2-5:羊の皮を被った狼
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アカシックレコード:認識が過半数を超えない為、要求は却下されました。
アカシックレコード:認識が過半数を超えない為、要求は却下されました。
アカシックレコード:認識が過半数を超えない為、要求は却下されました。
アカシックレコード:認識が過半数を超えない為、要求は却下されました。
アカシックレコード:認識が過半数を超えない為、要求は却下されました。
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「何だ、あのログは? 誰かアカシックレコードの記録に失敗したのか?」
「わからないわ。あたしが来た時には既にログが残っていたから、昨日の夜にでも誰かが人数不足で却下されたんじゃない。それよりも大変よ。アダムの子供たちが殺されちゃったの」
「はぁ!? 殺された?? それはつまり誰かが意図して殺害したってことか?」
「多分、そうだと思う。じゃなきゃ、十人全員が同じタイミングで死んだりしないでしょ」
「十人全員? ってことは、何だ。殺されたのは、赤ん坊たちなのか……」
「うん。僕が朝来た時には、既に騒ぎになってるみたいだったよ」
「で、死因は何なんだ?」
「彼らの言葉がわからないから何とも言えないけど、ぱっと見、刺殺ではなさそうだった。死体が見つかった横穴周辺に血痕の類は見つかっていないみたいだし、遺体に目立った外傷もなさそうだから殴殺や撲殺の可能性も低いと思う」
「犯行現場は子供たちをいつも寝かせている横穴ってことか。それで犯行時間は?」
「そのことなんじゃが……」
「どうしたのよ、改まって?」
「それがのう。昨日の夜、リリスが革袋を持って子供たちの横穴に入っていくのを偶然見てしもうたんじゃ」
「リリス!? あのアバズレがガキどもを殺したってことか」
「それがのう……。暗くてようわからんかったんじゃ。子供たちに何かしていたのは間違いないんじゃが……」
「怪しいな。だが、仮にリリスが犯人だったとして動機は何だ? なぜ子供たちを殺す必要がある?」
「アダムへの腹いせとか?」
「だったら、もっと早い段階で行動に移すんじゃないか。それにアダムに恨みがあるなら、普通はアダム自身か、アダムが産んだ子供を狙うだろ。それを今頃になって、ほかの人間が産んだ子供を十人も殺すなんて……」
「確かにそうだね。それに革袋を持っていたという点も気になる。わざわざ持ち歩いていたということは、それがリリスの目的達成に必要不可欠なものだったってことになるからね。中には何が入っていたのかな?」
「毒、だったりして……」
「毒!?」
「確証はないわよ。あくまであたしの憶測だけど、殺された子供たちに外傷はなかったんでしょ。だったら、毒殺の可能性が一番高いんじゃないかなって。それにあの革袋って、昨日食糧庫から奪っていったものよね。となれば、中身は食べ物の可能性が一番高いし、もしそれが毒を含む食材だったとしたら……」
「なるほどのう。じゃが、肝心の動機に皆目見当もつかん。それに儂の記憶が確かならば、革袋は昨夜イブに渡しとったはずじゃぞ」
「イブに……?」
「そうじゃ。昨夜、リリスが子供たちの寝所に忍び込んだ時に、イブが物音に気づいて様子を見に来たんじゃよ。そこで二人はいくつか言葉を交わし、リリスは革袋をイブに手渡してそのまま去っていきよったじゃ」
「つまり子供たちに何かした時点でリリスの目的は果たされた。同時にイブは革袋の中身を知っていた。にもかかわらず、彼女はその場で子供たちを助けようとはしなかった。いや、する必要がなかったんだと思う。なぜなら革袋の中身は毒ではなかったから」
「もしくはそれが毒物だと気づかなかったか、あるいはイブも共犯か……」
「さすがにそれはないでしょ。殺された赤ちゃんの中にはイブがお腹を痛めて産んだ子もいるのよ」
「じゃ、誰が犯人だって言うんだよ」
「それは、その……、あたしもリリスの可能性が一番高いと思うけど……」
「つまり何だ。夜中のうちにリリスは子供たちに毒を飲ませました。イブは凶器である毒を手渡されたにもかかわらず、それが毒だと気づきませんでした。結果、一夜明けて子供たちは全員死んでしまいましたってことか。あり得ないだろ」
「仮にそうだったとして、なぜリリスはイブに革袋を渡したんじゃ? 犯人がわざわざ自らの犯行をほのめかすような真似はせんと思うんじゃがのう」
「罪を擦り付けようとしたんじゃない? 子供たちを殺す為に使った毒をイブが持っていれば、必然的に疑われるのはイブだもの」
「なるほどね。狡猾なリリスなら、そのぐらいのことは考えていても不思議じゃない」
「でしょ! きっとそうよ」
「で、肝心の人間たちが事件についてどう考えているんだ?」
「多分、彼らも同じ結論に帰結すると思うよ。今、絶賛アダムが現場検証を行っているみたいだし、それに彼らの中でもリリスは異質な存在のはずだから、何かあれば真っ先に疑われるのは彼女だと思う」
「そうね。……って、あれ!? そういえばイブがいないみたいだけど……」
