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はればれ  作者: 水谷なっぱ
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特技

 書店に寄ってから帰宅した夜空は、買ってきた近隣の高校一覧をぱらりとめくった。

 夜空の得意な科目は国語と数学、理科。英語と社会は苦手ではないけど得意でもない。文章を読むこと、それを紐解くことが彼女の好きなことだった。

「文章に携わる仕事ってなにがあるのかしらね」

 小説家や編集者は敷居が高そうな気がする。他に文章に携わる仕事とはなにがあるだろう。ずっと自分は一人で黙々となにかをするのが好きだと思っていた。でも、皐月と話すようになって、それだけではないのだと気がついた。

 だから。

「皐月や恵奈と同じ学校も悪くないけど」

 違う場所で自分を試してみたいとも思った。今までは皐月や恵奈が話しかけてきてくれた。だから今度は自分が誰かに声をかけてみたいのだ。皐月と恵奈がそうしてくれたみたいに。

 もちろん二人と同じ高校に行ったとしても、それはできるかもしれない。でもきっと夜空は二人に甘えてしまう。自分だけでできるなにかを見つけてみたいと思うのだ。

 ふと、とある高校の説明が目に止まった。そこには"図書室が充実しています"と小さく書いてあった。図書室通いは今までと変わらないかもしれないけれど、自分と同じようにそれを目当てにこの学校に行く人がいるかもしれない。そうしたら、そういう人に話しかけることができるのではないか。その学校の説明をしっかり読んでみると、それなりに近場で、落ち着いた校風が売りのようである。

「ちょっと見に行ってみようかしら」

 あまり派手なことは好まないから、校風が落ち着いているのはありがたい。それに近場なら皐月と恵奈と別々の学校に行っても会いやすいかもしれない。

 そう思った自分がなんだかおかしかった。

 中学二年生になった頃は、派手なグループに巻き込まれて、疎まれていただけだった自分が誰かに会いたいと思ったこと、同じようになりたいと思ったこと。皐月と恵奈が好きだなと思えたこと。

 人間って変わるんだなと思う。いつか大人になって、二人と離れ離れになっても、たまに会って、たわいない話をして、あの頃は馬鹿だったねと笑えたら。

 そうなるために、きっと私はもっと成長しないといけないんだなと痛感する。わずか半年で皐月と恵奈はすごく変わった。

 皐月はきちんと考えて話すようになったし、言いたいことはちゃんと言う。恵奈は落ち着いて、困ったらなにがどう困ったか言葉を模索するようになった。

 自分も変わった。よく笑うようになったし、誰かと一緒にいることが苦痛じゃなくなった。きっとこれからもどんどん変わるだろう。

 そうやって変わった先に、変わらない笑顔があるといいなと、夜空は口端を緩ませた。

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