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24話 心象魔術の習得方法を学び

心象魔術ユニークについては、ちょうどボクも説明しようと思っていたんだ」


 俺たちはいつもの座学のように、草原に転がっている大きな石に座って向かい合う。

 空精魔術エアリエッティの習得が一段落し、あとは習得難易度がエベレストを越えそうな勢いの[爆肢はぜあし]を残すのみとなった俺は、ユニーク魔術に活路を見出すべく、ラウレの話に耳を傾けている。

 ちなみにウーリにもユニーク魔術の話は関係ありそうだが、魔物の感覚は違うのか、それとも座学が不得意だからか、ウーリは布団羊を召喚して眠りに行った。これもいつもの光景なので、もはやラウレも気にしていない。


 ラウレは考える素振りを見せながら口を開く。


「えっと、魔術と言えば一般的には五精魔術を指すんだけど、五精魔術以外にも魔術はあるんだ。それが、心象魔術ユニーク希少魔術マイナーだよ」

「ユニークは聞いたことあるが、マイナー?」

「うん。馴染みがないよね。一応知識として紹介するけど、たぶん希少魔術マイナーのほうは役には立たないかな。

 そうだね……本題の心象魔術ユニークは後回しにして、先に希少魔術マイナーから説明しよっか」


 ラウレは一度思考を挟むと、言葉を続ける。


希少魔術マイナーアーツ、これは要するに希少魔術きしょうまじゅつのことなんだけど、五精魔術ジェネラルとは毛色の異なる魔術のことで……わかりやすく言えば、学べる心象魔術ユニークって感じかな」

「学べるユニーク? わかるようで、わからないな」

「ボクもあまり詳しくないから表現しづらいんだけど……えっと、魔術の分類ってあまり難しくなくてね、五精魔術ジェネラル以外を、心象魔術ユニーク希少魔術マイナーに分けるんだ。それで、その人にしか使えないものを心象魔術ユニーク、他の人でも習得できるものを希少魔術マイナーって呼ぶんだよ」


 俺は呆気に取られた。

 なんてずさんな分類法なんだ……。結局のところ、五精魔術でもなくユニーク魔術でもないものを希少魔術マイナーと呼んでいるだけではないのか? それだと『その他』と名付けるのと大して変わらない。


希少魔術マイナーの分類方法はそんなのでいいのか?」

希少魔術マイナーって、存在自体が希少だからね、分類の方法は正しいと思うよ?」

「ああ、そういう……」


 五精魔術が一般的だから、それ以外の魔術はそもそも少ない。だから希少魔術なのか。


「うん。習得の仕方も限られていて、研究して一から作り上げるか、先達の技術を受け継ぐかのどちらかだね。

 たいてい秘匿されていたり、あるいは後継者が見つからなくて喪失したりするらしいから、どんなものがあるのかもよくわかっていないんだ。

 国が転移の魔術を確保しているのは知っているけど、それ以外だと、きんを生み出すとか、光を生み出すとか、結界を作るとか……。本当のところはわからないけどね。あくまで噂だから、人の願望も多分に入っていると思うよ」


 苦笑するラウレ。結局、ほとんど不明ということなのだろう。

 情報屋である養母ちゃんならそのへんのことも知っているかもしれないが、逆に言えば、金を払わなければ得られないほど希少な情報ということだ。なるほど、希少魔術マイナーとは言い得て妙だったか。


「一から作ることもできるんだよな? そっちは難しいのか?」

「ノーヒントでそれができるならいいけど、イスハ、できそう?」

「……無理だな」


 人によってはいきなり使えるらしい五精魔術ですら教わるまでできなかった俺では、ノーヒントで希少魔術マイナーを作るなど、[爆肢はぜあし]を完成させるより難しいかもしれない。[爆肢はぜあし]を正攻法で攻略できそうにないからこちらに来たのに、それでは本末転倒だ。