「えっ!? アダム、カイン、アベル、セト、それにルルワ、アクレミア……。あっ、ホントだ! イブがいない」
「まかさこれだけの騒ぎに気づかないってことはないだろ」
「昨日遅かったからのう。まだ眠っているのかもしれん」
「いやいや、もう昼過ぎだぜ。リリスじゃないんだから、さすがにこの時間まで寝ているってことはないだろ」
「あっ!? 噂をすればイブが横穴に入ってきたよ。でも、何だか様子が変だね。凄く怒ってるみたいだ」
「怒る? 人畜無害で主体性のない、あのイブがか?」
「ホントだ。鼻息を荒げて、顔を真っ赤にして、見るからに怒り心頭って感じ。どうしたのかしら?」
「!?」
「おいおい、マジかよ! イブの奴、入って来るなり、アダムに革袋を投げつけたぞ。ってか、あれって件の革袋じゃないのか」
「おお、そうじゃ。間違いない。昨日食糧庫からリリスが奪った革袋じゃ。中から何か転がり出たようじゃが……、はて!? あの赤く熟した木の実は何じゃろうのう??」
「ちょっと待って! あれってもしかして……」
「知恵の実だ。革袋の中に入っていたのは知恵の実だったんだ」
「どういうこと? 知恵の実は栽培も収穫もアカシックレコードで禁止したはずでしょ。それなのにどうして?」
「わからないよ。でも、何かしら法の抜け道みたいなものを見つけたんじゃないかな。でなきゃ、彼らが知恵の実を収穫できるはずがないもの」
「とにかく状況を整理しようぜ。いろいろあり過ぎて訳がわかんなくなってきた」
「そうね。先ず革袋の中には知恵の実が入っていた。リリスはそれに気づいて食糧庫から革袋を奪ったんだわ」
「で、おそらくだけど、リリスは夜中に寝所に忍び込んで子供たちに知恵の実を食べさせたんだと思う」
「何の為に?」
「そんなの知恵を付ける為に決まってるだろ。文字通り、知恵の実なんだからさ」
「そんなの言われなくてもわかってるわよ。あたしが聞きたいのは、子供たちに知恵を付けさせて何をしたかったのかってこと」
「俺がそんなこと知るかよ」
「……あれ!?。よくよく考えるとおかしいぞ。そもそもリリスはどうしてアダムたちが知恵の実を隠し持っていることに気づいたんだろう。彼女はエデンの外で暮らしていたはずだよね。普通ならば絶対に気づくはずがない。エデンで暮らしているアダムたちが知恵の実を隠し持っていることになんて……」
「そう言われればそうね。何かきっかけがあったってことかしら?」
「って、おいおい! 悠長に考察に耽ってる場合じゃなさそうだぜ。見ろよ、イブの奴がルルワとアクレミアに無理やり知恵の実を食べさせようとしていやがる」
「ホントだ。アダムが止めに入ったみたいだけど……」
「駄目じゃ。間に合わん」
「……いや、ちょっと待てよ。どうしてアダムはそんなに必死になって知恵の実を食べさせることを阻止しようとしてるんだ? アカシックレコードの禁止事項に違反してまで手に入れたんだ。自分の身内に食べさせようと思うのが普通なんじゃないのか。にもかかわらず、あんな必死に……」
「確かにのう。禁止事項の背いた張本人のアダムが、他の子が知恵の実を食べるのを制止するという構図はあまりに不自然じゃのう」
「あっ! ルルワとアクレミアが慌てて横穴を出ていくわよ。きっと知恵の実を食べたことで羞恥心が芽生えたんだわ。両手で胸や股間を隠していたもの」
「なるほどな。イブは無花果の葉で体を隠しているから、既に知恵の実を食べたということか」
「つまるところ、イブは知性に目覚めたことで何かに気づき、その怒りはアダムへと向けられた。要はあの男が陰でコソコソと悪だくみしていやがったってことか」
「そう考えるとリリスの行動にも合点がいくね。彼女は何かの拍子にアダムの企みに気づいた。そしてそれを暴く為に子供たちに知恵の実を食べさせたんだ」
「黒幕はアダムだったってこと?」
「そういうことになりそうじゃのう。で、アダムの企みってのは、一体何なんじゃ?」
「問題はそこなんですよね。知恵の実を独占して、与える人間を限定した。一部の人間を都合よく支配したかったと考えれば動機としては成立するのかもしれませんが、それならばリリスが暗躍してまでアダムの企みを暴く理由がない。少なからず不利益を被ったから、彼女は今回の行動を起こしたはずなんです」
「もっともだ。だが、そうなるとまたぞろアダムの目的がわからなくなる。……って、おい! 何だ、これは?」
「誰かがアカシックレコードが更新したんだと思うけど、どういうこと? こんなの今まで見たことないんだけど……」
「システムからのリプライ要求? 一体、どういうことじゃ?」
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アカシックレコード:新規で認識が提案されました
アカシックレコード:次の認識について、あなたの賛否が求められています。
アカシックレコード:『生物は男女問わず妊娠するものとする』という認識を許諾しますか?
アカシックレコード:尚、許諾した場合、先に認知された『妊娠、出産は生物の雌(♀)に限る』という認識は破棄されます。
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