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アカシックレコード  作者: 八代 秀一
創世編

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6/19

1-6:最初の失敗

 別に彼も悪意があったわけではないのだろう。

それは少年期に誰もが経験したであろう、子供じみた思いつきだった。

そう、無邪気ゆえに救いがなく、残忍で、無慈悲な遊び心――。



「なぁ、誰が創造した生物が一番強いか勝負しようぜ」


「強いって、どういうことよ」


「だから、この世界では弱い奴が強い奴の餌になるのがルールなんだろ。だったら、一番最後まで生き残った生物が一番強いってことになるだろ。そいつで勝負をしようと言ってるんだよ」


「馬鹿ね、みんなで認識したものしか作り出せないんだから、そんなの無理に決まってるじゃない。現に今だって、どの種類の生き物が何を餌にするかは私たちが決めてるんだから」


「ああ、だから新たにこういう生物の繁殖にこういう条件を追加するんだよ。各々、環境に適応して進化しろってな」


「進化? 進化とは、何じゃ?」


「環境に応じて自らの見た目や能力を変化させ、独自性を強めていくってことさ。今のままだとこの世界も、生物も、俺たちの想像を超えることはない。想定の範囲内の出来事しか起こらない世界なんて退屈だろ。だから、敢えて不確定要素を追加してやろってのさ。でもって、誰が創造した生き物が最後まで生き残るかを競う。どうだ、面白そうだろ?」


「確かにワクワクするね」


「えー、あたしはあまり気乗りしないわ」


「そうねぇ、私も生き物を使って遊ぶというのは、ちょっと……」


「チッ、ノリが悪い奴らだな。おい、おまえはどうなんだよ?」


「……」


「はいはい、相変わらずのだんまりね」


「まぁまぁ、何にしても過半数の認識が得られれば条件クリアなわけだから、試しにやるだけやってみようよ」


「だな」



***************

アカシックレコード:認識が過半数を超えた為、生物は環境に応じて進化することが可能になりました。

アカシックレコード:これにより同一種の生物に個体差が発生し、遺伝の法則が適用されます。

アカシックレコード:尚、進化は突然変異と自然選択に基づくものとし、必ずしも進歩、向上を意味しないものとします。

***************



「なんかいろいろアカシックレコードに記録されたみたいだけど、上手くいったのかな?」


「さぁのう。繁殖の過程で環境に適した形、大きさ、性質を変えていくわけじゃろう。結果を検証するにしても、それになりに時間が掛かると思うがのう」


「そうだね。じゃ、今のうちにどの種類が一番最後まで生き残るか決めちゃおうよ」


「だったら、俺はこの牙が生えた、如何にも強そうな奴だな」


「あ、ずるい。だったら、僕はこっちの鱗に包まれた、爬虫類だっけ? こいつにする」


「ほう。それなら儂はこの硬い身体を持った昆虫というのにしようかのう」


「おいおい、そんな小さい奴らが生き残れるわけないだろ」


「わからんじゃろう。戦いは何も個人戦と決まったわけじゃないんじゃ。数で勝れば小さくても巨大な敵を打ち破ることもあろうって」


「なるほどね。じゃ、あたしはこの海の中を泳いでる魚って子にしようかな」


「はぁ!? おまえは参加しないんじゃなかったのかよ」


「いいじゃない。あまり気乗りはしないけど、仲間はずれにされるのは嫌なの」


「あら、そういうことなら、私も一応参加しておこうかしら」


「へいへい、もう好きにしてくれ」



 それから何十億年という歳月が流れ、生物は各々が望む姿形へと進化していった。

それは同時に生き残りを賭けた生存競争の火蓋であり、弱肉強食の時代の幕開けを意味していたのだった。



「見てよ、この大きな体。単体での勝負なら絶対に僕の恐竜が一番だね」


「馬鹿言え。おまえのは気温の変化に滅法弱いじゃねぇか。その点、俺のは体が毛に覆われているから天気や気候に左右されることはない。まぁ、その分、体が小さいってのが難点だけどな」