「じゃあ、習得しようと思ったら、まずは知っている人物を探すところから始めなければならないのか。今の俺には無理だな」

「うん、現界に戻ってからじゃないとね。だから、希少魔術マイナーのことは頭の片隅に置いておくぐらいでいいかな。今は不要だからね」

「ああ、そうする」

希少魔術マイナーの話はこれくらいにして、心象魔術ユニークの話に移ろうと思うけど、大丈夫かな?」


 いよいよユニークの話題ということで、俺は首肯を返すと、身を乗り出すようにして聞く姿勢を取った。


「じゃあ、説明するね。

 心象魔術ユニークアーツ、あるいは心象魔術しんしょうまじゅつ

 その人にしか使えないことは前にも説明したけど、それは術者の心の在り方を映し出すからだと言われているよ。心象を映す魔術、だから“心象”魔術なんだ」


 術者の心に根差した魔術ということか。だから固有ユニーク。なんとも心をくすぐる魔術だな。

 とはいえ……。


「心の在り方を映すということは、必ずしも欲しい魔術にはならないということか?」


 人は持たざる物こそ欲する、という言葉が脳裏をよぎる。


「うーん、どちらかといえば逆かな。心の在り方っていうのは自分の根幹のことで、自分の本心そのものだから……たぶん、望んでいるものが手に入るはずだよ」

「そうか、それは素晴らしいな」

「うん。それに能力そのものも強力でね。たいていは、はたから見れば理解できないような理不尽な能力になるよ。心象魔術があれば誰でもゴールドランクになれるって言われるくらいだし。かく言うボクもそうだったしね」

「……そうか、あの黒い魔術で」


 確かに、あの絶対防御ともいうべき魔術は目を見張るものがある。なにより、本質が掴めず、底が見えないところがあれの恐ろしさだろう。


「あれはボクの心象魔術ユニークで、【火消ひけし】って呼んでいるよ」

火消ひけし?」


 空間系かと思っていたが……火消とは意味が分からないな。


火消ひけしっていうのはボクの心象と関係があるんだけど……ちょっと個人的なことだから、ここでは省かせてもらうね」

「ああ、もちろん構わない。それより、どうすれば習得できるんだ?」


 俺の質問にラウレはホッとしたような表情を見せたあと、少し申し訳なさそうにして答えた。


「今すぐ、は難しいかもしれないよ。実は、運が結構絡むんだ」

「……運っていうと?」

「これはボクの体験も踏まえての考えなんだけどね、心象魔術ユニークの習得には三つの要素が必要なんだ。一つ目の要素は、自分の心の在り方を知って認めること。二つ目の要素は、力を強く求めること。三つ目の要素は、心の在り方と求める力が一致すること。

 一般的には、危機的状況と、それを心象の力で打開できることが習得のきっかけだと言われているよ。

 でもこれって自分ではどうしようもないところもあるよね。努力すればいいってものでもないから。

 運が結構絡んでくるから、心象魔術ユニークは習得するものではなく覚醒するものって言われたりもするよ」

「そうか……」


 情報が一度に開示されたので、俺は少し考え込む。

 ありがたくない情報もあったが、しかし諦めるには足りない。

 そうなると俺がするべきことは……。


「一つ目の、自分の心の在り方を知るには、どうすればいい? パッと思いつかないんだが……」

「それは……ごめん、ボクもよくわからないんだ。ボクのときは自然と認識していたし、他の人のは聞いたことがないから」

「そうか。……じゃあ、二つ目の、力を強く求めるというのは、どの程度? 俺も力を求めているほうだと思っているが、それで充分なのかが知りたいな」

「うーん、たぶん人によって感覚は変わると思うけど、わかりやすいのは命が懸かっているレベルかな。ちょっと具体的なことは言えなくて申し訳ないけど」

「そうか……難しいな」


 客観的な指標がないのが一番困るところだ。

 心の在り方というのが何を指すのか。

 力を求めるというのも、命が懸かるレベルだとして、命より信念を優先させる俺だとどうなるのか。信念的に力を求めてはいるが、それで充分なのか。

 三つ目の、心の在り方と求める力の一致については、そもそも一つ目と二つ目がクリアしていないとどうしようもない。


 一般的な習得法の、危機的状況と、それを心象の力で打開できることっていうのも、わかるようで、わからない。流れに身を任せ、運がよければ習得できるということか?

 結局、俺は何をすればいいんだ? 順番としては、一つ目の、心の在り方を探すところから始めるべきなんだろうが……。


「……ラウレ、習得した人の具体例はない? いまいちやり方がわからなくて」

「具体例……ボクの体験はあるけど、個人的なことだから……。

 他の人のも、聞いたことがないからね……。心象魔術ユニークって、覚醒させる人が少ないし、運良くその人に出会えたとしても、あまり話すようなことでもないんだ。自衛として情報を隠すというのもあるけど、心象魔術ユニークの覚醒っていうのは、たぶん、その人の心の深いところが関係しているからね。家族ぐらいの仲じゃないと話さないと思うよ」

「そうか……わかった。とりあえず、自分の心の在り方っていうのを俺なりに探しみることにする。力を求めることとか、危機的状況とかは、たぶん戦闘中に満たせると思うから、まずは自分の心の在り方についてだな」

「うん、それがいいと思うよ。イスハなら案外すぐに見つけそうだしね」

「……そうだといいが」


 うまくいく気がせず、俺が視線を逸らすと、ラウレが伺うように顔をのぞき込んでくる。


「あれ? なんとなくイスハって、そういうのが得意そうなイメージがあったけど……」

「いや、得意なほうだとは思う。瞑想とかよくやるしな。ただ……得意だからこそ、今まで見つからなかったことが、うまくいかないことを暗示しているように思えてな……」

 

