第14話 咎負いし偽物の英雄 Ⅴ (R-15)
※R-15な内容含みます。暴力的かつ汚い絵面が浮かぶかと思います。そういうのダメな人はこの話は飛ばして下さい。そうしても問題ないように構成してあります。読み進める方は下へスクロールしていってください。
少年は目隠しをずらすように外し、一旦女の子から離れ、
ピチャッ、ピチャッ、
未だ残ったままの黄色い水溜まりを通り過ぎて痴漢男の元へ。そして、痴漢男を見て、彼は、悪魔染みた解決法を思いつく。
先ずは、痴漢男の大腿部に付いた自身のベルトを取り外す。そして、それを、持って
ピチャッ、ピチャッ、
再び彼女の元へ。彼女の位置は動いていない。目を覚ましていないままだ。先ずはスカートを脱がす。
(生温く湿っている……)
次に、ベルトをズボンに潜らせる。
(至近距離で再び嗅がざるを得ないこのの匂い。先ほどよりも汗の香りが強くなり、黄色の液体由来の匂いは弱まっている。よくよく考えると、これは、ある意味、夢のようなものであり、現実に影響は及ぼしはしない。まやかしの匂いに体が反応するなんてことはない。あるとしたら、俺自身の妄想力だけだ。だから、もう、変に抑えず、開き直った方がいい)
ベルトループなんてついていなかったので、上手いこと彼女のブラウスにも噛ませつつ、ズレ落ちないように固定した。
そして、彼女を黄色で染まった下着とスカートを除いての彼女の手荷物ごと、三両目に移す。少々乱暴であり、彼女を揺らす形となったが、それでもそうせざるを得なかった。今からやることを万が一にも彼女に見られる訳にはいかなかったからだ。
そして、彼は、躊躇を捨てて、真の意味で捨て身になる。
それは、至極単純な手段。だが、思いついても普通ならまずやらない手段。三段階に分かれた、悪魔染みた手法。
ジャァアアアアアアアア――、ッ!
第一段階。彼も、出すことにしたのだ。黄色の液体を。混ぜてしまえばいい。そうすれば、少なくともそれは、純粋な意味で彼女のものの匂いではなくなる。 そして、物量的に彼が出したものの方が彼女が漏らしたものより多い。
(……。何なんだ、この、思い切りは……)
混ぜれば混ぜる程いい。
そして、続いて、再び。
ぐぅぉぉえぇぇぇええええええ!
絞り出すように嘔吐する。
(流石に、自身の便まで出す蛮勇は発揮しなかったか)
これが、第二段階。
そして、更に。気絶状態の痴漢男を、それらの混合物の上で転がす。まるでかさかさの雑巾のように、混合物を吸い取っていく。
(うわぁ……)
だが、ここで終わらない。
今度は、
「起きろ、ほら、早く、起きろ」
パシン、パシン、パシン、パシン、――
何度も何度も、揺さぶりながらビンタ、ビンタ、ビンタ、ビンタ!
そうして、やたらに眠そうで虚ろな目をした痴漢男に、
ガコッ、ガッ、ブチャッ、スッ!
顎を外しながら喉奥へと手を突っ込んで、抜く。それと同時に、痴漢男は激しく激しく嘔吐した。血混じりに嘔吐した。
これが、第三段階。
(ほぼ手段選ばず、使えるものは何でも使う、か……)
だが、そんな第三段階を終えて、更なる悪魔染みた手段を、彼は思いつく。
(まぁ、やるわな……。そこまでやったなら、それ位……。それに、突き合わせる権利は確かに、ある……)
そして、苦しそうに咽る痴漢男の背中を叩き、気管の詰まりを阻止しつつ、彼は、痴漢男の耳元でこう言った。
「ションベン漏らせ、今すぐに」
当然のように事態が全く把握できていない、踏んだり蹴ったり状態の痴漢男はその言葉の意味を理解できていない。理解しようともしていない。そして、遅れてやってきた顎の痛みにのたうち回ろうとしたところで、彼に後ろからがっちり捕らえられて、
ガッ、ブチャッ、スッ!