「じゃったら、儂の昆虫が一番じゃろうて。数と繁殖力ではピカイチじゃ。おまけに悪食で何でも残さず喰らい尽しよる」


「それを言ったら、あたしの魚たちが最強よ。実際、水の中なら無敵じゃない」


「あら、みんな楽しそうね。ところで私の選んだ子たちは、どこへ行っちゃったのかしら? ここ数百年ほど姿を見かけないんだけど……」



 暢気に高みの見物を決め込んでいられたのは、最初のうちだけだった。

生存競争が苛烈さを増すにつれ、世界は血で血を洗う阿鼻叫喚の地獄絵図と化していく。

それはもう、目を覆いたくなるほどに残忍な殺し合いへと――。



***************

アカシックレコード:オピペウターが絶滅しました。

アカシックレコード:エレトプテルスが絶滅しました。

アカシックレコード:プリオノスクスが絶滅しました。

アカシックレコード:メソサウルスが絶滅しました。

アカシックレコード:ヘリコプリオンが絶滅しました。

***************



***************

アカシックレコード:アウストラロバルバルスが絶滅しました。

アカシックレコード:ウェイゲルティサウルスが絶滅しました。

アカシックレコード:モラヴァミラクリスが絶滅しました。

アカシックレコード:メガネウラが絶滅しました。

アカシックレコード:プルモノスコルピウスが絶滅しました。

***************



「ちょっと待って。なんか様子がおかしくない?」


「そうじゃな。捕食にしては食い残しが多すぎる。これではまるで……」


「……殺し合いだ」


「ちょっとどうするのよ、これ? あんたが言い出した事でしょ。何とかしなさいよ」


「何だよ、その他人事みたいに物言いは。おまえだって参加したんだから同罪だろ」


「だって、まさかこんな殺し合いになるなんて思わなかったんだもん」


「ほら、今更言い争っていても仕方ないでしょ。いいから早く何とかしましょ。私たちなら、この争いを止めることができるはずよ」


「そうじゃの。儂らにはアカシックレコードがある」


「だからって、この数の生き物をどうやって止めろっていうんだよ。。大体、俺たちは殺し合いをするようには設定していないはずだぜ。命を奪うのは、食事の場合だけのはずだろ。それがどうしてこんなことに……」


「多分だけど、進化したんだと思う」


「進化?」


「うん。自分たちの種族が効率よく生き残り、繁栄する為にほかの種族を排除する。そう長い年月をかけて進化したんだよ、きっと……」


「でも、俺たちはそんなことをアカシックレコードに記録した覚えはないはずだぜ」


「最初の生命を創造した時のことを思い出してみてよ。僕たちは彼らにその為の手段を与えたじゃないか。繁殖という記録の方法を……」


「繁殖? 記録? どういうことだよ。勿体ぶってないで、わかりやすく説明しろって」


「繁殖とは、自分の遺伝子を後世に残す行為だ。有り体に言えば記録の引継ぎ、そして進化とはそこに新たに条件を付け加える為の手段」


「なるほどのう。生物にとっては、遺伝子がアカシックレコードの代わりというわけじゃ」


「うん。みんなそれぞれ自分たちの種族が生き残る為に必要な情報を遺伝子に書き足していった。そしてより生き残る為に特化した遺伝子情報を持つ個体が数を増やし、今の形に進化したんだと思う」


「その結果が、これかよ」


「で、どうすれば止められるのよ?」


「遺伝子はあくまで生物単位の可搬性記憶媒体に過ぎないから、大元のアカシックレコードの記録を書き換えてしまえば何とかなると思うけど、さすがにこの数をひとつずつ書き換えていくのは……」


「……だよな」


「だったら、どうするっていうのよ。まさかこのまま放っておくつもり?」


「みんな、少し落ち着かんか。考えてもみろ。アカシックレコードを書き換えたところで、奴らが進化を止めなければ、それすらも上書きされてしまうじゃろうって。それではイタチごっこじゃ」


「進化そのものをなかったことにはできないですかね?」


「見てみろ、アカシックレコードのログを。このスピードで進化されたのでは、絶えず枝分かれする生物分類すべてを止めるのは難しいじゃろうな」


「とはいえ、このままってわけにもいかないだろ」


「そうよね。あたしもさすがにこの光景は見るに堪えないわ」


「ですね。だとしたら、方法は一つしかないと思います」


「ほう。して、その一つとは?」


「リセットするんですよ、この世界を……」

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