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アカシックレコード  作者: 八代 秀一
神々の御飯事編

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10/19

2-3:サタンの花嫁

「おい、見ろよ。こいつ、今度は牛との子供を産んだぜ」


「この前は上半身が人間で、下半身が馬の子供を産んでたよ。それに比べれば、まだマシじゃないかな」


「どっちもどっちじゃろうて。まったく、こやつはどうして同じ種族の子供を産まんのじゃ」


「出産のことでアダムと喧嘩別れしちゃったから、当て付けなんじゃない」


「それにしたって、これはあんまりだろ。見ろよ、こいつなんか怪物そのものだぜ」


「怪物って、何?」


「不気味な生き物ってことだよ。これは進化じゃない。どう見ても失敗作だろ」


「こらこら、滅多なことを言うもんじゃない。どんな姿であれ、命は命じゃろうが」


「だったら、尚更だろ。一体、何匹こんなのを産み落せば気が済むんだよ。このままだと世界中、怪物だらけになっちまうぜ」

「うげぇ、それはちょっと嫌かも……。恐竜とはまた違った恐怖を感じるもん」


「繁殖も何らかの制限を設けておいたほうがよいかもしれんのう」


「ねぇ、そんなことよりもなんか様子が変よ。リリスちゃん、すごく怒ってるみたいなんだけど」


「ホントだ。辺り構わず八つ当たりしてる。何があったのかしら?」


「さぁのう。人間の考えていることなんぞ、儂にはわからんよ。ましてや、こやつはその中でもとびっきりの変わり種じゃからのう」


「あっ! どこかに向かって歩き出したよ」


「おいおい、どこに行こうってんだ? 子供を産んだばかりだってのに」


「むしろ主産を終えたからじゃないかしら。ようやく身軽になったんで、晴れてこれまで抱えていた鬱憤を晴らそうとしてるのかもしれないわよ」


「鬱憤? こいつに一体、何の鬱憤があるっていうんだ。これだけ好き勝手やっておいて……」


「ねえ、あっちってエデンがあるほうじゃない? だとしたら、アダムのところに行くつもりかも」


「今更、アダムたちに何の用があっていうのさ」


「わからない。けれど、なんか嫌な予感がする。このままだとまた喧嘩しちゃうかも」


「喧嘩って……。あれ以来、顔も合わせていないんだろ。だったら、喧嘩をする理由もないだろ」


「ったく、こいつは本当に何を考えているんだよ。出産するのが嫌でエデンを出ていったくせに、他種族との子供を次から次へと産み落としやがって! その上、今度は何が不満だって言うんだ」


「あっ、見て! アダムの子供たちを見つけたみたい。赤ちゃんを掴み上げたわよ」


「何かを確認してるみたいだね」


「何をだよ?」


「わからない。でも首を傾げているから、何か当てが外れたんだと思う」


「あら、やだ。今度は様子を見に来た女の子たちに突っ掛かっていったわよ。ルルワちゃんとアクレミアちゃんだったかしら。それにイブちゃんもいるわね」


「ヤバくないか。こんな時に男どもは何をしてるんだ」


「狩りや農耕には出ていないはずだから、近くにはいると思うけど……」


「って、あれ!? 今気づいたんだけど、どうして♀はみんな、服を着てないの? ♂は何かしら身につけているのにさ」


「そんなこと、今はどうだっていいでしょ。それよりも……、って、ちょっと! イブが突き飛ばされたわよ。リリスが凄い剣幕で何か怒鳴ってる」


「そのわりに上手く伝わっておらんようじゃのう。ルルワもアクレミアもぽかんとして顔を見合わせてばかりじゃ」


「ウソ!? リリスがついに暴れ始めたわ。洞穴を虱潰しに荒らして回ってる。きっと男の子たちを探してるんだわ」


「だから、こいつは何に対してそんなに怒ってるんだよ」


「わからないわよ。そもそも人間の言葉なんて、私たちにはわからないんだから」


「アカシックレコードを使っても駄目なのか?」


「あっ! そうね。試してみましょう!」



***************

アカシックレコード:認識が過半数を超えない為、言語は共有されませんでした。

アカシックレコード:認識が過半数を超えない為、人間の言語は解読できませんでした。

***************



「クソッタレ、駄目だ。うまくいかねぇ」


「何よ、もう……。肝心な時に役に立たないんだから」


「僕たち、このまま見てることしかできないのかな?」


「仕方なかろう。人間の問題は人間が解決するしかない」


「でも、このままだとリリスちゃん、人を殺しかねない勢いよ」


「ったく、アダムの奴は何をやってるんだよ……」


「あっ、見て! カインとアベルだわ。セトもいる」


「このタイミングで現れたってことは、近くで様子を伺っていたのかもしれないわね」


「腰抜けどもめ。まぁ、いい。何にしてもこれで形勢逆転だ。いくら気が強いといっても、所詮は女。男三人が相手じゃ……、って、おい、完全に気圧されちまってるじゃねぇか。マジで頼りにならねえ男どもだなぁ」


「でも、さっきまでとはちょっと様子が違うみたい」


「そうじゃのう。リリスの奴、何かに気づいたようじゃぞ」


「ホントだ! リリスがカインの胸倉を掴んで問い詰め寄ってる。アベルもセトもばつが悪そうな顔をしてるから何か隠し事でもしてたのかも」


「きっとそうよ。何かリリスを怒らせるようなことをしたんだわ。じゃなきゃ、こんなに怒るはずないもの」


「おっ! 根性なしのアベルが早速何か白状したみたいだぞ。東の方を指差して何か言ってやがる」


「食料を保存しとる方角じゃのう。ほれ、言った傍からリリスが貯蔵庫の穴倉に入っていきよった」


「食料を奪いに来たってこと?」


「さぁな。革袋みたいなのを持ってるから、多分そうなんじゃないか」


「いや、それにしては量が少なすぎるわ。あれじゃ、一日分の食料にもならないわよ」


「確かにのう。しかし、それでこの場はリリスの機嫌も治まったみたいじゃし、、一先ずは良かったじゃないか」


「そうかしら。これで終わりとは、あたしには思えないんだけど……」


「まぁ、何かしらの確執は残るだろうけど、それはあくまでこいつらの問題だ。俺たちには関係ねぇよ。放っておけばいいだろ」


「そうは言っても、やっぱり気になるじゃない。自分たちと同じ姿をした人間が喧嘩してるんだからさ」


「いやいや、俺たちは誰も自分の姿を見たことがないんだから、本当にこんな姿をしてるかなんてわからないだろ。アカシックレコードが必ずしも俺たちの言うことを忠実に実行しているとは限らないわけだし」


「仮にそうだったとしても、あたしたちが創造した生き物なのよ。みんな、あたしたちの子供みたいなもんでしょ。だったら、心配して当然じゃない」


「ケッ、母親気取りかよ。付き合ってらんねぇ。好きにやってろ。もう俺は帰るぜ」


「ちょっと! 二人とも喧嘩しないでよ。はぁ……。とにかく、リリスも引き上げたみたいだし、僕たちも一旦解散して頭を冷やそう。人間については、後日、改めて考えればいいじゃないか」


「そうじゃのう。あまり干渉しすぎるのも考えものじゃ。時には見守るのも、創造主の務めというもんじゃろうて」


「……わかったわよ。でも、次に何かあった時は協力してもらうからね。アカシックレコードは過半数の認知がなきゃ記録できないんだから」


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