 瞑想は、今でこそ冷静になりたいときに多用しているが、その本質は自分の心を見つめ直すことにある。

 俺は自分の心をよく知っているつもりだ。それでもなお、心象魔術ユニークに必要とされる心の在り方というものがよくわからない。こんな状態で探しても、見つかるわけがないと思うのだ。


「俺のやり方ではうまくいかないかもしれない。おそらく別口でのアプローチが必要なんだろうが……どうすればいいと思う?」

「そうだね……例えば、自分が他の人とは違うなって思うこと、ないかな?」


 おや、とラウレを見る。

 個人的なこともあり、そこまで返答は期待していなかった。


「他の人とは違うなって思うことは、あるな」


 主に、信念のこととか。


「うん。それで、自分だけの物の見方ってあるでしょ?」

「ん? ……そうだな、あると思う」

「その見方っていうのが、心の在り方なんだと思うよ」

「……そうきたか」


 信念とはあくまで目的であり生き方であり呪いであり、しかし物の見方ではない、と思う。

 じゃあ、俺の、物の見方とは? ……ふむ。これまで自分の内にばかり目を向けてきた気がするな。改めてじっくりと考えてみるか。


「ラウレ、ありがとう。その方向で進めてみようと思う」

「あ、でも、それはボクの感覚だから、必ずしもイスハに合うとは限らないよ。もちろん試してみるのはいいとは思うけど、あまり固執しないようにね」

「……それもそうだな。わかった」

 

 とはいえ、現状、それ以外に頼れる方法がないのも事実。

 できれば心象魔術ユニークは習得しておきたい。恐怖の魔物を倒すには今の強さで足りるかわからないからだ。


 ラウレなりの心象魔術ユニークの習得方法を聞き終えた俺は、早速それに取り掛かるのだった。


 前回戦闘時における、イスハとモジャモジャの魔物の情報を公開します。

 すみません、前回は間に合わなかったので……。

~~

<ステータス>

「イスハ」

種族:少女鳥ガーリッシュハーピー

特技スキル

 【瞑想】☆☆ [休息][即時発動][冷静][感知][回復]

 【持久】☆ [一日持久]

 【潜在覚醒】☆☆☆ [筋力覚醒][思考覚醒]

 【身体操作】☆☆☆ [絶対精度運動]

 【隠密】☆☆ [気配希薄][無音行動]

 【感知】☆☆☆ [体内感知][環境感知][意識感知]

 【直感】☆ [危険直感]

 【体術】☆☆ [上級]

 【走術】☆☆☆ [超級]

魔術アーツ: ←New

空精魔術エアリエッティ】 [風亡かぜなき][負爆おいはぜ][爆撃はぜうち

命精魔術セフィロティック】 [身体強化]

特技スキルの☆の数は価値や評価を表し、最大で三つです。魔術アーツに☆がないのは評価基準がないためです。

※[爆肢はぜあし]は未完成のため未表示となっています。


「モジャモジャ(仮)」

種族:魔物(大魔(グレイトカインズ)

特技スキル

 【魔物】☆ [魔力感知][魔力吸収]

魔術アーツ

 【空精魔術エアリエッティ】 [強風相殺][突風脱出]

 【心象魔術ユニーク:雷操作】 [静電操作]


<魔術詳細>

「イスハ」

空精魔術エアリエッティ

いち [風亡かぜなき

 走りの補助。風をかき分け、通ったあとに元に戻す。これにより空気抵抗を減らし、かつ風を外に出さないため、走りの高速化と隠密化を図れる。

 [負爆おいはぜ

 走りの補助。圧縮した空気を背後に設置し、任意のタイミングで解放して疑似的な爆風に乗る。瞬間的な加速を可能とする。

さん [爆撃はぜうち

 攻撃技。圧縮した空気を操作して任意の地点で解放し、疑似的な爆風で攻撃する。


「モジャモジャ(仮)」

空精魔術エアリエッティ

・[強風相殺]

 外部からの強風や竜巻などを相殺するように風を吹かせ、弱体化させる。

・[突風脱出]

 突風を身体に受けて逃走する。

心象魔術ユニーク:雷操作】

・[浮遊]

 自身と、周囲の地面の電荷を同じにして、その反発力によって浮く。

・[放電]

 自身と、周囲の地面の電荷を同じにして、一定範囲外の地面を逆の電荷へと誘導し、放電の一歩手前で待機させる。一定範囲内に物体が入り込むとそれを中継するように放電する。


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