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はればれ  作者: 水谷なっぱ
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日常

 「おはよう皐月」

 「おはよう夜空」

 夜空さんと屋上の入り口で会話をした次の日。これまた珍しく夜空さんから挨拶をしてきた。しかも呼び捨てで。なので同じように返してみたのだけど、夜空さんは不満そうだ。

 「どうしたの」

 「もうちょっと驚きとかないのかしら」

 「驚いたよ。めっちゃめちゃ驚いた」

 「そうは見えないのだけれど」

 「そうかなあ。で、なんで呼び捨て?」

 「友達だからよ」

 今度は本当に驚いた。

 友達。

 友達?

 友達!?

 「え、いいの?」

 「嫌なの?」

 「いいえ、嬉しいです。今後ともよろしくお願いします」

 「ならいいわ」

 夜空は笑って自席へと行ってしまった。

 その後なにかが変わったかといえば特に何も変わらない。朝や帰りに挨拶したり、教室を移動するときに一緒に移動するようになったくらいだろうか。夜空は休み時間は1人で読書か宿題をしている。わたしも夜空に勧められた本を読んだり、次の授業の予習をしたりしている。ぼっちが時折二人でいるようなものだ。

 クラスの雰囲気もだいぶ穏やかになったと思う。カースト上位の連中はあまり大騒ぎをしなくなった。他の人たちがおびえた様子を見せることも減った。

 教師はなにも気づかない。

 それでいい。

 ややこしいことや、やっかいなことを言い出さないでもらえればそれでいいんだ。

 あるとき夜空がぽつりと言った。

 「1人でいることを許されるのって気が楽になるものなのね」

 それはいったいどういう意味だったのか。それまで彼女は許されずにいたのかもしれない。

 では誰が許したというのか。

 わからない。

 まあいいんだ。わからなくても。

 なんでもかんでも究明するのは趣味じゃない。

 1人で歩く帰り道。

 わたしも少しは大人になったのかもしれない。

 そろそろ夏がやって来そうだ。

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