三人の友達
『茜色』を見てくださってありがとうございます!この話は章ごとに主人公、時間軸が異なっています。もちろん、『茜色』自体の主人公は司です。今日はちょっと、小説の構成を変えました。
美里と再会した、次の日。僕は、美里と、どう接すればいいか分からなかった。
美里の心底からの叫び。それを意味するところは何なのか。
そう、考えていると、後ろから巧が声をかけてきた。
「うっす。司、元気ないな」
「そう?いつもどうりだよ」
「いや、なんか落ち込んでるように見えたからさ。ま、言いたいことがあるなら、いつでも聞くぜ」
「ありがとう。巧」
一瞬、巧にも相談しようかと思ったが、その考えはすぐに、打ち消した。巧にまで、巻き込みたくない、というのもあるが、僕自身、美里を助けたい、という気持ちが強かったからである。といっても、どうすればいいのか、全く思いつかないところが、情けないのだが。
それから、如月高校行きのバスに乗り、巧と他愛無い会話をしていた。その間、美里のことが、頭から離れなかった。
「しかし、学校まで一時間かかるのは、だるいなー」
「僕らはまだ、早い方だよ。というか、中学の時が早すぎたんだよ。徒歩五分はふつうない」
「それと比べたら早い、ってことだよ」
僕たち二人が教室に着くと、及川さんがやってきた。
「おはよ、司、巧」
「おはよう、及川さん」
「うっす」
「巧、朝の挨拶は『おはよう』だよ」
「どうでもいいだろ」
巧が野暮ったく答えると、及川さん巧の足にローキックをかました。
「ってーな!」
「あんたが、ちゃんと挨拶しないからでしょ」
巧と及川さんたちが痴話ゲンカをしている間、僕は美里を探した。たしか僕の後ろの席だから……
――いた
美里は、丁度今来たのであろうか、鞄から教科書を取り出し、机の中に入れている。
痴話ゲンカが終わった二人は僕に話しかけてきた。
「司、誰見てんだ……ってあれもしかして美里?」
「誰?美里って」
「俺と司の幼馴染だよ」
そう言った巧は美里の方へ向かって歩き出した。僕が「ちょっと……」と言ったのも気付かず、巧は美里に話しかけた。
「よ、久しぶり。美里」
「あ、巧くんだ。おひさだね」
「小学校の時以来だな。司もここに来てるの知ってる?」
「うん。司くんとは、昨日会ったからね」
美里は僕の方に向かった。昨日のこともあって、どうすればいいか分からなかった。すると予想外なことに、
「司くんおはよー」
「あ……えと」
「ほら、ちゃんと挨拶する」
「お、おはよう」
「うん、よくできました♪」
満足そうに、美里は僕に笑いかけてきた。昨日とは、まるで別人のように、今日はニコニコしている。
「巧くん、この人は?」
美里は、及川さんの方に指を差した。
「彼女は及川真美。俺の彼女だ」
「はじめまして。及川真美です」
「こちらこそ、霧咲美里です」
美里は不敵の笑み、というやつを巧に向けた。
「なるほど……巧くんが好きそうな人ですね」
「分かるのか」
「それはもう、見れば分かります」
「そういうものか?そういや、美里は彼氏とか作らないのか?」
「私は……そういうのは……まだ……」
美里は、モジモジしながら「いない」という答えを示した。及川さんも、そう思ったの、美里にちゃちゃを入れてきた。
「なかなかピュアですなー。そこに、いる司はどうかな?いまならお買い得だよ?」
安売りするな。
「べ、別に司くんのことなんか何とも思ってないんだからね!」
ツンデレが返ってきた。もしかして、フラグ立った?
「この反応は脈アリと思っていいのか?」
「いや、逆にあしらわれていると見るべきでしょ」
「司だもんなー」
「そうだよねー」
巧と及川さんはどうでもいい会話をしてる間、僕は美里に話しかけた。
「美里、あの、昨日のことは……」
「今日、何するんだっけ?」
「あ……確かオリエンテーションだけで、午前中で終わりかな」
「そう」
美里はそう言って、僕にウィンクを送った。不覚にも、やられてしまったじゃないか。それよりも、美里は昨日のことはなかったことにするつもりらしい。美里を助けたいと言っていてなんだが、あんなシリアスな出来事はこちらからも願い下げたい。
午前中のオリエンテーションが終わった後、僕たち四人は、カラオケで夜まで歌った。