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はればれ  作者: 水谷なっぱ
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応答

 なんでこんなところにいるのでしょうか。

 わたしは薄暗いと室内から、輝かんばかりに晴れた外を猫背のまま恨めし気に見やった。

 「手が止まっているわよ皐月」

 正面に座る夜空が何故だか楽しそうな声をわたしにかける。

 「止めてるんだよ。ねえ夜空、なんでわたしたちは夏休み初日から学校に居残って図書室で勉強してるんだっけ?」

 「夏休みだからでしょ」

 もう全然説明になってない。意味わかんないし、遊びに行きたいし。

 「宿題たくさん出たでしょ。だから早めに片付けたいの。皐月はぎりぎりまで残しておくタイプなの?」

 「気が向いたときに気が向いただけやるタイプ」

 「なら、なおのこと早めに終わらせた方がいいわ」

 そういって夜空はカリカリとペンを動かしている。主旨と意向は把握したけど理解したくない。こんなの思いついた時にやればそのうち終わってるよ。例年いくつか取りこぼしがないこともないけど、まあいいんだよ。

 再び外を見る。

 青い空、白い雲、砂煙舞う校庭、騒がしい運動部、青春。

 「別に私だって勉強したくてここにきたわけじゃないの」

 「そうなの?」

 「ええ。だって夏休みよ。なにが悲しくて黙々と勉強だけをしなくてはいけないのよ。でもね、今のうちに宿題を済ませれば後々が楽じゃない」

 「そうだね」

 そして後々来期の予習でもするんだろうか。夜空ならやりかねないのが怖いところだ。

 「せっかくなのだから遊びに行きたいでしょう」

 「え」

 「だから、さっさと宿題を終わらせて皐月と私で遊びに行くの」

 まさか。

 まさか夜空からそのような可愛らしい言葉が飛び出るとは。

 なにこれ涙出そう。

 感無量とでもいうのだろうか。

 「なにをぼんやりしてるのよ」

 「ごめん、感極まってた」

 「意味が解らないのだけれど」

 夜空は僅かながらに口をへの字にしている。この子はいつの間にこんな可愛い仕草をするようになったのか?

 まったく隅に置けない。

 「で、あなたはどうなの」

 「もちろん遊びに行きたい。アイス食べたり、街中ぶらぶらしてクレープ食べたり、お祭りでたこ焼き食べたり、プールで焼きそば食べたりいろいろ」

 「飲食率高いわね」

 「いいんだよ。成長期なんだ」

 太るわよ、と苦笑いをする夜空にわたしはにいっと笑ってみせた。

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