良い日射し、風、香り…
まぶたを閉じると、一瞬意識が飛びかけた
このまま一度寝ようかな…
そう思ったその時リリィが後ろ後ろ!と大声を出した
私は眠たい瞼を開け、後ろを見てみる。…なに、あれ?
目を擦りもう一度凝視してみる…「え…」
思わず声が出てしまっていた。数十メートル先からかなり大きい
生き物が走ってきた
「り、リリィ…あれは…?」
私は震えた声で尋ねるとリリィは『話は後!逃げるわよ!』と催促した
私はひとまず立ち上がり全速力で逃げた…が、明らかに向こうの方が速く、距離は縮む一方だった
「はあっ…はあっ…ダメ、追いつかれちゃうよ…」
『マリー、魔法は使える?』
「ま、魔法って?」
『ああ、説明してる時間がないわ!炎とか氷とかイメージして相手にぶつけるの!どう?出来そう?』
炎とか氷とか…。私は走りながら炎をイメージしてみる
…すると手のひらからライター程の火が現れた
「これが…魔法…!」
『こんなの使い物にならないわ!…良い、私が時間稼ぎするからその間に出来る限り逃げて!』
そう言い残しリリィはUターンをした
「あ、待って!私も…!」
私は踵を返すとリリィは振り向き『来ないで』と拒絶した
『多分あれは魔獣と呼ばれるもの。人や精霊は簡単に殺されるわ』
私はゾクッとした。このまま行かせたらリリィは殺される…
そんな事はさせたくない…けど…
私はもう一度炎をイメージしてみる。…しかし、火力は変わらない
『もう時間がないわ!早く逃げて!』
私は悔しさに歯を軋ませた。結局ここでも無力なの…?
魔獣と呼ばれる生き物はもうすぐそこまで来て、立ち止まった。
獲物を見定める様な目つきでこちらを伺っている
リリィ一人だけなら助かる見込みもあるが、私は空を飛ぶ事はできない
そんな私を助けようとしているリリィは…
私はどうにか出来ないか考えるが周りは草原で落ちている物も人影もない
魔獣とリリィと私。それだけ…
(…そうだ氷!氷なら!)
私はふと思いつき、氷塊をイメージした。…が、出てきたのは冷凍庫で作れる様な正方形の小さな氷だった
…その様子を傍目で見たリリィは目を閉じ、意を決した様に前を見た
…さっきまで、本当に平和だったのに
どうしてこんな事になってしまったのだろう
私は人を救うという願いの為に来たのではなかったのか?
今の状況はただ助けられ、助ける事が出来ないただの足手まといだ
リリィは空を高く舞い、人の拳程の大きさの炎をいくつか降らせた
しかし、魔獣には全く効いていない。…あれでもダメなの…?
魔獣は持っていた棒でリリィを叩きつけようと棒を振り回した…が、当たる気配はなかった
何度か振った後、当たらない事を察した魔獣は視線を私に向けた
『まずい…!』
魔獣がこちらに歩いてくる。それを見たリリィは魔獣の射程範囲内に飛び込み、攻撃を誘うと、それを見た魔獣が大きく振りかぶった
(…助けなきゃ…!)
私は魔獣とリリィの間に立ち、リリィを庇う様に手のひらを棒の進路上に置いた。…!!
『グオォォオオオォオオオォォォッ!!』
「…?あ、あれ…?…なんとも、ない…?」
目を開き、身体を見てみるが傷一つ付いていない
私は続いてうめき声をの聞こえる方を見てみた。…!
魔獣が、もがき苦しんでいる。棒を落とし、頭を抱え、…やがてドスンッと両膝を付いた
「何が…起きたの…?」
私は呆然と呟くと、リリィが髪を引っ張った
『マリー!今のうちに逃げるわよ!』
私は逃げるという単語で我に帰った。…そうだ、逃げないと!
私は未だ頭を抱え、伏せている魔獣を尻目に私は全速力で走った
そして、走り続けると少し先に街が見えてきた
後ろを確認する。…魔獣は追って来てるような気配はなかった
私はひとまず安堵し、歩いて街へと向かったのだった