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僕の話を聞いて下さい

作者: なおき

宜しくお願いします。

 僕の話を聞いて欲しいんだ。

 僕はある民族の中の一人で、僕達はとある世界で静かに暮らしていたんだ。 そこは自然が満ち溢れていて、僕達は草や木、風、太陽、海、川、森、そういったものと共に生きていたんだ。僕達は川や海で魚を獲ったり、森で狩りをしたり、畑で野菜を育てたりして、静かに暮らしていたんだ。

 僕達の暮らしの周りには、いつも穏やかな笑顔や無邪気な笑いがあって、それらは絶えることがなかったよ。

 僕達はずっとそうやって生きていたんだ。

 そして、僕は、これから先も、ずっとそうやって、僕達は生きていくんだ、って思ってたよ。

 僕はここで穏やかな、優しい大人になって、静かに幸せに生きていくんだって思ってたよ。

 



 ある日、僕は森で今まで見たこともないような男を見かけた。太った中年の小男だった。青いジーンズに白のランニングシャツといでたちこそ普通の感じだったが、僕達の中の誰とも違う、奇妙な雰囲気を漂わせていた。

 僕は木の陰から男のことを覗いていた。

 男は何かをブツブツと呟いている。

 そして、突然、両手を天に向かって伸ばし、大声で呪文のような言葉を叫んだ。

 僕は今まで太陽に照らされていた大地が暗くなるのを見た。

 大地はどんどん暗くなっていった。僕は何か上空に、とてつもないものの気配を感じた。

 僕が空を見上げると、僕達のこの世界をすっぽりと覆い尽くす程の巨大な地面が、僕の立っているこの地面に迫ってきていた。

 その地面はどんどん僕達の世界に迫ってくる。僕にはどうすることも出来なかった。

 そして、凄まじい音と共に僕達の世界をぺしゃんこにして、堂々とその地面は僕達の世界に舞い降りてしまった。

 僕達は皆、ぺしゃんこになってしまい、一ヶ月程は地中に埋もれて、そこで動くことが出来なかった。

 そして、僕達は傷だらけになりながらも、地上に何とか這い出た時、灰色の光景を目にした。

 草や木や森は、その衝撃で見るも無残な姿に変わり果ててしまい、海や川も何だか濁ってしまった。

 太陽は再び昇ったが、何だか以前の太陽とはちょっと違うみたいだ。もう僕達を優しく照らすことは出来ないみたいだ。

 世界は全く変わってしまったようだ。

 



 僕達の世界を潰して舞い降りた、新しい世界の住人達が、もうすでに、そこで生活を始めていた。

 彼等は兵隊のようにきびきびと動き、とても力強く、体格ががっちりとしていて、とても大きかった。

 僕達の住居もすでに壊され、その土地も全て占領されていた。

 僕達は、どこか他の誰もいない土地を探し、そこで生きていくしかなかった。

 この世界の隅の方に、彼等にとってはどうでもいい土地があり、僕達はそこに家を建てて、生きていくことにした。

 そうするしかなかった。

 そういったことがあって、僕達は皆、何だか魂を抜かれたみたいになってしまった。

 穏やかで無邪気な笑顔も失ってしまったし、いつも何かにビクビクしているような人間になってしまったし、何をするにも彼等に伺いを立てなければならなくなったのだ。

 



 やがて、僕達仲間同士の関係も以前のような関係ではなくなっていった。お互いを蔑んだり、疑ったりするようになった。

 そして、以前の、穏やかで無邪気だった関係を、僕達は、馬鹿にするようになった。

 僕達はいつも力なく笑い、どこか冷めたような生き方をするようになった。

 仲間の中にも、僕達を裏切り、彼等に気に入られようとする者達も現れだした。

 あれだけ仲が良く、お互いを信じていた僕達が、バラバラになっていこうとしていた。

 



 僕達は、次第にたくましくなり、強く生きるということを覚えていった。彼等に取られてしまった土地も随分と取り返したし、もう今では、彼等と比べても見劣りするということはなくなった。

 世界で彼等と対等にわたり合い、立派に生きていくことの出来る大人になった。

 僕は結婚し、家庭を持った。

 妻を愛し、娘を愛している。

 僕は幸せだ。

 だが、本当に時々だが、あの穏やかで無邪気だった世界で生きていた日々のことを思い出し涙するのだ。






 おわり 

 

 


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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは、初めて小説を読ませて頂きました。 しん太さんの書く文章は表現が幅広く、言葉が豊富だとは思いましたが、単調な部分が多々あり、作文の様な印象を受けました。 その為、読者側にしてみると…
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