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フランチェスコとその友人たち  作者: はまゆう


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第五話 森で返事をしなかった男

晩秋の森には、湿った土と落葉の匂いが満ちていた。


夏の賑わいはとうに過ぎ、木々はその葉をほとんど落としていた。残された枝だけが、灰色の空に向かって細く伸びている。ところどころに残る黄葉が、かすかな陽の光を受けてぼんやりと輝いていた。地面は茶色く、厚く積もった落ち葉が足元で柔らかく沈み込む。それを踏みしめるたびに、かさかさと小さな音が立った。


小さな鳥の声が遠くで鳴き、風が枝を揺らすたび、薄い陽の光がまだらに地面へ落ちる。その光の斑点は、風とともにゆっくりと動き、まるで生きているかのようだった。森の奥からは小川のせせらぎが聞こえる。かすかで、しかし絶えることのないその音は、むしろ森の静けさを一層深めていた。


フランチェスコは、その森道をゆっくりと歩いていた。


かつて軽やかだった足取りは、今では少し慎重になっている。杖をついているわけではなかったが、その歩みには用心深さがあった。時折、足元を確かめるように杖で地面をつついた。盲目の老人の仕草——いや、彼はまだ完全に見えなくなったわけではないが、近頃、その目は急速に悪くなっていた。


近頃、彼の目は急速に悪くなっていた。長年の断食と粗末な暮らし、夜を徹して続けた祈り、そして絶え間ない涙のためだった。多くの夜、彼は自分の小さな庵で、声をあげて泣いた。それは悲しみの涙ではなかった。神への愛のあまりに、あまりに大きな喜びのあまり、涙が止まらなかったのだ。しかしその涙が、彼の視力を少しずつ奪っていった。


兄弟たちは心配していた。レオは何度も何度も言った。ジャイルズもそうだった。ルフィーノも。マッセオも。彼らはフランチェスコの身を案じ、どうか無理をしないでくださいと懇願した。


「父よ、どうか少し休まれてください」


そう言われても、フランチェスコは微笑むだけだった。彼は自分の弱さを認めながらも、それを嘆くことはなかった。むしろ感謝していた——この目が、かつて見た美しいものすべてを覚えていることに。空の青さ。野の花々。兄弟たちの顔。そして——十字架の光を。


「休みなら、天国でいくらでもできる」


そんなふうに言って、彼はまた歩き出した。疲れを知らぬわけではない。むしろ、いつも疲れていた。しかし彼は知っていた——この地上で過ごせる時間は短い。その短い時間を、ただ寝て過ごすわけにはいかない。動けるうちに動かねばならない。愛せるうちに愛さねばならない。


---


その日、彼は修道兄弟ベルナルドに会うため、滞在処を離れていた。


ベルナルドは数日前から、この森で隠遁祈願をしていた。誰にも邪魔されず、ただ神とだけ向き合う時間。それはフランチェスコ自身もしばしば求めるものだった。だから彼は、ベルナルドの選択をよく理解していた。


しかし——どうしても話したいことがあった。


神について話したかったのである。


それは急ぎの用件ではなかった。緊急の何かがあるわけでもなかった。ただ——ベルナルドの声を聞きたかった。彼の祈りに触れたかった。彼の沈黙の中にある深さに、もう一度浸かりたかった。


ベルナルドは、兄弟たちの中でも特別な人間だった。静かな男だったが、その沈黙の奥には、深い泉のような祈りがあった。彼は饒舌ではなかった。決して多くを語らなかった。しかし彼が口を開く時、その言葉はいつも、魂の最も深い場所から湧き上がってくるものだった。


神について語る時、彼の言葉は飾りがない。難しい神学用語は使わない。比喩も誇張もない。ただ——「神は愛です」「神は善いお方です」「私たちは何も持たなくてよい」——それだけの、簡素な言葉。けれど、その簡素な言葉の中に、燃えるような真実が宿っていた。聞く者の胸を打つ力があった。なぜならそれは、頭で考えた言葉ではなく、生きてきた言葉だったからだ。


フランチェスコは、それを誰より知っていた。


だから時折、無性に彼と話したくなるのだった。ベルナルドと話す時、フランチェスコはいつも新たな気づきを得た。自分の見えていなかった何かを、彼は教えてくれた。言葉ではなく、その存在そのもので。


