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はればれ  作者: 水谷なっぱ
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曖昧

 「おはよう」

 「あ、おはよう皐月。えと、それじゃ」

 そう言って元友人は目を逸らしわたしから離れていった。


 菱形中学2年2組。夏休みが始まる直前の朝の教室である。窓の外はぴかぴかの晴れで、熱い風が教室を吹き抜けカーテンを揺らしている。

 春から先日までのトラブルを受けて、わたしは朝は早めに登校するようにしていた。トラブル回避や証拠隠滅、あとたまに図書室に顔を出して、同じように登校の早い夜空と勉強をしたりもしている。今日は教室で昨日返された定期考査の見直しをしていたら、元友人が登校してきたので一応の挨拶をしたらこの様だ。わたしから離れたのだから元友人を責めることはしないし、不安定な時期の中学生はそんなものかなと思う。

 とはいえなんとなく曖昧な感情を抱いてしまうのだ。それはわたしも不安定な時期の中学生だからだろうか。

 一度離れちゃうともう元には戻らないんだなーーとか。

 こういうのってどうしようもないのかなーーとか。

 「---つき」

 あんまりうじうじするのも良くないし定期考査の見直しの続きをしようかなあ。

 「皐月」

 「ん、夜空?」

 「ん、じゃないわよ」

 目の前には冷たい顔でわたしを見下ろす夜空がいた。いつの間に来たんだろう。全然気づかなかった。

 「今さっきよ。あなたが上の空で黒板を眺めているから挨拶くらいはしておこうと思ったのだけど」

 「そうなの? ありがとう、我に返った」

 「ならいいのよ。おはよう皐月」

 「おはよう夜空」

 夜空ははっきりと頷いたあと、胸を張って自分の席に向かった。なんだか最近夜空が元気で嬉しい限りだ。そういえば定期考査もなかなか良い結果だったみたいだし。中の中を地で行くわたしには羨ましい限りだ。


 なんてまたもやぼんやりと考えていたら担任の教師が教室に入ってきた。これから終業式があること、その後成績表を渡されること、その他諸々の連絡事項を述べて立ち去っていく。

 終業式ではよくある教頭のお説教から始まり、校長の長い話、その他諸々の注意事項が述べられていた。教室に戻ると担任教師があれこれ話をした後に成績表を配り、クラスメイトが一喜一憂していた。夜空はその限りではなくて、わたしもたいした感慨はない。いつもどおり中の中だ。その他諸々、お説教やらなんやらの話を聞かされる。『その他諸々』が多いのは単に聞いていなかっただけで、深い意味はない。長すぎて聞く気が起きなかったのだ。


 そして。

 そしてようやくの夏休みが始まった。

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