1-1:世界の起こり
そこには何もなかった。
一面が真っ白で、それがどこまでも果てしなく続いている。
少なくとも、その者たちが知覚していた世界とはそういうものだった。
故に、その者たちは思った。
「退屈だね」
「まったくじゃ」
「そう思うなら、誰かどうにかしなさいよ」
「どうにかって?」
「そうね、例えば…」
アカシックレコード:世界に線が引かれました。
「何よ、それ! どうやったの?」
「想像しただけよ。真っ白が視界を二つにぶった切ってやろうってね」
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アカシックレコード:線が消失しました。
アカシックレコード:共通認識として認知されませんでした。
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「おいおい、消えたぞ」
「一瞬、共通認識がどうってメッセージが出た気がするけど」
「それって、みんなが同じように認識しなかったから消えちゃったってこと?」
「さぁ、そんなこと、私に聞かれてもわからないわよ」
「まぁ、何にしても想像したら、線ってのが現れたってことだろ」
「だったら、物は試しじゃ。みんなでもう一度やってみるというのは、どうじゃ?」
「それって、みんなで一緒に線ってやつを想像するってこと?」
「そう、視界を真っ二つにぶった切ったやるイメージでね」
「面白そうだね。少しは退屈しのぎになるかもしれないわ」
「それじゃ、行くわよ。せーの!」
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アカシックレコード:世界に線が引かれました。
アカシックレコード:認識が過半数を超えた為、世界に一次元が形成されます。
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「過半数? つまり、僕たち六人のうちの半数以上が認識すれば現実になるってこと?」
「多分、そうだろ。それよりも一次元って何だよ?」
「そもそもこの頭の中に響いているアナウンスは何なんだよ。一体、誰が喋っているんだ?」
「知らないわよ。少なくとも私じゃないわよ」
「俺でもない」
「じゃあ、誰よ」
「誰だっていいだろ。それよりもっとほかのことを試してみようぜ。みんなで想像すれば形になるんだろ」
「そうね。だったら、今度は向きの違う線をもう一本想像してみましょうよ」
「いいね。それじゃ早速行ってみようか」
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アカシックレコード:世界に線が追加されました。
アカシックレコード:認識が過半数を超えた為、世界に二次元が形成されます。
アカシックレコード:世界に空間が生まれました。
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「見て見て、すごいわ。今まで真実っ平だった視界に幅が生まれたわよ」
「ホントだ。さっき空間って言ってたよね」
「不思議。突然視界に奥行きが生まれるなんて!」
「まるで魔法みたいだね」
「ねぇ、もっといろいろ試してみましょうよ」
「どれどれ、それなら今度は向きを変えてっと……」
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アカシックレコード:世界に線が追加されました。
アカシックレコード:認識が過半数を超えた為、世界に三次元が形成されます。
アカシックレコード:世界に高さが生まれました。
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こうして彼らの創造した線は何もない世界に次元を作り、落書きは惑星となって宇宙が誕生したのである。
だから、約138億年前のビッグバンが原因で宇宙が誕生したなんてのは、まったくの出鱈目。
言うなれば、それは後世の人間、それもごく一部の学者が妄想した真実の成り損ないに過ぎず、実際のところは暇を持て余した名もなき六人の集合的無意識よって創造され、アカシックレコードの記録された共通認識というわけだ。
そしてこの世界は無限の想像と創造を繰り返し、過半数の認知を得ることによってその形を大きく変えていくことになる。