---


森の奥へ進むと、同行していた兄弟が小声で言った。


「ベルナルド兄弟は、あちらで祈っておられます」


指さす方を見ると、木々の隙間の向こうに、ひとり跪く影があった。落葉の積もった地面に、一人の男が深く膝をついている。両腕は組まれ、頭はわずかに垂れている。その姿勢は、すでに長い時間保たれているようだった。


ベルナルドだった。


両手を胸の前で重ね、微動だにしていない。まるで彫刻のように。しかし彫刻と違うのは——そこに確かに命が宿っていることだ。呼吸は浅く、しかし規則的。全身が祈りに集中している。外界のすべてが、彼にとってはもう存在していないかのようだった。


まるで森そのものが祈っているような静けさだった。風も、木々も、地面も、空も——すべてがベルナルドと共に祈っているかのようだった。その静けさは重く、しかし心地よい。フランチェスコはその静けさの中に足を踏み入れることを、一瞬ためらった。


フランチェスコは、少し嬉しそうに笑った。ベルナルドの祈りの深さを感じ取って。彼がどれほど真剣に神と向き合っているかを知って。それは彼自身の喜びでもあった——自分の兄弟が、これほど熱心に祈っているということが。


「ベルナルド」


呼びかける。声は森の中で意外に大きく響いた。


「来ておくれ。この盲目の男と、少し話をしておくれ」


返事はなかった。


風が吹き、枝が揺れた。落ち葉が数枚、くるくると舞い上がり、また地面に落ちた。遠くで小鳥の声が聞こえたが、それだけだった。


ベルナルドは動かない。いや——微動だにしない。肩も、首も、指先も。彼の祈りは、もはや個人の行為を超えていた。森そのもの、いや世界そのものが彼の中で祈っていた。彼の意識はこの地上にはなかった。


フランチェスコは少し近づき、もう一度呼んだ。今度は少し大きな声で。


「ベルナルド」


やはり返事はない。


フランチェスコの足元で、枯れ葉がかさりと鳴った。彼はその音に少し驚いたように足を止めた。祈りに集中しているのだろうか、と彼は思った。いや——それだけではない。ベルナルドは今、神の深みに沈んでいる。自分の声が届かないほど深く。それはフランチェスコ自身も経験のあることだった。祈りが深まると、この世界の音は遠ざかる。呼びかけさえも、遠い彼方の出来事のように感じられる。


それでも、三度目には少し寂しそうな声になった。


「兄弟よ」


その声には、かすかな傷つきが混じっていた。フランチェスコ自身も気づいていない、小さなわがまま。どうして返事をしてくれないのか。どうして来てくれないのか。自分はこうして来ているのに——


沈黙。


森は静かだった。


遠くで鳥が羽ばたく音だけがした。それは早く、慌ただしい音だった。何かに驚いて飛び立ったのだろうか。フランチェスコはその音を聞きながら、自分の胸に湧き上がった感情に気づかないふりをした。


ベルナルドは石像のように跪いたまま、まったく動かなかった。風が彼の衣の裾を揺らす。落葉が一枚、彼の肩に落ちた。それでも彼は動かない。彼のそこにはいなかった。彼の魂は、すでに別の場所へ——神の御許へ——旅立っていた。


同行していた兄弟が、不安そうにフランチェスコを見た。その視線は——大丈夫でしょうか、ベルナルド兄弟は。フランチェスコ様を無視しているのではないでしょうか。そう問いかけているようだった。


フランチェスコは小さく笑い、


「邪魔をしてはいけないな」


と言った。


けれど、その笑顔はどこか曇っていた。唇は笑っている。目も笑っている。しかしその奥に——かすかな影が落ちていた。自分では認めたくなかった。しかし確かに、彼の心のどこかに、小さな棘が刺さっていた。


兄弟に無視された。


呼んでも応えてもらえなかった。


それは幼い頃の記憶を呼び覚ましたのかもしれない。父親に無視された日々。かつての友人たちから背を向けられた日々。石を投げられた日々。そのすべてが、一瞬、彼の心をよぎった。


