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勇者は選ばれる存在ではない。 選ばれたことにされる存在である  作者: 南蛇井


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6.記録される時間

玉座の間の外では、

それは「異変」として処理された。


魔王城に、変化なし。

警戒態勢、変更なし。

破壊痕、交戦痕、未確認。


勇者の生存、確認。

魔王の存在、確認。

戦闘発生、なし。


報告は簡潔で、感情を含まない。

異常事態と断じるには根拠が足りず、

平常と記すには説明が過剰だった。


やがて、ある定型文が用いられる。


「玉座の間において、

 勇者と魔王は対峙したまま動かず」


理由は書かれない。

原因も推測されない。

沈黙は、評価を拒む。


ただ、時間だけが追記されていく。


一刻経過。

半日経過。

一日経過。


同じ文言の末尾に、

数字だけが増えていく。


沈黙は、出来事として扱われ始める。

行為ではなく、

状態でもなく、

長さを持った事象として。


警戒担当は、判断を保留する。

侵入でも、撤退でもない。

勝利でも、敗北でもない。


誰も命令を出せない。

誰も撤回を宣言できない。


玉座の間では、

二つの存在が、ただ在り続けている。


勇者は、動かない。

魔王も、動かない。


言葉が発せられないまま、

時間だけが、記録に変換されていく。


後年、歴史編纂者は

この一連の文書を並べてこう記した。


――沈黙が、

行動よりも正確に測定された

最初の事例である。


それは、

世界が初めて

「何も起きていない時間」を

出来事として数え始めた瞬間だった。

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