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はればれ  作者: 水谷なっぱ
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興味

 最初はただ目に付いただけだった。しかしてそれは徐々に広がる染みのようにわたしの心の中で違和感として明確さを増していく。

 なにかおかしい。

 いつもと違う。

 あれは、なんでだっけ。


 菱形中学校2年B組の教室にて、わたしは彼女に声をかけた。

 「ねえ夜空さん」

 「なに皐月さん」

 夜空さんは無表情でこちらを見上げる。特に感慨もなく感想もない。たぶん授業かなにかの話だと思っているのだろう。お弁当を開く夜空さんの手を一瞥してから彼女の顔に視線を戻す。

 「お昼、一緒にいい?」

 「いいけど」

 本当に、心底どうでもいいように夜空さんは言った。それで言いたいことは終わりかと、彼女はお弁当を開き俯く。綺麗に切りそろえられたボブヘアがさらりと夜空さんの顔に影を作った。わたしもお弁当を取ってきて夜空さんの正面に座る。母が作ったお弁当は今日もおいしくて、頷いてしまう。わたしが作ってもこうはならないのだ。

 でも今は聞きたいことがある。

 「夜空さんなんで1人でお弁当食べてるの?」

 「食事って極めて個人的行為だと思わない?」

 「そうじゃなくて。今まで友達と食べてたじゃん。なんでやめたのかなって」

 夜空さんは手を止めてちょっと遠くを見てからぼそっと答えた。

 「ハブられたから」

 「なんで?」

 「皐月さんて見かけ通りにずけずけくるのね」

 「ごめん」

 そこで自分の失態と周囲の温度に気がつく。

 教室内はしんと静まり返り、皆一様にわたしたちから目を背けている。クラス内カースト上位のグループからは忍び笑いが漏れていて腹が立った。

 それ以上に余計なことを言わせた自分と、夜空さんを不快にさせた自分に腹が立った。

 「ごめん夜空さん」

 「いいのよ別に」

 「わたし無神経で」

 「そうみたいね」

 夜空さんはなんでもないように箸を進める。わたしも仕方なくお弁当を食べる。食べ終えたあともその場から離れずにいたら、夜空さんは読書を始めた。

 マイペースなんだろうな。

 読んでいる本のタイトルはわからない。

 なにか言うべきか。

 邪魔しちゃ悪いかな。

 結局わたしはスマホをいじってる。

 聞きたいことは聞けたはずなのに、もやもやだけが残った。

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