しかしフランチェスコはそれを表に出さなかった。ただ静かに、森を離れた。


---


森を離れてしばらく歩いたあと、彼は急に立ち止まった。


同行の兄弟が驚いて足を止める。フランチェスコの顔には、何か——苦しげな表情が浮かんでいた。自分の内側で何かが戦っている。言葉にできない何かが、彼の胸を締め付けている。


「ここで待っていておくれ」


同行の兄弟にそう言い残し、ひとり森の奥へ入っていく。


杖も持たずに。手引きもなく。盲目に近いその目で、それでも彼は確かな足取りで進んでいく。何かに導かれるように。


そこには、小さな空き地があった。周囲を背の高い樫の木々に囲まれた、円形の空間。天井はなく、空が直接見える。その日の空は曇っていた。低く垂れ込めた灰色の雲が、時折風に動かされて、一瞬だけ太陽を覗かせた。


落葉が積もり、冷たい土の匂いがする。腐葉土の香り。雨の後の土の湿った匂い。晩秋の、すべてが終わりへと向かう季節の香り。それはどこか物悲しく、しかし同時に——澄んでいた。


フランチェスコは、その場にゆっくり膝をついた。左膝を先に、次に右膝。そして両手を組んだ。組んだ手を額に当てる。その姿勢は彼にとって最も自然なものだった。祈りの姿勢。