再び激しく嘔吐させられながら、
「いいから、漏らせ。オシッコ。オネショだ。ほら、早く」
そう、今度は痴漢男の首根っこを掴んでそう言って、それでも痴漢男は理解が足りないようだったので、
ガッ、ブチャッ、スッ!
再び強制嘔吐させる。もう痴漢男の胃の中には碌に吐き出すものが無いらしい。殆ど血だった。
(やり過ぎな気もするが、ある意味、この過去の俺は、この痴漢男に命の危機に晒された訳でもある。だから、妥当なの……な、訳あるか! やり過ぎだ。そして、それを止める奴なんていない。時間制限も僅かだが残っているだろう)
彼は車窓から外を見る。森が終わった。残り1分程度しかない。
ガッ、ド、バシャッ!
「これが最後だ。漏らせ。今すぐに、大も小も混じってくそみそになりやがれ」
痴漢男を強引に、彼と痴漢男の吐瀉物と、彼と彼女の尿混じる、汚物の水溜まりへと捻じ伏せた上でそう、声を荒げることもなく、はっきりとした声で、冷たく、そう通告した。
痴漢男は返事を口にしなかったが、
ブリブリブリブリリリリリリ、ジョォォォォォォォ……。
行動で答えを示した。
痴漢男は、泣き叫んだり錯乱したりせず、唯、諦念を色濃く映した死んだ目をして、虚ろに、大と小とあと涙を垂れ流す。
「これでお前は終わりだ。くそみそ塗れで、駅員に付き出してやるよ。後、お前は刃物を俺とあの子に振るった。だから、俺にこんなにされても、お前に反論の権利は無い。法的にも、この前の俺との約束を破ったことからしても、な。これ以上恥を重ねたくなければ、無駄な抵抗の意志は捨てて、沈黙して沈むといい」
そう、トドメの言葉を投げ掛ける。そして、
「やっぱり、逃げられると困るからこうしておくことにする」
ガッ!
目隠しに使っていた袖切れを痴漢男の口に突っ込んで、
「しっかり噛んどけよ。痛いから。そうしないと、血塗れ、だぞ」
ガコッ! ガコッ!
両足首の関節を外した。
(えげつねぇ……、が、色々とうやむやにするっていう意味では、もうこれ位しかない、か……。ナイフによる二度の襲撃。被害者たる俺。そして、彼女がそれを証言してくれる。彼女が気を失う前のことだから問題ない。そして、俺の掌には被害を被った証拠がある。凶器のナイフもある。正当防衛は成立する。……成立する……。そう思いたい。流石にやり過ぎている……。まぁ、恐らくは、成立するのだろう。そして、俺が痴漢冤罪を掛けられたときよりすら、騒ぎにはならない。きっと、そういうことだ。
「間もなく、森東。お降りの際には忘れ物の無いようにお願い致します」
ダミ声のアナウンスが聞こえてくる。
(だから、俺は自責し、自罰する。そして、彼女に対して更なる罪を、記憶を頼りに犯さない為に。記憶消去はそういう意味でもあったのだろう。もう過去のことだと見ても、色んな意味で罪悪感が半端無い……)
彼は窓の外を見て、間に合ったことに安堵する。
(あれ……? そこでまだ安堵したらいけないだろう……。あの子の下着とスカート。それの回収、今すぐやらないと、不味いだろうが……。それに、電車停止ボタンは、押さないのか? 使えば、確実に一般客を阻止できるだろう? 電車内に入る駅員も女性に限定できるだろう?)
ガァァァァ!
駅に入り、電車が止まろうとする音が鳴り響く。
(おいぃぃぃ!)
そうして、彼は、彼女が漏らしたことの隠蔽という一見不可能な仕事を成し遂げたのだった。




