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勇者は選ばれる存在ではない。 選ばれたことにされる存在である  作者: 南蛇井


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6. 歴史編纂者の結語(確定文)

最終頁。

余白の多い紙面に、歴史編纂者は静かに筆を置く。


装飾も、見出しもない。

この頁だけは、年代も付されていない。


そこに記されたのは、結論と呼ぶにはあまりに控えめな、

しかし他に書きようのない文だった。


世界は救われたのかもしれない。

だが、それを断言する者はいない。


ただ一つ確かなのは、

以前のようには語れなくなった、

ということだけである。


この文は、評価ではない。

総括でも、教訓でもない。

未来に向けた指針ですらない。


何かを説明しようとも、

意味づけようともしていない。


ただ、

語れなくなったという事実だけを、

語っている。


歴史編纂者は、この文を

正しいとも、十分とも思わなかった。

だが、誤りではないと確信していた。


これ以上書けば、

物語を作ってしまう。

これ以下では、

この時代を残せない。


筆を置き、頁を閉じる。


その瞬間、歴史は終わらない。

だが、以前と同じ形では続けられないことだけが、

静かに確定した。

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