しかし、その祈りはいつもとは違っていた。


彼の心は騒いでいた。平穏ではなかった。自分でも制御できない何かが、彼の中で渦を巻いていた。


そして祈った。


「主よ」


その声には、深い悲しみが混じっていた。それは責める声ではなかった。ただ——純粋に苦しんでいる声だった。


「私は何か、ベルナルドの心を傷つけてしまったのでしょうか」


自分の言葉に、自分で驚いた。傷つけた? 自分が? ベルナルドを? そんなはずはない。自分はただ呼んだだけだ。話をしたかっただけだ。


しかし——なぜベルナルドは返事をしなかったのか。なぜ来てくれなかったのか。自分は何か間違ったことをしたのか。何か——怒らせるようなことを。


沈黙。


風だけが木々を渡っていく。空き地の落ち葉がさわさわと鳴る。それ以外には何も聞こえない。天からの答えはない。ただ虚無だけがそこにあるかのようだった。


フランチェスコは目を閉じた。


自分は愛されていないのではないか。


そんな幼い不安が、一瞬、心の奥をよぎっていた。


それがとんでもないことだと分かっている。ベルナルドは愛している。自分もベルナルドを愛している。愛し合っている。それは確かなことだ。


それなのに——なぜ、こんな思いが湧いてくるのか。


自分は誰よりも神の愛を知っているはずなのに。それでも——人間の愛を求めてしまう。兄弟の愛を求めてしまう。それが、神への愛の妨げになることを知りながら。


その時だった。


静かな、しかし抗いようのない声が、彼の内側に響いた。


『なぜ、お前は心を乱すのか』


その声には怒りはなかった。ただ——優しい驚きがあった。まるで、そんなことで苦しむ必要はないと諭すかのように。


フランチェスコは顔を上げた。目を開けた。しかし見えるのは灰色の空と、風に揺れる枝だけだった。


『ベルナルドは、その時、私と共にいた』


声は続いた。はっきりと。確かに。


森の空気が変わった。


重かった空気が、突然軽くなった。張り詰めていた緊張が解けた。まるで氷が溶けるように。あるいは霧が晴れるように。


『人は、神と結ばれている時、一人の被造物のために、そこを離れるべきであろうか』


その問いは、フランチェスコの心に深く刺さった。


神と結ばれている。最も深い交わりの中で。創造主との最も親密な対話の中で。その時——友が呼んだとしても。兄弟が呼んだとしても。その交わりを断ち切るべきだろうか。


人間を愛するあまりに、神を後回しにすることがある。それはよくあることだ。しかし——それは本当に愛なのか。神を後回しにすることが、本当にその人のためになるのか。


フランチェスコの胸が強く痛んだ。それは神の叱責の痛みではなかった。自分の愚かさに対する痛みだった。


『彼は、お前の声を聞いていなかった。お前を拒んだのではない』


その言葉で、すべてが腑に落ちた。


聞いていなかったのだ。


拒んだのではなかった。無視したのではなかった。単に——聞こえなかっただけ。彼は深い祈りの中にいて、自分の声は彼の耳に届いていなかった。それだけのことだった。


それなのに自分は——拒まれたと思った。無視されたと思った。愛されていないのではないかと思った。


そこで初めて、彼は気づいた。


自分は傷ついていたのだ、と。


愛する兄弟が来てくれなかったことを、心のどこかで責めていたのだ、と。


たとえそれが無意識であっても。たとえ自分でも認めたくないことであっても。


その瞬間、フランチェスコは深い羞恥に包まれた。


「主よ……」


彼は顔を伏せた。両手で顔を覆った。涙が指の間からこぼれた。


「私はなんと傲慢だったのでしょう」


自分は特別な存在だと思っていた。自分だけは違うと思っていた。ベルナルドは自分に従っている。自分を敬っている。だから——自分の声には必ず応えるべきだ。そんな暗黙の前提があった。


兄弟を愛しているつもりだった。けれど実際には、自分の寂しさを満たしてほしかっただけなのだ。自分が愛されていることを確認したかっただけなのだ。それは愛ではない。それは——依存だ。わがままだ。


彼は長い間、その場で泣き続けた。声を立てずに。ただ、涙が止まらなかった。それは恥の涙であり、同時に感謝の涙でもあった——神が自分の誤りを指摘してくださったことへの感謝。


---


フランチェスコは立ち上がった。


膝が少し震えていたが、それは寒さのせいだけではなかった。涙をぬぐい、衣の埃を払った。そして、ほとんど駆けるような足取りで森へ戻っていった。


今すぐベルナルドに謝らなければならないと思った。


たとえ相手が気づいていなくても。たとえ相手を傷つけていなくても。自分の心の中にあった誤った思い——それだけでも、謝らなければならない。


神の前で清くありたいと願うなら、人間の前でも清くあらねばならない。目に見えない思いであっても、それは心の中で腐り、やがては行動となって現れる。だから——小さいうちに。早いうちに。根を張る前に刈り取らねばならない。


木々の間を抜けると、ベルナルドがこちらを見ていた。


どうやら祈りから戻ったばかりらしかった。まだ少しうつろな、この世ならざる者のような目をしていた。長い祈りの後によくあることだ。魂がまだ天に残っている。地上に戻ってくるのに、少し時間がかかる。


しかし、フランチェスコの姿を見るなり、彼はすぐにそのぼんやりした表情を消した。そして駆け寄り、その足元へ跪いた。


「父よ」


その声には驚きと心配が混ざっていた。なぜフランチェスコがこんなに慌てているのか。なぜ彼の目は赤いのか。何か——良くないことがあったのか。


しかしフランチェスコは慌てて彼を抱き起こした。自分が跪くべきなのに、相手が自分に跪くなんて。そんなことは絶対に許せない。


「やめておくれ、ベルナルド」


その声は震えていた。


「悪かったのは、私なのだ」


ベルナルドは驚いたように目を見開いた。


フランチェスコは、その場で、自分の心に浮かんだ疑いをすべて打ち明けた。隠さずに。飾らずに。三度呼んだこと。返事がなく、悲しくなったこと。無視されたと思ったこと。そして、その心を神に叱責されたこと。


話しながら、フランチェスコの声は何度も詰まった。それは恥ずかしさからだった。自分がどれほど小さな人間であるかを、改めて思い知らされた。神の聖人と呼ばれる者が、たったそれだけのことで傷つき、疑い、責める——その滑稽さ。


語り終えた時、森には静かな風の音だけが流れていた。


もう鳥の声は聞こえない。夕暮れが近づいているのだろう。光が少しずつ弱まり、木々の影が濃くなっている。


ベルナルドはしばらく黙っていた。驚きと困惑と、そして——何か、深い悲しみに似たものが彼の表情に浮かんでいた。自分が、無意識のうちに、父を傷つけてしまった。それが悲しい。自分は決してそんなつもりはなかったのに。


