1-3:光と闇
マグマをよって蒸発した水は、大気で冷やされ、雨となって地上に降り注ぎ、やがて大きな海を作った。
一方、水によって冷やされたマグマもまた地殻となって大陸を作り、マグマの上を浮島のごとく流れる大陸は隆起と沈降を繰り返して山や谷を作ったのである。
「それにしても暗いのう。これじゃ、せっかくにいろいろ作っても見えにくくてかなわんわ」
「うーん、最初はこんなことなかったのに、どうして急に暗くなっちゃったんだろう」
「そんなの決まってるじゃない。雨が降って、えっと……マグマだっけ、ドロドロした赤くて熱いやつ」
「うん」
「そのマグマが雨で冷えた固まったら、急に暗くなっちゃったのよ」
「そっか、物質は熱いと明るくて、冷たいと暗くなるのか。じゃ、もう一回地面を熱してみる?」
「それじゃ、せっかく作った山や海が台無しじゃない」
「だったら、どうすればいいんだよ」
「おお、そうじゃ。だったら、代わりにほかの球体を熱くするというのはどうじゃ?」
「なるほど、その球体でこちらの球体を照らして明るくしようってことね」
「それは名案じゃ。早速やってみようじゃないか」
「そうね。創造するのは、最初にマグマを作った時と同じでいいかしら?」
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アカシックレコード:認識が過半数を超えた為、宇宙に新たな惑星が形成されます。
アカシックレコード:光源が生成されたことにより、世界に光と闇の概念が生まれました。
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「おお、これでさっきよりも見やすくなったのう」
「うーん。でも、期待していたほどではないわ。もうちょっと明るくならないかしら?」
「なんでだろう。最初の球体を作ったと時はあんなに明るかったのに」
「距離があるからかもしれなんな」
「そっか。球体が発する光が弱くて、こっちの球体まで届かないんだ。でもどうすればいいんだろう」
「光を強くすればいいってことでしょ。みんなでそう願えばいいじゃない」
「そうだけど、それじゃ願った時だけしか光は強くならないよね」
「じゃ、どうするっていうのよ」
「もっと強い光を発することができる物質を創造すればいいんじゃないのか」
「もっと強い光を発する物質って何よ」
「そんな難しいことは考えんでも良かろうって。わしらはただ、光る物質を頭の中に思い浮かべればいい。そしてその認識が過半数を超えればあとはこの世界が勝手にそれらしい物質を生成してくれるじゃろうて」
「なんか、それってすごく無責任な気がするんだけど」
「別に無責任でも何でも構わないだろ。どうせただの暇つぶしなんだから」
「そうよ。創造するだけなら無料なんだから、とりあえず創造してみればいいのよ。駄目だったらやり直せばいいんだし」
「へいへい」
「それじゃ、みんな、準備は良い? 行くよ」
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アカシックレコード:認識が過半数を超えた為、世界に水素が形成されました。
アカシックレコード:水素が核融合を起こし、光と熱を発すると同時にヘリウムを形成します。
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「うわっ、眩しい!」
「今度は凄いわね。めちゃくちゃ明るくなったじゃない」
「ホントだ! よく見える。これでもっと細部までこだわっていろいろ作れるね」
「でも、これだと反対側は真っ暗なままだろ。どうするんだ?」
「それならこの球体を回転させればいいんじゃない」
「球体を回転?」
「そう。この球体自体が回転すれば、満遍なく光が当たるようになるでしょ」
「なるほどね」
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アカシックレコード:認識が過半数を超えた為、該当の惑星は自転を開始しました。
アカシックレコード:これにより球体に昼と夜の概念が生まれました。
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「うーむ。でも、これだと球体全体に上手いこと熱が伝わらんのう」
「じゃ、ついでに光る球体を中心にぐるぐる回るように設定してみたらどうかな?」
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アカシックレコード:認識が過半数を超えた為、該当の惑星は公転を開始しました。
アカシックレコード:これにより球体に季節の概念が生まれました。
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「うーん、それでもやっぱり球体全体に満遍なく温度を伝えるのは難しいのう」
「アホか。だったら、こっちの光らない球体の回転軸をいくらか傾けてやればいいだろ。そうすりゃ、自転と公転のタイミングによって球体全体に光と熱が伝わるだろうが」
「ああ、なるほど。あんたも、たまにはいいこと言うじゃない」
「たまにはとは何だ、たまにはとは。それよりもほら、創造するならさっさとやっちまおうぜ。チンタラしてんのは性に合わねぇんだ」
「はいはい。わかったわよ」
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アカシックレコード:認識が過半数を超えた為、該当の惑星は自転軸を一定角度だけ傾けます。
アカシックレコード:これにより球体に季節の概念が生まれました。
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こうして名もなき六人の思いつきは、世界に希望の光を生み出したのだった。
しかしまだ、彼らは気づいていない。
光が強ければ強いほどに、闇は深くなるということに……。




