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お目醒め!?

『次は━━。次は━━。閉まるドアにご注意下さい』

目の前のドアが閉まる

辺りには疲労困パイの表情を浮かべるスーツ姿の人々

ふとドアに映る自分を見てみる…。ああ、自分もか

数ヶ月前までは学生だったとは思えないその疲れた顔に絶望感すら感じた

人を救う仕事がしたい。そう思って頑張ってきた結果がこれだと思うと辛さが溢れた

患者が元気になる姿は嬉しい。けれど全員がそうじゃない

既に何人も見送ってきたし、この電車に乗る人を助ける事も出来ない

圧倒的な無力感…。

「私、これでいいのかな…?」

呟いた所で答えはなかった

『間もなく━━。間もなく━━。荷物のお忘れ物など…』


コンビニでパンと飲み物を買い、帰宅すると何か違和感があった

机の上に見知らぬ薬瓶と手紙。ほんの少し机の上の物を退けた痕跡もある

誰かが侵入したのだろうか

しかし、見た感じ盗られた物はなく、むしろ机の上の物が増えている

ひとまず添えらていた手紙を見てみる。宛名も送り主もない

中を開いて読んでみると、そこには服用上の注意と書かれていた

・原則1日1錠まで ・周りが安全な所で服用 ・痛みを伴う恐れあり

…ざっくりしすぎて、逆にわかりやすいような少ないような

アレルギーとか、使用控えとか書かなくていいのかな…?

長い空白の後、一番下にまた文字が書かれていた


『貴女の望み、叶えます』


…望み。人を救う事…それがこれで…?

もしかしたらこれは毒かもしれない

死は救いと言う人もいる世の中、私は死に、救われてハッピーエンド。…なんて話かもしれない


脳は止めよう止めようと言っているが身体は震えながらも薬瓶を手にし、錠剤を手のひらに乗せ


そして、私は口の中に放り込んだ。



「ん…。ここ、は…?」

目が覚めると草原で寝転がっていた

…風が気持ちいい。空気が美味しい

心が洗い流されるようだった…

「…じゃなくて、ここ、どこ?」

起き上がり辺りを見回してみるが、全くわからない

ちょっと向こうには何か動く物が見えるが物はわからない

「んー…夢?」頬をつねる

「ん、痛い」どうやら夢ではないらしい


『ね、何してるの?』


不意に頭上から声が聞こえ、見上げてみると小さな可愛らしい女の子が浮かんでいた

手を伸ばしてみると指にちょこんと座った。人見知りとかはないらしい

「こんにちは、私は桧原茉里。あなたは?」

『私?私はリリィよ!ね、人間さん、あなたは何してるの?』

「私は看護師をしているの。人を助けるお仕事」

とりあえず質問に答えてみるとリリィと名乗る女の子の頭にはてなマークが浮かんでいた

『今は1人よね?自分を助けてるのかしら?』

…ああ、この子は職業じゃなくて行動を聞いてたんだ

「今は何もしてないよ。なんだかよくわからないの」

とりあえず力になってくれるかはわからないが、リリィに話を聞いてもらうとリリィは『付いてきて!』と、目の前を飛び始めた


言われた通り付いていくとやがて、森の中に入った

リリィは急上昇すると木の実を採ってくると

『お近づきの印よ!どうぞ!』と、私に差し出した

私はそれを受け取り、口に入れた。糖度が高いのか甘くて美味しい

リリィはもう一度上昇し木の実を採ると私の肩の上に座り、木の実をかじり始めた


リリィの休憩も終わると、再び進み始める

30分程歩いただろうか、ふとリリィが消えた…のではなく、目の前に低木が現れた

私は掻き分け、先に進むとそこにはとても綺麗な泉があった

リリィと似たような子とリリィを合わせて4人くらいだろうか

空を舞ったり、水で遊んでいたりした

『あ、えーっと、そう!マリー!』惜しい

でもなんとなくリリィに呼ばれるなら茉里よりマリーだろうなと思い、あえて訂正はしなかった

『もうじき女神様が来るわ!待っててね』

言われた通り待っていると他の子達が寄ってきた

『マリーさん、マリーさんって言うのよね?かわいー』

『マリー、私と遊んでよー』

『あ、私も…遊んでほしいな…』

何この子達かわいい持ち帰りたい


力なくぐいぐい引っ張る小さな子達を微笑ましく眺めていると泉が一瞬光を放った。反射ではない、と思う

すると引っ張っていた子達は手を離し、少し距離を取った。多分何かが来るのだろう

そう思っていると辺りが霧に包まれ始め、中心に影ができ始めた

やがて、霧が晴れるとそこにはリリィ達以上私以下の大きさ…動物で例えたら柴犬…?よりちょっとだけ大きい女の子が現れた

純白のウェディングドレスの様な服に羽衣。淡い青色の髪がきらめいて美しさを感じさせた


『ようこそいらっしゃいました。人間さん』

目の前の『女神様』は微笑んだ


私はリリィにした説明をもう一度女神様にもすると『成る程、事情はわかりましたわ』と、状況を理解してくれた

しかし、女神様も初めての事で詳しい話はわからないとのことで、しばらくリリィ共に冒険をして欲しいと言われた

この時、他の子達はそれぞれリリィに対してブーイングをしていた…といってもかわいらしーブーイングだったけど


『お力になれず申し訳ございません…。これはわずかばかりですが受け取ってください』

そう言うとチャラチャラ鳴る布の袋が手渡された

「これは…?」

『人間界で使われる通貨です。度々森で拾うのですが、私達に使い道がありませんから』

…なんで拾ってたんだろう。聞きたかったけど、本当にこの女神様がお金拾ってるなんて信じたくもなかったのでやめておいた

『ここから近い町は南東…あの木が北だとして、あそこの木の実の成る木の方が東ですから…その間ですね!』

女神様、それは北東です。しかしどや顔が可愛いので訂正はしないでおくことにした。後で進路変えれば良いよね


「何から何までありがとうございました」

私はお辞儀をし、北東へ歩きだす。振り向くと女神様は微笑み、手を振ってくれていた

リリィはなんだかんだ仲間達に見送られていた

最初に訪れたのがここで良かったなと、私は思えた


『ちょ、ちょっと?進路が段々ズレちゃってるけど大丈夫なの!?』

リリィもまた、南東がわからないのでした

(ちなみにリリィにはちゃんと南東を教えました)


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