やがて彼は、深く頭を垂れた。


「父よ」


その声は、とても静かだった。


「私は、本当に何も聞こえていなかったのです」


それは言い訳ではなかった。単なる事実の報告だった。しかしその事実が、フランチェスコをさらに苦しめた。


フランチェスコは苦しそうに笑った。


「わかっている。だから私は、なおさら恥ずかしいのだ」


わかっている。わかっているからこそ、なおさらだ。相手に非がないと分かっているからこそ、自分の醜さが際立つ。もしベルナルドが本当に無視していたのなら、まだ言い訳も立つ。しかしそうではなかった。すべては自分の内側の問題だった。自分の弱さ。自分のわがまま。自分の傲慢。


---


その時、夕暮れの光が森へ差し込み、二人の影を長く地面へ落としていた。


西日が木々の間を斜めに射し込み、落葉を金色に染める。冷たい光だったが、どこか温かさも感じさせる。秋の夕暮れの、切ないほどの美しさ。


二人はしばらく黙って立っていた。


何も言う必要がなかった。すべてはもう分かり合っていた。ベルナルドはフランチェスコの弱さを知った。フランチェスコは自分の弱さを知った。そして——それでもなお、お互いを愛していることを知った。


完璧な愛ではない。傷つき、疑い、時に嫉妬さえする。しかしそれでも愛は愛だった。不完全だからこそ、人間の愛は美しいのかもしれない。神の愛とは違う。神の愛は完全で、永遠で、変わらない。しかし人間の愛は揺れる。だからこそ——大切にしなければならない。互いに支え合い、許し合い、育てていかなければならない。


風が吹いた。落ち葉が数枚、舞い上がった。その一枚がフランチェスコの肩に止まり、すぐにまた風に運ばれて去っていった。


フランチェスコは小さく笑った。


「さあ、戻ろう」


ベルナルドが頷いた。


二人は並んで歩き出した。行きはフランチェスコが先で、ベルナルドが後にいた。しかし帰りは並んで。同じ歩幅で。同じリズムで。


影は長く伸び、やがて闇に飲み込まれた。しかし二人は暗闇を怖がらなかった。なぜなら——その闇の中にも、神はおられるからだ。


---


神に近づこうとする者ほど、時に、人の心を見失う。


深く祈れば祈るほど、この地上の細かな機微が遠ざかる。それは避けられないことかもしれない。しかしだからこそ——気をつけなければならない。高いところに上れば上るほど、足元を見失いやすくなる。


そしてまた、人を愛しているからこそ、神に嫉妬してしまうことがある。


愛すれば愛するほど、その人の全てを自分に向けてほしくなる。それは自然な感情だ。しかし時に、その感情は——神への愛と衝突する。


フランチェスコは、そのことを誰より恐れていた。


だから彼は、深く愛する者の前では、いつも自分を裁こうとするのだった。自分は間違っていないか。自分は相手を自分のために利用していないか。自分は——神よりも人を愛しすぎていないか。


それは苦しい営みだった。しかし彼はそれをやめなかった。なぜなら——それが愛の誠実さだと知っていたから。愛するとは、自分を常に問い直すことだと知っていたから。


その夜、フランチェスコは長く祈った。いつもより長く。ベルナルドへの愛について。神への愛について。そして——その二つが、決して相反するものではないことについて。


森は静かだった。


星が一つ、空に輝いていた。


その星はとても小さかった。しかし確かにそこにあった。まるで——神が彼らを見守っているかのように。


---


*この話は、聖フランチェスコの人間らしさを示すものとして、「小さき花」の中でも特に愛されている章の一つである。聖人といえども、私たちと同じように悩み、疑い、傷つく。しかし聖人が聖人であるのは、悩みや疑いや傷つきがないからではない。それらを乗り越える方法を知っているからでもない。ただ——そのすべてを、神の前に差し出す勇気を持っているからだ。フランチェスコは自分の弱さを恥じなかった。むしろ、それを神に打ち明けることで、より深い謙遜へと導かれた。これは私たち全てへの励ましである。たとえ心が乱れようとも。たとえ誤った思いにとらわれようとも。それらを神の前に持ち出すならば、神は必ず答えを与えてくださる——時には、予期しない形で。*


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