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はればれ  作者: 水谷なっぱ
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対処

 その次の日も三人は楽しく遊んでいた。旅行先のあちらこちらを散策し、恵奈は地図を一人で読めるようになった。

 買い物をして各自の趣味や好みなどで驚くこともあった。もちろん修学旅行ということで食品系の工場を見学して学んだりあくびをしたり、移動中に寝てしまったりもした。

 どれもこれも楽しい思い出である。前日とは違い三人共喧嘩や仲違いをすることはなく、穏やかに一日を過ごしたといえる。

 全くトラブルがなかったわけではない。工場見学中にのんびりしすぎてクラスのグループにおいて行かれそうになったり、お土産を買う際にどのストラップをおそろいにするかで揉めたりもした。

 「このハートのストラップかわいい!」

 「こっちの星の方がかわいいんじゃない?」

 「あら、これがいいわ。猫いいわよね」

 「えー」

 「うーん」

 「あら」

 三人は困ったように見つめ合う。恵奈が少し面白がっているのは気のせいだろうか。しばらく主張し合った後に、色を同じにして形は各自が好きなものにするという結論で落ち着いた。

 それぞれストラップをカバンにつけて微笑み合う三人は穏やかな中学生そのものである。

 さらに家族用のお土産や自分用のお菓子など、買うべきものはたくさんあったし、修学旅行だからとお小遣いもたくさんもらっていた。

 少し大人っぽいネックレスの前で恵奈が立ち止まる。

 「かわいい」

 「いいんでないの」

 「でも似合わなくない?」

 「そんなことないわ。ではこうしましょう。私はこっちを皐月に買うから、恵奈は私にこちらの猫のを買ってちょうだい」

 「夜空、猫好きだね」

 「ええ、好きよ。皐月はどうすればいいかわかるわね」

 「はいはい。これを恵奈に贈るよ」

 夜空の提案に恵奈が涙目になる。それは昨日とは違う涙だった。

 「あり、がとう」

 「いいのよ」

 「恵奈は泣き虫だなあ」

 「そんなことないし!」

 きちんとラッピングされたネックレスを受け取った恵奈は大事そうにそれを抱えた。皐月と夜空も嬉しそうに包を手に取る。

 三人で班を作ってよかったと皐月はじんわり思った。

 明日には家に帰らなくてはいけない。それでも今が大事で幸せであることに変わりはない。だとしたら、精一杯楽しもうじゃないか。

 先を歩く夜空と恵奈に、皐月は追いついた。

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