勇者代行サービス
いつものように森でうたた寝をしていたら、何かが私の頭をコツンコツンと小突いてきて目を覚ました。
額に雀がちょこんと乗っている。
その雀の足には小さな紙切れがくくりつけられていて、外すと雀はどこかへと飛んでいった。
紙にはこう書かれている。
『勇者代行サービスを利用したいのですが』
私はその文章を読んで紙を開いた。
『この度、冒険の途中で負傷してしまいまして、私の代わりに魔王軍幹部を討ち取って頂きたいです。依頼の報酬はいりませんが、名声はほしいです。ですので、上手い具合に顔を隠して倒して下さい。報酬は後ほど、雀にて、置いておく場所をお伝え致します』
追記の部分に指定された場所が書かれている。
文章を読み終えたら、俺はさっさとその紙を燃やして立ち上がった。
「さて……行くか」
私は覆面を着けて爆速馬に跨がり、その魔王軍幹部が住処にしている城へと向かった。
はあ……。
世の中の勇者という肩書きを持っている人達は何をしているんだか……。こんな元勇者の老いぼれに助けを求めるとは……。まあ、私も魔王を倒すことはできずに数十年前に勇者を引退して、年金だけでは暮らせなかったから魔王の配下を倒す協力を匿名でたまにしているのだが……。数多の戦いによって勇者が離脱し、誰でも勇者になれる時代になってからの事、自分で不可能なときはこういう代行に頼るという甘い考えがはびこってしまっている。それを、私は不安に思っていた。
事実として、代行サービスという形で私がこの仕事を始めたのも、軽い冗談のつもりだったのだが、一度引き受けたら、どこでその情報を仕入れてきたのか、私の所にこうやってたまに手紙が届くようになってしまった。
一度の仕事の額が額なので、もうする必要はないのだが……。まあ、困っている勇者を放っておけないという理由で続けてしまっている。
門の前に到着した直後、帰還したばかりの魔王幹部の刀の一振りにより、頬に切り傷を負った。
「ワシもなまったのう」
私は後ろに回避してから軽くステップを踏み、右足に力を込めて敵に近づき、一刀両断した。その後、周りにいた手下も全滅させた。
魔王軍幹部はホロホロホロと形が崩れていき、その消えていく姿を私は見ていた。
「お前も、ワシじゃなくて本物の勇者に倒されたかったろうに……」
森に戻って依頼達成の手紙を書き、そこに『報酬はいらん。だから、その金で装備を調えてしっかり精進しろ』と書いた。私のもう一つの役割は、堕落した勇者の更生でもあると思っている。
名声などただの結果だ。
賢明に敵と戦うその姿が……。
一番かっこいいんじゃ。




