休息
「嫌だ!今日は司くんと買い物に行くもん!」
「昨日倒れたんだから今日は大人しく寝てろ!」
「もう平気だよ!」
「それでも休め!」
今、僕は美里の部屋で口論している。……えっと、この我が儘娘は昨日倒れたのにあろうことか、今日買い物に行くとほざいてます。隣にいた、美里の母親は僕たちの様子に苦笑を漏らすしかないみたい。お母さん、もう出かけないといけないのに、美里はそれでも頑として言うことを聞いてくれない。
「それじゃあ、司くん、美里のこと、頼んだね」
「ええ、絶っ対っに行かせませんから」
「お母さん!司くんがいじめる!」
「……ほどほどにね、司くん」
それから、美里の母親は苦笑しながら仕事に出かけた。美里の母親は、小説のベストセラー作家で、僕もいくつかの作品を読んだことがある。父親はいないみたいで、女手ひとつで美里を育ててきたらしい。
暴れる、美里を抑えようと、僕は美里の母親の話題を振った。
「そういえばお母さん、また作品出すって?」
「え、うん。今回は自信作だって」
ようやく、大人しくなってくれた、少し安堵。
「美里のお母さん、すごいよね、よく雑誌にも載ってるし、この前も賞、貰ってたし」
「おかげで、家は裕福になったし」
「そうなの?」
小説の作家の収入はよく分からないけど……
「うん、小説だけじゃなく、ドラマとか映画とかの印税とかバンバン入ってくるみたい」
「そうなんだ……」
「そんなお母さんが羨ましくて、一度、小説を書いたんだけど……」
「けど……」
「自分の才能のなさに絶望しちゃったよ……」
美里が書いた小説ってどんなんだろう。興味が出てきた。
「どんな小説書いたの?」
「教えない」
「えぇ、見せてよ」
僕は、机の上にあるパソコンを起動した。
「ちょっと、司くん何してるの!?」
「何って、小説を見ようと……」
「絶対見せない!」
「って、ちょっと!殴るなって!痛いだろ!」
「司くんのばか!勝手に見ようとするなんてひどいよ!」
美里は、本気で殴って書いた小説を見せようとしてくれなかった。痛ぇ。ちょっとくらい見せてくれたっていいじゃないか。
今日はぐだぐだして一日終わりそう……。美里が家から出れないから仕方ないか。